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四十四 俺ら勇者と霊獣着いてく必要なくね?


猪原に聞いても話をそらされたりして答えてくれないせいで、微妙な雰囲気で訳の分からないまま時間はだんだんと過ぎていく。


[リエル〜、本当に大丈夫なの〜?]


いつの間にか近くに寄ってきていたアルゲンが俺へ聞いてきた。

普通に今日の作戦をやるのかという話だろう。


[まぁな、俺は今更作戦を中断しようとか言うことはないさ]

[まぁ〜ちゃんと俺も協力はするけど、気が変わったりしないでよね〜?]

[そんな俺の気が変わる事があるとすれば、お前が裏切って俺を殺そうとした時くらいしかねぇよ]

[じゃあ良かった〜]


猪原の方をチラ見で確認するが、猪原は思い詰めた表情のまま静かに勇者達の訓練を見つめている。

どうせやろうがやらないが、ハプニングは必ず起こる。

前も言った事な気がするが、最終的にはなんとかなると思っている。

黒蜥蜴の事があるから、もしかしたら犠牲はあるかもだけど。


…と、後ろの入口から足音が聞こえてくる。ようやく青髪が広場へとやって来たようだ。

入口の方を振り向くと、青髪が俺達の方へ真っ先に謝ってきた。


「皆さん遅れてすみません」

[あ、猪原翻訳機はちゃんと稼働してくれるんだ]

[私を物のように言わないでほしいです…]


猪原は考え事をしていてもしっかりと青髪の言う事を伝えてくれる。

なんだかんだ言ってるけど、優しいやつだよなぁ猪原って。

しいやつだよなぁ。

青髪が遅かった理由を簡潔に説明する。


「例の黒ローブについて調べていたのですが、彼は紅明教の司祭の一人のようでした。彼は追跡の能力に長けているようですが、素の実力でも確実に私達より高いでしょう」

[なんでそんなこと知ってんだよ…]

「私には優秀な側近が居ますから」


優秀な側近って、もしや城内の五人の兵士の事なのかね。

ラノベとかではこういう都合のいい話が入ってくるけど、そういう系の入手ルートは一体どこから確保してるのやら。


追跡ねぇ…俺を見つけられたのもそれのせいだったんだろうな。


「他の皆さんがもう待っているので、早く行きましょう」

[うす]




広場の中心で、青髪と星団の1人が今日の紅明教鎮圧作戦について話す。

霊獣達は別に聞かなくても良いのだが、最近の色々な事件のせいか、全員が真面目に聞いているようだった。


「そして、分担する役割なのですが─────」


作戦の内容は簡単で、特定した二つの敵兵の建物を先に占拠し、帰ってきた兵士共を八つ裂きにするものだった。

実際別に、この最強星団野郎を建物にポイ投げしとけば秒で制圧出来そうだけどな。既に俺が痛い思い何度もしてるから、敵も出し物全部出し尽くしたでしょ。


[なんでこんな回りくどい戦い方をするのだか…]

俺はそう愚痴ると猪原から横槍を入れられた。


[相手の実力なんて分かりませんからね、昨日のあのローブの男を対処するのはとても厳しくなると私は思いますね]


[まぁ、あれは俺とアルゲンが直々にぶっ飛ばしてやるから]


[僕はほんの少しだけ手伝うだけだよ〜]

[バカ言うな、お前が居なきゃ俺は何も出来ねぇんだよ]

[え、これって恋展開ってやつですか?]

[こぉ〜れはドキドキ〜]

[お前らの頭の中獣かよ]


確かに俺らは霊獣だから、まぁ…獣だけれども。


「────ですので、まずは敵の居る場所へと静かに移動しましょう」



青髪がそう言うと、勇者達ははーいと言って、広場に隣接するすぐ近くの城壁塔へと向かっていく。

何だこの小学生の遠足感は…。


昨日まで気づかなかったが、広場に隣接していた城壁塔以外に城門らしきものは城の裏口の1つしか無かった。

もし猪原と一緒に戻る時に、右回りだったら特に何事もなく助かっていたのかもな。


[ていうか、この広場からの城壁塔に登る手段が梯子って、兵士たちは階段でも作って改築しろよなぁ]

[この城だけは守りが硬いと思っていましたが、見張りは広場の一人と場内の数人しか居ませんし、意外とセキュリティ対策はスカスカですよね]


実際この世界作ったやつに文句言いたい気分だわ。

まるで街の形を作る時に休んでいる時の間隔が長すぎて、設計を忘れた馬鹿野郎!ってな!







勇者の背に乗りながら無駄な梯子を登りきった後、無駄な城壁塔の内部の螺旋階段を下り、街中へと出た。

ボロボロな家具山の大量にある路地を俺達は二列になって歩く。

路地から見える大通りを見ても街中の住民は相変わらず誰一人おらず、窓のカーテンすら閉められて見えない状態であった。




「うわ、ちょっと臭くね?ここ」

「粗大ゴミがさー多すぎじゃないー?」

「うわ誰だよこの薄気味悪い人形捨てたやつ!!!!!!!」

「こいつらうるせぇ、神島何とかならんかね」

「僕にはど、どうにも……」

「神島苦笑いしとるやんけ!!!!!!!!高濱何しとんじゃ!!!!!」

「うるせぇ波崎、おめぇだろ!←これ多すぎんだよ!」

「お前も付けてんだろ.ᐟ .ᐟ .ᐟ」

「アクセントの問題じゃねぇよ!」

「お前らアホか、そんな声出してたら路地で隠密行動する意味が無さすぎるぞ」

「まー別に大丈夫でしょ、敵が来ても僕が蹴散らすから、ちょっと星団の力見せちゃおっかなぁ〜」

「「「「よろしくお願いします」」」ー」

「街の様子がとても静かですが、一体」

勇者達がバラバラにうるさく愚痴をこぼす中、泉が少し気味悪そうに青髪に聞く。


「外の住民にはおそらく、街中に魔物が出た騒ぎで、外出を控えるよう外の兵士が告知したのでしょう」


…街の住民が外に出ていなかったのは俺と猪原が街中で暴れきったせいだったのか、当たり前だわ。

これは紅明教側も、俺らも助かることだろう。

これならば、アルゲンも好き勝手飛ぶことが出来る。


青髪の話した隠密行動作戦が完全におじゃんになってるのに特に何もしないってことは、やはり星団の実力なら簡単と分かっているのだろう。


城壁からそこそこ離れ、街中の粗大ゴミが無くなったところでようやく路地からでも物見櫓が見えてきた。


さて、こちら勇者方一行、ずっとペチャクチャ話してますが、一体何なのでしょうか。彼等にはさっきまで集中して聞いていた作戦というものはどこへ行ってしまったのでしょうか。


星団の男はギャーギャーと話す小学生を沈めるように金属製の音でバァァンと手を叩いた。

「さてみんな、ようやく近くに着いたから、ここからは本当に静かにお願いね〜」

「「「「「「「…」」」」」」」


[…いやナニコレ]

[お笑いでもしてるのでしょうか…]


星団の男の迫力がエグいのは分かったわ。

全員がようやく気を引き締め、いざ作成開始と思ったその矢先、屋根の上から奴の声が聞こえてきた。


「静かにする必要はありませんよ」


勇者達と俺が声のする上を見上げた場所には既に消えていて、高濱を狙った歪な短剣が金属音と共に止められた。


「わざわざ声出してから奇襲するなんて、頭悪そうだね君」



星団の男が言う先には黒ローブの男がいた。

黒ローブは追撃を入れられる前に直ぐに高く跳び上がり、また屋根の上へと戻る。

黒ローブは厳しそうな目つきで俺達を見下ろしてくる。


「…どうやら、この状況は私には分が悪そうですね」

「急に逃げ腰じゃん、今ここで逃げてもなんの意味もないからさっさと来なよ」


星団の男が挑発をするが、黒ローブは話すことも無く、そのまますぐさま去って行ってしまった。

え、えぇ…なんだアイツ、そのまま街とかから離れるつもりじゃないだろうな?


「じゃあ、とりあえず行こうか」

「さ、さっきのやつがリエルの言ってた強敵か…」

「俺目で追えなかったぞ?お前は?」

「降りる瞬間は見えたけど、弾いた音した時にはもう上に戻ってたぞ…」


勇者達はそこそこビビっているようだ。

俺も正直残像しか見えてなかったけどね。

でもなんか一瞬チラっと俺の姿を見ていた気がしなくもないね、うん。




俺達はそのまま普通の家と繋がっている物見櫓の入口に着いた。

星団の男は鍵の有り無しなんて全て無視するかのように、木の扉を片足でバァンと蹴飛ばした。


「…誰も居ないな」

「騒いでると警戒して拠点から離れるでしょうね」

「「すいません…」」


青髪の棘を2人ほど食らっているが、まぁ気にしないどく。


建物の中は居酒屋のような雰囲気で、明かりは付いておらず少し薄暗い。テーブルや床関係なくコップやら酒瓶やらがめちゃくちゃに転がっている。紅明教が居た場所と言うよりかは本当に酒酔い共が集まった後のような場所だった。

真ん中には物見櫓の上へと登る手すりのある螺旋階段がある。


「どうするんですか?」


神島が青髪に尋ねると青髪は全員に伝えた。

「皆さんはここで待機していてください。私とイェンカの二人でもうひとつの拠点へ向かいます」


どうやら俺達はここで待機とのことで。

「ちぇー僕達は結局暇するってことかー」

「馬車乗ってた時に何も出来ず爆弾で瀕死になってたのによく言うよなお前…」

「あれはー特にそうなった記憶なんてないからノーカンでしょー」

「お前だけ放置してたら良かったかな?」

「ごーめーんー」


青髪と星団の男は建物を出た後、俺達はそこそこの時間、この物見櫓の建物で待っていた。

物見櫓の上の手すりに乗ったまま、俺と猪原、アルゲンは平面なオレンジ街を眺める。


[平和だね〜]

[そりゃ無事件無事故の街だからな]

[現在進行形で事件起きてる気がしますけど…]


勇者達も反対側で街中を暇そうに眺めている。


「平面だねー」

「漫画の写ってない所って感じだな」

「表現の仕方がとても酷い気がするんだけど…」


青髪達はもう敵共をぶっ飛ばしてるのだろうか。

ここからずっと眺めても一生人の姿は見つからなさそうなくらい静かだ。


[ていうかなんかこの状況、デジャヴを感じるんだが…]

[そうですね、前は下から兵士が来ましたけど下は全部確認しましたし、今回は特に大丈夫だとは思いますけどね]

[とか言って、俺達が何も起きないなんてことはない気がするけどな]




と、俺はフラグ回収をしてしまったようで。

突然、真上から声が聞こえた。


「こんにちは御二方、昨日ぶりですね」

[え…この声は]

「え、誰?」


神島達も疑問を浮かべるように周りを見渡しているが、声の出処は掴めないようだった。

しかし、奴は物見櫓の屋根上からひょこりと顔を出してきた。


[…やっぱこいつなんか馬鹿なのかね]


そう考えるのも束の間、俺を踏みつけるような軌道で降り立ってくる。

俺はギリギリで足を回避し、反対側にいた神島達の側へと逃げる。

猪原とアルゲンもすぐさま黒ローブから離れて、戦闘態勢だ。


黒ローブの男は苛立つような面持ちで俺を睨みつけていた。

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