四十 ゴミ山で起きまして
なにかを境にふと意識を取り戻した俺は体の感覚がまだ残っていることに少し不思議に思う。
少し前の事がぼんやりとしか思い出せない…けど、たしかに意識を失う直前……あの黒ローブ野郎の持つ緑のおぞましい短刀で首を切断されたはずだ。
[ゲホッゲホ…うぅ]
口の中のザラザロとしたなにかが気持ち悪く、何度も咳き込んで口の中にある異物を吐き出す。
ようやく覚めてきた意識で目を開けてみる。
[なんだよ…ここ]
明るくなった世界を見回すと、俺の足元からかなり奥まで大量のゴミが乱雑に、山のように積まれていた。
匂いは感じられないが街の路地と違ってビンや古い皮、腐った食材、衣類まで全てが大分前からここに放置されているように見えた。
ゴミ山は森と街の間位の場所にあるようで、この場から見ても大きな城壁が普通に見える。
とりあえずここを出ようと身体を起こそうとしたが、あまりにも体が重い…。力が上手く入らず、とてもだるく感じる。
よくよく自分の体の状態を考えると、理由は明白だった。
首元には切断されたような跡があまりにもくっきりと残っていて、足元に血溜まりが出来るほどの血を流していたようだ。既に固まっている為、かなりの時間が経っていそうだった。
普通の人間だったら確実に多量出血でお陀仏になる量だ。
でも…今は不思議と痛みは無かった。
確実首を切られた跡があるというのに、何故俺は生きているのか。
自分にはそんな技能、特殊技能なんてものは無かった。
[あ、ステータス…]
忘れていたかのようにそう呟くと、俺の強さを数値化してくれている青いホログラムの画面がすぐに出て来てくれる。
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名前:リエル
種族:リトルマナドラゴン
状態:魔力過疎 瀕死
レベル:3/5
体力:5/40
魔力:5/22
攻撃:20
防御:17
魔法:18
敏捷:20
総合戦闘能力:43
特殊技能
【魔力動作】【観察】
技能
【あばれる】【跳躍1】【回避3】【思考6】
【判断4】【体力4】【防護2】【怒り1】【集中1】
称号
【呼応の霊獣】
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ステータスの状態はとても酷いものだった。
体力も魔力もギリギリで、この状況で痛みが無いって事は痛覚の神経でも切れて閉まっているのだろうか。
なにか変わっているものもあると思っていたが、新しく追加された二つの技能以外、特に変化など見られなかった。
[はは…いろいろと終わってんな…]
【怒り】と【集中】の効果なんてそのままの通りだろう。
非道な黒ローブに殺されたくない一心で、奴を巻き込んでしまうよう、目の前で火魔石を噛み砕いた。
先程吐き出した異物は、全て粉々になった火魔石の残りだろう。
俺がこうなってしまったのはこいつのせい…
黒ローブの時の痛み、苦痛を思い出してしまう。
固まった血の上にばら撒かれている火魔石の欠片を感情のままに強く前足で踏み潰す。
[クソが…!]
俺の武器となってくれる筈だった火魔石はなんの役にも立たなかった。
これだけやっても火なんて1ミリも出さないし、俺はこのゴミアイテムに弄ばれてたってのかよ…。
粉々の残りの効果をもう一度確かめるように、俺は【観察】を使う。
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【竜火粉】
竜の力によって変化した粉、竜の操る魔力に触れると高
威力の炎が上がる。
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それは既に火魔石では無くなっていた。
その変化っぷりに俺はため息を着く。
[おいおい、今更かよ…]
今頃使えるようになったとしても、こんな粉状態じゃ持っていこうにもかなり無理がある。
また口の中に含むか?無理無理。こんな粉状態じゃ水でうがいでもしない限り取り出せない。
まぁ、仕方がないか…。
気持ちが少し落ち着いた俺は目を閉じてしっかりと考える。
何故、俺は殺されずに生きれたのか。
霊獣と勇者どちらとも狙っている紅明教が何もしない訳が無い。
首は掻っ切られたが、俺が生きているのはなにか企んでいるに違いない。
状態的には魔力も体力もごっそりとギリギリになっていて死にかけだ。魔力が減っている理由は…なんか搾取でもされてんのかね。
あ、でもラーファウルと戦った時の次の日は少し減っていたよな。
俺の魔力の回復速度はそこそこ遅い。
【魔力動作】を使ったときの魔力消費量はたったの1だが、たった1を回復するだけでも3時間以上はかかっている気がする。魔力動作の練習をする時も2日か3日に1回しかできなかったし。
ラフーファウルとやった時は1度しか使っていなかった筈だ。それでも何故か全回復はしていなかった。
自分の治癒速度はかなり早いと思っていたけど、もしかして…。
こういう状況は人外系とか、最強系のラノベにあったりする。
主人公が仮死状態になったりした時、自身の身につけた特殊な復活の仕方や、隠れたスキルによる復活。
主人公が死んでから復活する流れなんてほとんど見ないが、仲間や敵である者には見かけることはかなりある気がする。
俺の種族はリトルマナドラゴンであって…小さな魔力竜だから、魔力で作られたドラゴンということ…。
理由という物は思っていたよりも単純なことだったようだ。
[全く、ここからが急展開ってことなんだな…]
と言っても、実力なんて変わっている訳ではないし、そのままあの黒ローブとやりあってもまた殺されるだけだ。
とりあえずは城に戻ることからだな。
気がつくと気持ちも完全に落ち着きを取り戻しており、体も少しは動かせるようになっていた。
とりあえずは体を起き上がらせて、このゴミ山一帯を見回す。
溢れるくらいのゴミの量、火を放つととても燃えそうに見える。
俺は1つの考えを思いつく。
[あの野郎の最後にとてもいい場所だ]
先のことを考えると軽い笑みを浮かべてしまう。
奴から貰ったあの恐怖は絶対に忘れない。必ず俺の手で始末してやる。
俺は目覚めた場所をしっかりと覚えてから、この場を離れて城の方へと向かった。




