【一】
[ねえおきてるー?]
[このバカ、まだ寝ていたのか]
誰か2人の声が聞こえる。 一体誰だろう
色々あったせいでまだ起きたくはないので、その声を無視する。
一体どうなってしまったのだろうか。
あそこから自分は生き残ってしまったのだろうか…いや、絶対に死んでしまっただろう。
なにかが起こることもなく、何も出来ずに呆気なく死んでしまった。
自分はこの世界でどういう存在なのだろうか、バカのように物語の中で踊っているだけの脇役なのだろうか。
何かもう少し考える時間が………欲しい…。
[おい、起きろウスノロ]
寝たフリは結局ダメのようで、急に強烈な尻尾の一撃を頭に当てられた。
[痛っ…もー、外はまだ暗いんじゃないの?]
精神的に減るものがあるが、時間的にもう遅すぎるので仕方なく冗談を交えつつまだ慣れない竜の身体を起き上がらせる。
眠い目を擦りながら開けると、目の前にはいつも見る同じ大きさの二匹の赤い子供ドラゴン…まだ幼い【ヨォーラ】と下目遣いの強い年上の【ジンク】がいた。
大木の1番下の幹をくり抜いたような隙間、薄く積まれた藁の中で周りを見ると、巨大樹の森のような自然の風景がこの周辺にはあった。地上に雑草は一切生えておらず、遠くまで見通しても平面な土ばかりだ。
知らない竜がちらほらと飛んでいるのが見え、はるか高くまで生い茂る緑と隙間から差し込む光がとても綺麗に見える。
それにしても、さっきは何を考えていたんだ?
なにか変な夢を見てた気がする、うっすらとだけど自分が人間に殺される夢が。
流石にないよな…見た感じ、自分とは違う姿していたし…。
[お前の目は着いていないのか、どう見ても明るすぎるだろう]
[あーはいはい、そうですねまったく…]
[ねえははうえのとこはやくいこーよー?]
あ…そうだ。そういえば昨日、あの竜から大事な話があるとこの二匹に伝えられていた。
最初にこの住処に住ませて貰ってから既に半年以上経って、今までまだ3度しか話したことのない竜が、急に一体どういう話をするのだろうか。
[わかったよ、着いてく]
[母上はお前の事を心配していたんだぞ、会ったらしっかり謝るんだ]
[あぁ、うん…]
[れっつらごー!]
そうして、三匹は目的地の所まで巨大樹の森を地上から走り抜ける。
10分程同じ景色を進んだ所でようやく目的地の場所へ辿り着く。
[ついたよー!]
ヨォーラが意気揚々と前足で指した所は、沢山の大人の竜が住んでいる竜の里だ。
周辺の大木全てに竜の住処があり、中心には周りの大木より比較にならないくらい大きすぎる巨大樹があった。
ここに戻ってきたのは久しぶりだ。
最後に来たのは2ヶ月前くらいだった気がする。
[いつもどうりめちゃくちゃ竜がいるなぁ…]
[その言葉、前来た時も言っていたぞ]
生物の沢山いる場所はやはり苦手だ。なんだか気が落ち着かないし、変に疲れる。
話を聞いたら二匹を置いてさっさと寝床へ帰ろう…。
ヨォーラに先導してもらいながら中心の巨大樹へとまた走って向かう。
[おいウスノロ、お前は今日なぜ母上に呼ばれたか知っているか?]
[ん?いや、何も聞いていないよ?]
[む、そうか。実は俺も母上から理由は聞かされていなくてな、ウスノロがなにかやったと思ったのだが…]
[べつに…自分はなにもしてないんだけど。昨日も一昨日もいつもどうり起きてからアガント湖に行って帰って寝ただけだよ?]
[そのアガント湖でなにか悪い事でもしたんじゃないのか?]
自分は昨日、特にこれといった変なことは一切していない。なにか些細なことと言ったら、魔力の濃いあの場所で軽く水泳したくらいだ。
[本当になにもしてないし…てかウスノロじゃねぇよ!]
[お前は俺より早く起きるまでウスノロに決まっている]
ジンクと討論していると、あっという間に巨大樹の根元まで着いた。
ヨォーラはそのまま根元の隙間にある大きな穴へと入っていく。
中は天井に吊るされた明石の光のおかげで思ったよりも明るかった。
大きな竜達も多くいて、大広間にも関わらず少しだけ窮屈にも思える。
よくお喋りしている竜達の隙間を三匹は黙って通り抜けていく。
大人の竜達の話し声がよく聞こえてくる。
[────あまりにも危険すぎやしないか?]、
[仕方ない事だろう、人間達と戦う事はを避けられない、お前も奴らのやり方を見ただろう?]
[ここに人間がやって来るのも時間の問題だろう。我々はこの地を捨てる訳には行かないんだ!]
[しかし…勝てるのですか?2000もの同胞があの光によってやられたというのに───────_]
大人の竜達が話していることはよく分からない話がほとんどだ。
基本的に自分達に関わることなどない話しかないだろうし、あまり気にする必要もないとあの竜にも言われていたな。
竜達の隙間を抜けた所で正面にある小道へと進む。
ここ辺りは誰も通っておらず、巨大樹の小道の中で俺達の足音しか聞こえない。
また少し進んだ所でようやく小道が終わり、目的地へと到着した。
目の前にはヨォーラとジンクの親である赤い竜がこちらを見つめて座っていた。
[ははうえ!]
ヨォーラが直ぐにその竜の側まで走っていき、翼の所へペタリとくっつくと、その竜はヨォーラの頭を前足で撫でる。
ジンクもその竜にぺこりと頭を下げた。
とりあえず自分はは遅くなったことを謝る。
[遅くなってごめんなさい、少し長い夢を見ていました…]
自分の謝罪にその竜は首を横に振る。
[いえ、謝る必要はないですよ。急用という訳ではありませんでしたから]
[ええー?ははうえそれでいいのー?]
その竜はとても自分に対していつもどうり、優しく接してくれる。
ジンクが横から茶々を入れてくる。
[急ぎの用では無いにしろ、ウスノロはあまりにも遅すぎる。母上もここでずっと待ってましたよね?]
[えぇ、朝から待っていましたよ…でもその時間は私にとって有意義な時間でしたね…]
[母上、それは…一体どういうことなのですか?]
その竜はニコりと微笑むと体を起き上がらせ、ヨォーラとジンクに伝える。
[ヨォーラとジンクは先に戻っててください、今から大事なお話をするのです]
ヨォーラとジンクはえぇ!?と言わんばかりに驚く。
[そんなにだいじなはなしなの?]
[母上、私も聞いてはダメなのでしょうか?]
[えぇ、これは絶対に彼にしか話さない事です]
ヨォーラは渋々というようにその竜の元を離れ、俺の方へと歩いてくる。
ジンクも不満がある顔をしていたが、その竜の言葉には逆らえないよぅだった。
二匹は一緒にこの部屋を出ていった。
[……それで話とは?]
自分はその竜に聞く。
その竜はしばらく考えた後、面を向いて話し始める。
[あなたにお願いがあるのです]
[お願い…?]
お願い位なら、別にあの2匹を移動させなくても良かったのでは?
生まれてから半分程の時をこの地で過ごしてきた自分はまだ幼いし、力仕事や言伝などのお願いなどこなさことなど出来るはずがない。
しかし、その竜からのお願いは予想より全然違った。
[この先…この世界に現れる勇者の仲間として、悪を滅ぼす使命を果たして欲しいのです]
[悪を滅ぼす、使命…?]




