三十六 大変追われてますが
俺と猪原は並んで屋根の上を全速力で走る。
[はぁ…はぁ]
[リエルさん、私に乗っててください]
[あ、ありがとう]
俺を乗せた猪原はさっきよりも速度を上げる。
後ろを振り向くと屋根の上に這い上がってくる数人程の兵士達。
うわ、もう追って来始めてんのかよ。集まるのが早すぎだろ。
後ろから追ってくる兵士達の総合戦闘能力は平均90程度。猪原の足の速さでなら何とか少しづつ話すとこが出来てきているな。
[それで、リエルさん一体どうしたって言うんですか?]
[俺達の姿を兵士に見られたんだ、もう後ろから兵士共が追ってきているからな]
[えぇ!?]
猪原は驚いて後ろを振り向く。
そのタイミングと同時に、前からも3人の兵士が屋根の見えないところから現れて走ってやってくる。
直ぐに至近距離にまで近づくと、剣を上から振り下ろしてくる。
[ちょ、猪原前、前!]
[え、わぁぁぁ!]
振りかざされた剣を間一髪で避けることが出来たが、俺達は勢い余って屋根から落ちてしまい、一回転しながら裏路地の1番下へと激突した。
[う…ぐ…]
くそ、痛ってぇ。城壁から落ちた時よりは全然マシだが疲労もあるせいで起き上がるのがしんどすぎる…。
[リエルさん!早く乗って!]
疲れに耐えながら起き上がると、既に兵士達が屋根上からベランダを通じて降りてきている。
[あ、あぁ!]
平気な猪原の呼びかけによろけながらもすぐに背中へしがみつく。
猪原は直ぐに走り出したが、目の前にも兵士は降りて来てしまい、足をを止めてしまう。
挟まれた…が、まだ右の扉が開いている。
[猪原…右の建物に入れ…!]
[はい!]
建物の中に入ると、そこには物置の部屋で二人の男が荷物を運んだりしていた。。
「********!!!」
「******!?」
俺達の存在に怖がるように荷物を落として尻もちを着く二人を猪原は無視して奥の開いた扉へ突っ切っていく。
この先は青いシートに乗せられた色んな色の石が床いっぱいに山のように置いてある所だった。人もかなりいて、男二人の叫び声によって既に俺達のいる所へ全員が顔を向けていた。
[…これはもう俺達の事を隠しきれないんじゃないかぁ?]
[もう無理ですね]
静かな 建物内が一瞬で地獄に連れてこられたような叫び声の連鎖がいろんな所から挙がり、俺達に背を向けて建物の外へと駆け出していく。
二匹は戸惑って止まっているとガチャガチャと後ろから兵士がもう真後ろにいた。
[猪原!]
猪原はそのまま人々の逃げていく店の入口へと石の小山をジャラジャラと渡るよう走っていく。
その間に俺はその石の情報を【観察】で調べる。
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【火魔石(弱)】
軽い衝撃を与えると小範囲に小威力の火を起こす。
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【電魔石(弱)】
軽い衝撃を与えると小範囲に小威力電気を放つ。
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【重魔石(中)】
普通の衝撃を与えると本体が小範囲に大きくなり、
石の重量が上がる。
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色はほとんどバラバラだが、見た感じの石の能力の種類はこの三種類で強弱がある物や(不良品)としか書かれていないものしかなかった。
えぇい!これでも喰らえ!
俺は猪原にしがみつきながら床にある色々な石を右前脚で石を避けるよう遠回りして追ってくる兵士達に掬い投げる。
兵士の鎧に当たった石は火を上げ、パチパチと静電気を放ち、小さな石から現れた大きな石がぶつかり、大きく兵士達を仰け反らせた。
い、意外と効果抜群だな…。
倒れた兵士は大量の石の山へと倒れていく。
………あ。
[爆発するぞぉぉぉー!猪原急いでぇ!]
[えぇ!?]
俺は【魔力動作】を発動して、とにかく俺達の壁になるように薄青色の魔力を集める。
石山を抜けて建物の外に出た瞬間、白い光と共にドカーン!と後ろから大爆発が起きた。
[わぁぁぁぁ!]
爆発の勢いのあまり俺達は軽く吹っ飛ばされたが、何とか壁にぶつからずに街の路地へと入り込むことが出来た。
はぁ〜やっべ〜、まじやっべぇ。
爆発地点からだんだん離れていくのを見ながらドキドキしてしまう。
結構人離れていたし、兵士以外巻き込まれていないよな?あれ。
建物はいいと思うけど、人に被害があったらたまったもんじゃないからな。
青髪になんと言うべきか…。
建物から離れるよう人気のない路地をそこそこ走った所で、猪原が俺に聞いてくる。
[はぁ…流石にそろそろ疲れてきました…。まだですか…?]
え、マジ?
今までほとんど疲れなしのような猪原だったけど、流石にこんだけアクションを起こしてしまえば疲れ始めるのかぁ。
意外と人間らしくて良かったわ。
[もう走らなくても大丈夫だと思う。後ろからの追っても一切来なくなってそうだぞ]
猪原はそれを聞いて、安心したかのように速度をどんどん緩めて、誰にも見えないようなベランダの下で止まった。
俺はとりあえず猪原から降りて路地の通り道、屋根の上から誰かが来ないか警戒する。
爆発した建物から離れたとはいえ、まだ見られている可能性とあるからな、猪原にはとにかく物見櫓の所からすら見えないくらい走ってもらった。
俺の仲間、めちゃくちゃ優秀すぎやで。
[何とか逃げ切れましたね…]
[まさか兵士の拠点があの物見櫓の真下とは思わなかったぞ…]
無茶苦茶急な出来事過ぎてびっくりしたけど、何とかなって良かったわ。
いやまぁ、別に何が起きても何とかなると思ってんだけどね。 俺ってば主要竜だし?
実際に殺しにかかってくるヤツらを見て、普通に生き残ろうと必死に考えちゃうんだよなぁ。それが正解なんだろうけど…。
暫く休憩した所で、俺達は行動を再開する。
俺達が城から出ているって言うのが既に兵士達に知らされていると思うから、一旦は街を探索しつつ城へ戻ることに決めた。
アルゲンに関しては元から空飛べるし、心配する必要はないよな。
[うへぇ、この辺ゴミ多すぎじゃね?]
[虫とかは1匹も寄ってきてないのも不気味ですね]
路地をじっくりと歩く俺達は裏側のゴミの多さに少し気持ち悪くなった。
ゴミと言っても、食品ロス的な物じゃなくてほとんどが壊れた机や椅子、棚、瓦、瓶のようなものばかりだ。全て埃を被っているが、乗ってみたり押してみたりした感じ、少し修理したら全然使えそうだった。
DIYとかしてる人だったら宝庫だったろうな。
[リエルさんそういえば、城の中にもこういうのありましたよね?]
[え、あ確かにそれもそうだよな]
昨日の城の中で勇者を探した時にもこういうのが入っている部屋があったよな。こんだけあったらなんかこの街は問題を抱えているとしか思えないなぁ。
食べ物やら水は何一つ見つからないからその辺は屋内で捨てているのかね。
ゴミ山の深いところにもなにか無いか隙間を覗いていると、ふときらりとしたものが。
何かと思い、右前脚を隙間に突っ込んで取ってみる。
[お、いいもの見つけた]
隙間から脚を抜いて手に持ったそれは建物にもあった赤い色の石だった。
とりあえず衝撃を与えないように【観察】を使って見てみる。
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【火魔石(不良品)】
中程度の衝撃を与えると広範囲に中威力の炎を上げる。
衝撃を与えても反応しない事がある。
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[リエルさん、それは?]
[えーっと、これは前馬車の中で見つけた爆発する石ころに似たような物だな]
なんでこんな所に放置されているかは知らんが、この火魔石は絶対に使う必要がありそうだ。
見た感じ、広範囲の攻撃だからめちゃくちゃ強そうだよな、敵にこの石をぶつけるだけで倒せると思うし、炎によって目眩しにもなりそうだ。
反応しないって奴だけが普通に心配だが、その辺はまぁ大丈夫だろう。しないこともあるって言ってるだけだし、高確率で反応はするんだよな?多分。
[そんじゃ、大分外の空気も吸うことができたし、早く城へ帰ろうぜ]
[アルゲンさんはどうするつもりなんですか?]
[あいつは昼頃に勝手に帰ってくるだろ]
ひとまずは兵士達の警戒心が弱まるくらいまで動くべきではなさそうだしな。
俺達は路地を通りつつ、城壁の所へ戻って行くことにした。




