三十四 お城の外、とりま見に行きますか
青髪の話を聞いた後、俺達は治療室に戻るとすっかり元気になった勇者達。
その後は日も暮れていたので、食堂で勇者達がご飯を食べ終えるまで明日の行動を話しながら待ち、そのまま部屋に戻ると直ぐに力尽きたように俺は眠ってしまった。
あ、そういえば昨日の夜に溶かされた窓はしっかり取り付けられてたよ。
次の日の朝、昨日の疲れは無くなっていたので早くから神島を尻尾で叩き起して広場へ向かった。
広場に入ると既に猪原とアルゲンがいた。
あ、あいつらはえぇー。
今日はいつもより早く起きたつもりだったんだけどなぁ。
とりあえずは猪原とアルゲンの所へ行き、話しかける。
[お前ら起きんの早くね?]
俺が話しかけると、猪原が首を横に振って答える。
[今日は高濱さんがとても早く起きていたので、私も一緒に起こされました…]
[僕もだよぉ〜]
[なんでそんな早起きだったの?]
[レオラさんが昨日言っていたことについて、高濱さんが言及しに行ったんだと思います]
朝は基本的に自由時間な事が多い。勇者達は全員が起きるまで訓練は行わずに、国の兵士達と話したり他の部屋に行って遊ぶことがほとんどだ。
俺達霊獣は違って広場で待機だけどな。
みんなそれぞれ個室で寝ているし、男子なんだからそういうのは当たり前なんだろうけど、ゲームもスマホもない世界で一体何をして遊んでるのやら…。
ていうか俺と神島の部屋だけ他の勇者から部屋が遠いのも謎だ。俺らだけ圧倒的真反対の部屋だからな。特別感はあるかもだけど。
さて、今日は青髪に外へ出してもらうことになっている。
正直、既に紅明教の対処は安全ということは決まっている。必要という訳では無い事だが、気分転換ってやつでもあるからな!
ずっと似たような景色で過ごしてたら飽きてしまう性分なんだよ。
ていうか、この城の出口を見た事がないんだよな。
裏口は過去に三度あったけど、広場には出入口1つしかないし、この前1階でありそうな所を探したけど見つけれなかった…
窓も見当たるところをこっそり開けようとしてみたけどビクともしなかったしなぁ。
少し待っていると続々と勇者達と霊獣がやってくる。
神島が不安そうな顔でこちらを見詰めていたので、俺は慌てて目をそらす。
もしかして…昨日の俺達が話してたこと、青髪がみんなに話しちゃった?
まぁ、聞いてないにしても、どうせ今日の午後位には知られる事だし大丈夫か。
霊獣達は昨日の出来事でやる気が戻り、また総当りを再開し始めたようだ。白竜もいつもどうり無双している。ただ、風を操っているのを知ってから、白竜が有利になっている理由が少しだけわかる気がした。
青髪は最後にやってきた勇者と一緒に広場へ来た。
全員が集まった所で勇者達は腰に携えた木刀を持って降り始める。
勇者達はいつもより活気が無く暗い雰囲気が流れているような気がした。
恐らくあの青蜥蜴の死を聞いて、現実を見たのかもなぁ。
正直、青蜥蜴を召喚した勇者が1番辛いだろう。
静かな広場を3匹は黙って見ていると、ようやく青髪がこちらへとやってきた。
青髪はすぐ側へ来ると真っ先に頭を下げて謝罪をする。
「少し待たせてしまって申し訳ありません」
[いえ、大丈夫です]と猪原。
[遅いよ〜]
[アルゲン、聞こえないからってそんな事言うなよな…]
[先に飛んで行っても良かったくない〜?]
[いやいや…こういうのは許可を貰ってからじゃないと行けない場面もあるんだぞ]
[そんなのいらないよ〜!]
アルゲンは急に翼を広げて首をブンブンと振る。
びっくりした…か、感情を体で表現しすぎでは?
青髪を見ると青髪はこちらを不思議な表情で見ていた。
「ヤコ様、リエル様とアルゲン様は一体どういうお話をしていらっしゃるので?」
ちょおい!猪原、そのままそっくり答えないてまくれよ?
[唯の喧嘩話です]
「そ、そうですか…」
それもそれでちょっと嫌な感じなんだけど…
青髪から変な奴だと思われたらちょっと傷付くぞ。
もう結構謎ゲージ溜まってるけどな!
「では、外に出る所へご案内します」
青髪はそう言って広場の入口の方へと歩いていく。
俺達は昨日と同じように青髪について行った。
近場の階段を上がり、神島の部屋を横切りながら長い廊下を少しの間進んで行くと大きい窓のある行き止まりに着く。
「こちらです」
こちら…こちらとは?
あの、ここには窓しかございませんけど…。
[ついにおかしくなっちゃった〜?]
青髪は懐から銀色の鍵を取り出し、真ん中の取っ手部分にある鍵穴に差し込む。
あー、たまに見る隠し通路的な奴か…。
巨大な窓は青髪の手によって右側だけゆっくり開かれる。開いたのは窓だけでなく、壁全体が扉となっていて、いかにも隠し通路を彷彿とさせてくる。
ズズズズと言う音と少しづつ廊下を照らし始める太陽の光で雰囲気を強くしている気もする。
完全に開いた所で、俺達は廊下から外にへと出る。
窓を開けた先は外が見えないようにを囲っていた城壁の上だった。
城壁の上の鋸壁はなく、足を踏み外したら落ちてしまいそうだな。
俺達は少し奥に進んで見えていなかった下側を見下ろす。
[おぉ〜…お?]
なんか…えぇ?
ファンタジーでこういう城のある物と言えば3階建て位の高階層の建物がほとんどだと思っていたけど…。
上から見下ろした巨大な町の世界はファンタジー風の石造りでたくさんの家が固まって複雑な感じははあったが、高階層という物というか、二階建ての家がひとつもなかった。
なんなら奥側を見ても外壁すら建てられていない。
防衛に関してはこの城以外一切手をつけてはいなさそうだな。
なんか屋根も全部オレンジ色で統一されてるし…。
[思っていたよりも理想とは違いますね…]
[1階建てしかないのなんなん…]
こりゃあちょっとねぇ〜俺の世間は許してくれやせんよ。
とはいえ、1階建ての家しか無いならば逆に好都合だな。いちいち登る高低差のある筈だった屋根を昇り降りする必要もないわけだ。
「それでは霊獣様、私は城に戻りますので、夕方までにはこちらへ戻ってきてください」
[分かりました]
猪原の返事を聞くと、青髪はペコリと1礼をすると、廊下へと戻って行った。
[それじゃ、言った通りアルゲンは一人で遠くまで行ってくれ]
[お〜け〜。じゃあ行ってきま〜す]
アルゲンは意気揚々と翼を広げて、直ぐに遠くへと飛びだった。
俺は前回とは違ってアルゲンには別の指示をした。
前は街中の住民の声を聞いてくれって頼んだが、アルゲンが向かっていった所は街から離れた所だ。
アルゲンは街周辺の怪しい所を探し、あわよくば隣町まで探してこいと3匹で話し合って決めた。
街の外の状況を知る事ができたなら、物語の攻略の鍵が見つかるはずだろう。
俺と猪原は気ままに屋根を伝って街中探索をする。
紅明教のことについて敵の数と強さとかも詳しく知っていたいからな。
今回は【観察】を頻繁に使うことになりそうだ。
[…で、猪原。これどうやって行く…?]
[城壁には何も降りる所なんてありませんしね…どうしましょうか]
俺と猪原はとりあえず10mはあった気がした城壁を何とかして屋根の上に降りた(俺が猪原に乗って直接落下した)
[うぐぐぐぐ…痛えぇ]
ついでに着地と同時に猪原から離れてしまって背中を強打しちゃったよ…。背中の鱗がちょっと黒ずんじゃってるし…。
俺は降りた城壁の上を見る。下からではもうどれくらい高いところにあるかすら見えづらい。
い、意外とこの高さから落ちても大丈夫なんだな…1m位から落ちてもあんまり痛くなかったし。
やっぱりラノベとかで完全に高いところから落ちても、なんともない人間ってめちゃくちゃバケモンだよなぁ。
[これぐらい我慢してください。時間も限られてるので早く行きましょう]
[あれ?なんか俺猪原にどんどん酷く扱われてる気がするんだが?]
[そんな事ないですよ、私は先に行ってますね]
[えぇー…]
と猪原は俺を置いてスタスタと屋根を登り始めてしまう。
ちょ、マジで置いてかないで?
っていうか、先にアルゲンに降ろしてもらってから行ってもらえれば良かったな…。
背中が痛いのを我慢しつつ、急いで猪原に着いて行った。




