三十三 正直あんま頭に入ってないかも
20分以上話し込んだ青髪の話はとても長く、そして結構すごい話だった。
途中途中猪原が何度も質問をしてたせいで、余計に情報が多かった。助かるけど。
うろ覚えだけどちょっとまとめてみる。
まず、魔王がこの大陸にやってくるとその日すぐに強い力を持った三国がどの国が勇者を召喚するか決めあった。
しかし三国の話し合いは1週間経っても決まらなかった。
何故決まらなかったのか、その原因は数千年前の伝承にある。
魔王が復活した際に勇者も召喚することができる。それだけだったら別にすぐに決まるはずだったが、問題は伝承にたる魔王を討伐したその後のお話にあった。
数千年前、魔王を討伐した15人の勇者と15体の霊獣は次の日に勇者を召喚した国全てと一緒に消え去ったのだ。
その国にいる全ての人々だけでなく、その国に関わった人間全てが消え去った。原因については未だに不明。
三国は勇者の召喚を互いに押し付け合っていたが、最終的には魔王の場所から最も近い国が召喚すると決まることとなった。
召喚する国が決まった次の日、その国は魔王の手によって滅ぼされた。
国民の不安が募る中、残りの二つの国は他の発展途上国に任せることにした。
勿論、どの国も召喚しようとはせず、ただ押し付け合うばかりだった。
そんな中で今俺達のいる国、スリンゼ国の管理職である青髪はこのままグダグダしていては魔王に滅ぼされてしまうと考え、誰も召喚しないなら青髪が独断で召喚することにした。
その時点で、複数の兵士達は不満気で否定する人もいたらしい。
ただ、勇者を召喚するにも何一つ足りなかった為、召喚は不可能に思われた。1週間を経て、無理だと判断した青髪は隣国の少し大きい国にお願いすることにしたのだ。
隣国の協力を得て、1日程スリンゼ国で準備をし、次の日にようやく俺達を召喚したのだとか。
ただし、その後にひとつ問題が起きた。
どうやら俺達を召喚してすぐに、大きな国の一国が勇者を召喚しようとして、出来なくなったという話が流れ込んできた。
勇者を召喚したのを知っているのは、この国の兵士と隣国の王様や召喚士本人のみ。
スリンゼ国と隣国は勇者のことをひたすら隠すようにした。
誰一人に知られてはいけない、外に出しただけでも危ういかもしれない。
弱小国が召喚したという話が住民の耳に入ればまずいこととなる。
「それから一ヶ月が経った時、勇者様方に不満が募り始めているのを見てようやく外に出すことを決断したのです。
そして、ここからが原因を話すのですが……」
[ま、前置き長…い]
[すやすや〜]
あんまり最初辺りは考えない方が良かった気がするなぁ。
色々一気に世論を聞きすぎて頭パンクしそう。アルゲン横にならず目開けながら寝てるし…
大陸で魔王が出て、色々でこの国が召喚するしか無かったっていう話は理解したけど、その間に魔王は一体何してたんだろうか?
大国をたった一日で滅ぼせる力を持っているのにも関わらず、今も動き何一つ無いのは変じゃないか?
もうとっくに大国も滅ぼされてそうにも感じるけど…。
「1ヶ月も経って、兵士が私に対しての不満が溜まりきったのでしょう。外に出さないならば、勇者をすぐにでも殺して別国に召喚させる算段なのだと思います」
なるほど…って言いたい所だけど、それなら不満を持った兵士が街の住民や大国にバラして殺してもらうのが1番手っ取り早くないか?
猪原が青髪に質問をする。
[それなら、兵士が街の住民にバラした方が早いのではないですか?]
猪原、俺の心読んでる?
青髪がその質問に首を横に振った。
「確かに、普通だったらそうした方が良いと兵士も思っているはずです。でも、話さない理由がおそらくありまして」
[理由?]
「はい。不満を持つ兵士は全員、『紅明教』に属している可能性があります」
[紅明教…]
猪原がそれを聞いてなにか思いあたりのあるように言う。
それは俺も同じであの重装備の首なし死体のことを思い出す。
紅明教って、もしやあの真紅のプレートの事…?
実はあれは魔物よけじゃなくて教徒の証だったのか。
「彼等は原生の魔物の昇華を敬愛するような宗教です。教徒は全員真紅のプレートを持ち、数百年に1回現れるとされる真紅の月を待つ者達だと言われています」
へぇ〜、地球で言う皆既月食的な感じなのかね。
[真紅の月とは?]
「真紅の月が現れる夜、世界各地の極一部の魔物が突然変異し、凶暴化するのです。凶暴化した魔物はたった1夜の内に村や街を崩壊させる程に強大だと昔から言い伝えられています」
なにそれ、やっべぇじゃん。
紅明教は意図的に魔物を深紅の月で凶暴化させたいのか。
そういえば、あの深紅のプレートを見てる時、もっと見ていたい欲ともう見たくない欲が入混ざったような気持ち悪い気分になってたな。
俺も魔物だからそういう感覚に陥ったのか。こっわ。
やばい宗教なのはわかったけど、なんで俺達霊獣まで狙うんだろう。
…?あ、いや…俺達霊獣の事を襲っている時ってなかったか?
うーん、黒男とやった時は神島を暗殺しようとしてたし、俺が受けた怪我なんて投げられた時に壁にぶつけられた時だけだ。
今回の重装備兵士とだって俺達を殺そうとは…馬車では猪原に向けてしてたかな?
まぁ原生の魔物っていうのは自然から生まれたようなやっだからなぁ。召喚された俺達はそれに属してはないな。
[人々にとって危険を犯すようなことをしているから、その紅明教の教徒は他の人に知られると危ないのですね]
「その通りです。これで私の知ってる情報は全て話したのですが、霊獣様方も話したいことがあると聞いたのですが?」
ようやく一段落を終えた所で、青髪がすぐに俺達のことについて聞いてくる。
猪原が俺の事を一瞬チラリと見てくる。
いやぁ、俺の方見られても…
[…それが、どうやらあまり必要が無さそうな情報でした。話したかったことが紅明教の兵士が誰かっていう事だったのですが]
「申し訳ありません。紅明教の兵士の情報については既に手に入れており、隠れ家の居場所を数刻前、特定した所でした」
青髪…お前めちゃくちゃ優秀じゃねぇか。
俺らがなにかしている最中に既に大体の事件の真相を掴んでいたんだなぁ。
[そうですか、計画はあるのですか?]
「今夜、勇者様方に計画を伝えるところでした。隣国から聖団の1人を派遣してもらい、奇襲を行う予定です。実行日は明明後日となっております」
聖団…これまた変な団体が出てきたな。名前的にめちゃくちゃ強そうだ。
でもまあ、援軍が来てくれるっていうならもう完全に俺たちは必要なさそうか?
いや、まぁでも一応はやるべきだよな。
俺は青髪に聞きたいことを猪原に話す。
[分かりました。では最後に1つお願いを聞いてもらっても?]
「はい、我々のできる限りであればなんでもどうぞ」
[明日の朝、私達を城から出してくれませんか?]
青髪は猪原のその衝撃的な言葉に驚かざるを得なかった。
おい、ちょっと言い方悪いぞ猪原。
「そ、それは…霊獣様はこの城から離れるということですか…?」
青髪の反応に気づいた猪原は慌てたように直ぐに言い直す。
[いえ!そうではなく、この城の外にある城下町に行ってみたいのです!]
青髪はそれを聞くとほっと胸を撫で下ろした。
城の外に出るっていうのは流石にねぇ…俺達だけで行ったら外にいる低確率エンカウントのエグ強魔物に全滅されちゃうよ。
まぁ、別に外に出ても死にはしないと思う…。
「城下街に降りて何をするのですか?」
青髪が聞く。
[主に気分転換ですかね。1ヶ月間ここに閉じこもっていましたし、私達も精神的にくるものがあるのです]
猪原の言う通り、街を見てみたいのだ。
少し前に遠いとか言ってたけど、青髪に許可さえ貰えれば自由行動ができて、新しい特別なアクションが見られると俺は思った。
用意周到でも、必ず何らかのミスはある筈だからな。
青髪は少し考えた後、顔を上げて言う。
「分かりました。ですが、街の人々には絶対に見つからないでください。もし見つかった場合、城下町の警備をしているラゼンとその兵士達に捕まってしまうかもしれません」
その辺はあんまり心配要らないと思う。
俺達は屋根の上を飛び移りながら怪しい人物が居ないか探す、もしくはアルゲンに運んでもらいながら上空で探すことを計画しているからだ。
「他になにか聞きたい事は?」
[いえ、時間もかなり経ってしまったので今日もう大丈夫です。また疑問があったら聞きに来ます。あ、私が話せることは勇者様には内緒にしてください]
「分かりました。明日の朝、私が広場に来ますので待っててください。私もそろそろ用事がありますのでこれで」
青髪は立ち上がり、俺達が先に出るように言う。
隣を見るとアルゲンがまだソファーに背中を預けて気持ちよさそうに寝ていた。なんとも鳥類とは思えないだらしない格好だ。
[ほらアルゲン、起きろ]
[アルゲンさん、ちゃんと聞いてました?]
[ふわぁ〜、眠い〜]
アルゲンはゴロリと寝転がるどけで全く動こうとしなかったので、猪原と俺はアルゲンを引きずるように運びながら俺達は部屋を出た。




