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二十四 ストーリー遵守

ドガアアァン。




「うわあああ!」

「何?何が起きたの!?」

目を閉じた暗闇で剣を交える金属音が聞こえる中、神島達の誰かが叫んでいる。

こちらも爆風の影響で中の壁に激突、破片が全身に降りかかるし目も回って何が起きてるか分からない。


[痛っったぁ…]

生きてる、かろうじで生きてるけどめちゃキツイ。

なんか爆風だけじゃなくて赤いのも中に入ってきた気がする…。思ったよりも範囲は広かったようだ。


何とか状況を把握しようと首をもたげて目を開ける。


[あぁ…]

見た所、状況は最悪になっていた。


まず、俺達が降り立った場所は草木なんて1つない荒野だった。

自分たちの馬車は猪原の助けによって上側の半分位が剥がれ落ちる程度で済んでいたが、あの爆発物は他の馬車全てに入っていたようで、結構離れた後ろと前の馬車は広範囲に無惨に崩れて燃えており、そこからは予め重装備だった兵士たちが次々と起き上がっていた。



他の勇者達の姿は見えず、生きているかも分からない。今は神島と高濱、泉だけが爆発から逃れて重装備の兵士と応戦している。


「やめてくださいよ兵士さん!」

「うわあああああ!」


泉が泣き叫びながら尻もち着いて剣をめちゃくちゃに振り回す。

あいつあんなキャラだったっけ…

前のラーファウルの時もそうだったけど、いつもはクールなのに恐怖耐性めちゃくちゃ低いな。

高濱と神島は案外冷静で何とか3人の兵士の猛攻を耐えている。

白竜と猪原の姿は見当たらないな、大丈夫だろうか。



俺はこんな状況下でも気持ちが落ち着いた状態でいた。

別に頭がボーッとしてて考えることが出来ない訳では無い。この状況でも必ずなにかが起きて俺達は助かる筈なんだ。


大丈夫だ、死ぬ事はない。ただちょっとした苦難を乗り越えるだけ。

運良く誰にも狙われていないので何度も辺りを見渡して考える。どうやったら助かるか。


兵士は次々に起き上がり、生き残りの神島達に向かっていく、もう長くは持たない。時期にやられてしまうだろう。

他の勇者達が生きてるかすら怪しいし…どーすんだこれ。


「おい神島!なにか出来ないのかよぉ!」

「無理っ、どうしたらいいの!?」

「************!****!」






今にも押し切られそうな3人を見てふと思う。

……これさ、俺一人で逃げてもいいかな?

幸い、まだ走れる位の気力ならある。


いやさ、今の状況で俺は役になんて立たないだろうし、ここで何かをできる気がしないんだよな笑。

まぁ十分頑張った方でしょ。他に出来ることは思いつかねぇや。

この世界に来て早1ヶ月、もうそろそろ潮時だろう。



どうせここで見捨ててもそんな簡単に死にやしないさ。勇者なんだし。

[あはは…じゃ、じゃあ俺帰るね…]


俺は開き直り、まだ全然痛む体を四肢で持ち上げ、神島達が戦っている所を背に脚を引きずりながらゆっくり歩き始める。


「ぎゃああああ!痛い!痛い!死にたくない!」

泉が懇願するように泣き叫ぶ。


猪原と白竜だってもう消息不明だ。自分のステータスの中身も打開策となるものなんて一つもない。どうせ【魔力動作】も物理相手には効かない。


「うわぁ!クソ!」

「高濱くん!」

高濱が対処しきれず斬撃と共に呻き声をあげる。


大体、なんで俺がこんなことしなきゃならないんだ!こういうのは助っ人が全部やってくれる仕組みだろう?

これもストーリーの一環だよ、な?


「投降します!だからこれ以上はやめてください!何でもしますから!」

神島が希望にすがるように懇願する声が聞こえてくる。


………


剣戟の音は止まった。

神島の投降宣言が成功したかもしれない。


「********、*********」

「そんな…」

神島が絶望を感じるように震えた声を出す。


兵士が続けて長々と話し始めるが、かなりの距離を歩き声も既に遠くにあり、もう聞こえなくなった。

振り向きはしない、また戻りたくなってしまうかもしれないし。


[さて…]



体もかなり楽になってきたので足を早めて走ろうとした時、黒い影が一瞬目の前を過ぎ去った気がした。

瞬間、突風が巻き起こり、俺は驚いて目を閉じて歩みを止めた。


[なんだぁ?]


突然の事すぎてびっくりしたが、直ぐに目を開けて辺りを見渡す。

何も無い、荒野だけが広がっている。



いや、これはあれだな。うん。

じゃあ見てみるか。

俺はドキドキしつつ、神島達がいる方向を見つめた。

竜の目のおかげで神島達の奥にいるあの存在は遠くからでも見えた。




そこで起きていた事は人間の2倍はある一匹の黒い狼。

美しく光沢のある全身の毛をそばだて、口元には兵士だった血塗れの肉塊を咀嚼していた。


まぁ、そういうことだよな。

俺が居なくても、結局はこうなる。


俺はニヤリとした気持ちでUターンし、神島達の元へ走り始めた。

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