二十 勇者探し
兵士は向かってきていることに気づいて通さないように手を広げて立っていた。
いや何その全部受け止めてやる精神!
「******、***!」
[邪魔だどけぇ!]
俺達はそんなの構わずに全員で兵士に突進。見事に足から崩されて胴上げ状態となった。
そのまま今までの記憶を頼りにするように左側へと向かい、廊下を走る。
その後を着いてくる霊獣達。
……いや、普通に手分けして探した方が良くね?
そう思って、後方へと話す。
[勇者の居場所は不明だ、手分けして探そう!]
[わかったぞ]
[俺は反対を探して来るぞ!]
俺の声に答えた他の霊獣達は階段や廊下の分かれ道等でどんどん離れていく。
あ、反対側はもう俺が夜全部探索したところだぞ。粘土臭いから言わんけど。
そこそこ走っているうちに俺の側には猪原と白竜の二匹だけとなった。
廊下を進み城の端に着いた所で俺達は一旦止まる。
[マジか…大部屋的な部屋がこの辺にあると思ったんだけどな…]
城の構造は一般的なファンタジーと違って学校のような感じなのだ。だから、1階の広場から離れた所にあると思ったのだが…、どうやら外れたようだ。
[おい、行き止まりだぞ]
[うん何も無いし少し引き返そう]
扉と窓しかない廊下をゆっくりと進む。
廊下には兵士とかの人間一切おらず、相変わらず俺達の歩く音だけが聞こえる。
[それにしてもお城の中にいるのに静かで不気味ですね…見張り1人いませんし、追手もまだ来ていません]
昨日の夜は皆寝ているだけかと思ってたけど、流石にその点は絶たれたかもしれない。
もう既に城の内部で何かが起き始めているんだ。
[こんな適当に廊下をぶらついてても仕方がない、部屋を片っ端から調べるぞ]
どこかの部屋にいる可能性もある。すぐ近くにある扉を前のように開けようとしたが、ノブが下がらなかった。
頭が勢いでドアに強くぶつかる。
軽く下げられると思ったせいで、4足全部乗せで自重を前に乗せながらやってしまった。
落下の衝撃は猪原のモフモフボディに受け止めてくれた。
眩む頭を振り払いながら俺は直ぐに立ち上がる。
[う、痛ってぇしなんか開かないんだけど?]
[鍵がかかっているんでしょう、大体の部屋に共通していると思いますよ]
[ふん、やはり貴様は能無しだな]
[うっせえやい]
お前が思っているよりも考えているっつーの!脳も健康だよ!少なくともこんな奴より知能だけは上回ってて欲しいぜ。
閉められている扉の方を見ながら思う。
でも、ここの扉は閉まっているのに反対側が鍵すらなく空いていたのは…客室だからなのかな?
一応隣の扉も開けてみようと向かう。そしてもう一度、助走をつける。
[リエルさん?扉はあかないと思うんですが…]
[一応な]
隣の扉を跳んでノブに両前足で捕まる。
…するとノブは下がり扉が前に開いてしまった。
[あれ?開いた…]
え、開いた…。
とりあえず考えるよりも先に部屋の中を覗いてみる。
部屋の中は物置のようで、箱が多く詰められていて。椅子やテーブル、ソファ、その他家具だけでなく兵士が使うような鎧や剣も置いてあった。
殆どが古臭そうで横に倒れてたり、破損していてバラバラに置かれていたりして長い間使っていない事がわかる。
不思議そうに猪原と白竜も部屋の中を覗く。
[物置部屋のようだが、些か乱雑であるな]
[物騒な物まで直に置かれてますね…]
[これは、良い情報かもしれないな…?]
こんなに適当な物置部屋があることなんてないと思う。
ここは城なんだし、きちんと整理されているのが普通だろう。後で使うようなものかもしれないな。
流石にここで得られる事はもうないと思ったため、他の部屋の扉を猪原が1つ1つ開けて調べていく。
10くらいの部屋の中を覗いて見たが、どれも乱雑に置かれた置物部屋ばかりで、とても城と言うよりかはゴミ屋敷のように思えてきた。
分かれ道のところに戻る最後の部屋の中を見終えて猪原が言う。
[これって一体どういうことなんでしょうか?]
[いやここまで来たら俺もわかんねぇよ、本当にここは豪華な城なのか?]
部屋を見ずに廊下を見渡せば普通に白く綺麗な廊下でレッドカーペットも、絵画も、窓も澄んで日差しがよくかかって美しい。
自然と見惚れてもっと奥を見ていると、最奥で兵士がゆっくり走ってきているのが見えた。
白竜は俺より先に気づいていたのか直ぐに言う。
[国の無能がやっとこちらへ来たようだ]
[あまりにも遅すぎるな、って兵士を無能呼ばわりかよ…]
[しかも1人しか来てませんね]
そう、明らかに1人しか居ないのはおかしい。
走ってきた兵士のステータスを見る。
あの兵士は広場の見張りと同じ人だった。
[おい、あの兵士は広場にいたヤツだぞ。もしかしてあいつ、ずっと1人で対処しているのか…?]
[え、それは本当にですか?]
なんてこったい。これはかなりやばいんじゃね?
[これは…どうするんだ]
とりあえず俺達はわざと逃げずに兵士が俺達の所へ来るのを待つ。
兵士は俺達のすぐ側までやってくると少し小声で話す。
「*******************…」
耳が良いので話していることは分かるが、相変わらず人間が何を言ってるのかは分からない。
[翻訳pls]
猪原は俺が振り向く前にもう翻訳してくれた。
[これは流石に俺だけじゃ無理に決まってる…と言ってますね]
[えぇ、本当に1人なんだ]
今度は兵士が俺達に聞こえるようにしっかりと話す。
「霊獣様、ここで少し待ってていただいてもよろしいでしょうか?」
猪原翻訳器はもう完璧のようだ。
猪原は直ぐに反応する。
[これは、待った方がいいんじゃないでしょうか?]
[俺もそう思う…]
雰囲気的にこの兵士はあんまり敵ではなさそうだし。
俺は兵士に対して頷くと、兵士は安心したのか俺たちが戻ってきた道を進んで行った。
[でもあいつ、どこに行くんだ?]
兵士は端近くに行くと閉まっていた扉を鍵を使わずに軽々しく開けて中に入っていった。
えぇ?その扉開くんかい…
[どうせなら扉前で待っとこうぜ]
[そうですね]
俺達が鍵がかかっていたと思わしき扉前まで来た所で扉は内側へキィッと開いた。
[…はぁ?]
扉を開けたのは神島だった。
「あ!リエル…」
「あれ?もう来てるじゃねぇか」
「これは〜まずそうだねぇ〜」
[…マジか]
思いもよらぬ事で呆気に取られるが神島を見ずに懸念を添えて部屋の中身を覗く。
部屋の中には会議室なような所で、この前俺と猪原が一緒に勇者について行ったところと同じだった。
そして部屋には大人数の兵士と他勇者達が全員集まってこちらを見ており、青髪も奥にこちらを見ているのが見えた。




