二 俺雑魚じゃん
おはよーございます。
···と言っても今は昼なんだけどね。
窓から入ってくる光の先に大きな太陽が見える。
直接見ても目は平気だ。
俺は四肢を伸ばして欠伸をする。
結構寝てたはずなんだけど…まだ神島が戻ってきてねえなぁ。あいつはどこいったんだろうか。
この暇な時間に体の動きを慣れさせた方がいいよな。
異世界と言えば終わらない戦いに主人公が立ち向かうみたいな感じだし。
いくらドラゴンとなって転生したとはいえ、生まれたてで無力だし、まだこの体に全然慣れていない。歩き方とかも多分めちゃめちゃぎこちない。と思う。
初見で既にこんな動けてるのかっていうのが疑問な気がするけど、その辺は人間であった時に四足歩行の練習も行ってたし?そういうことよ。
んで、慣れると言っても、ドラゴンってどういう風に翼とか動かすんだろう。
感覚的には翼があるって言われないと分からないくらい何も感じないし動く気配もない。
これじゃあまだ無理だと思うし、先にその辺動きまわって体の動きになれさせた方がいいか。
俺はベッドの上で体を精一杯くねらせたり、跳んだりと動き回った。
ちょっと経った後、ガチャっとドアノブを捻る音が聞こえた。
どうやら神島が戻ってきたようだ開いたドアからは神島が現れる。少し緊張しているような顔だ。
どーもー、神島くん、俺だよー。
俺のことは神島には隠しておこう、旅の終わりとか、重要な時にネタバラシしちゃおう。
神島は俺に近づき、ベッドの前でしゃがみ込む、顔の高さが合った。
「えーっと、君に名前を授ける」
名前?神島からもらった名前ならなんでも受け取るぞ!あ、でもダイナミックな名前だけはやめてくれよ?
神島は少し考えた後、口を開いた。
「リエル、君の名前はリエルだ」
神島はそう言って、手を伸ばして俺の頭を撫でる。
頭が暖かく包まれるような感覚。体がスイカ位だから包まれてるようなものなんだが。
俺の頭とか細かい部分はどうなってるかわからないけど、基本トゲトゲしてると思うんだけどなぁ。痛くないのやら。
それにしてもリエルか、いい名前じゃん。
いや、まぁ俺には前世の名前があるけどさ、正直ドラゴンになっちゃって、日本人の名前とか変だからね。ありがたく頂戴しちゃう。
俺がドラゴンとして生涯を終えるまでこの名前は持っておきましょう。
まぁ、主人公だったらこんなこと考えてるんじゃね?
「これからよろしくね」
イエスマイマスター!
なんてね。
神島は俺を抱えて白い豪華な廊下を歩いていた。
綺麗な絵画やらレッドカーペットやらと豪華盛りだくさんだな。
絵画には様々な武器を持った15人の人間と赤いドラゴンが戦っている絵が描かれているものもある。
窓の外も見てみるが、石の城壁で囲まれているようで城の外の様子何一つ見えない。まぁ、こんだけ豪華なんだからここはなんらかの国の城なのは確実だろうな。
歩いて少し時間がたち、神島は右のドアに入るとそこはまぁ、雰囲気が専門学校の教室みたいな感じだった。
茶色い長机的なものが階段状に二段ほど半円で並べられており、半円の中心に台、そして人が椅子に座っている。容姿はよく分からないが、とりあえずファンタジー風のポニーテールの髪型の青髪の騎士としか言えない。
長机の方にも人がいる、見た感じ15人位だろう。
猫とか狐とか鳥とかが一人一人の机や膝にいる。
おそらく俺以外に卵からこんにちはした霊獣というやつだろう。いかにも俺より弱そうだ。多分。
「神島遅かったじゃないか」
昨日のもう一人の声のうざい声がすぐそこで聞こえた。
声の元を見るとそこには黒髪で単発でシンプルな顔立ちにファンタジー風の服装…まぁよく見る姿で、高濱亮ってやつだ。
「ごめん、道に迷っちゃって」
あー、道に迷っていたから長かったのか。周りをキョロキョロしてたから何となくそんな気もしてたけど。
「そう、お前が最後だからな、早く座りなよ」
ていうか、周りを見ると全員知っている顔だな、俺の同級生じゃん。
クラス転移ってやつ?にしては人数が少ない気もするけど…。
神島が俺を抱えたまま高濱の隣に座ると前で座っていた青髪の人が立ち上がり、話を始めた。
「**********」
え?何て言ったこいつ。
よくわからん言葉で話してるやん。
青髪の男は話を続ける。
「**********************」
周りの雰囲気が一気に緊張に変わる。
あれ、皆わかってるの?もしかして俺だけ理解できてないのか?
「**、*******************?」
うーん、わからん。
何いっているかさっぱりだな。多分ニュアンスで質問しているのかな。
そう思うと左にいた人が質問的なものに返した。
「魔王がいる世界ですか?」
魔王って、異世界らしいな。
「**、******。***************。*************************************。**********************、************************、*********************************」
あ、しんどい、しんど。分からない言葉聞いても疲れるだけなんだが。長いんじゃあ。
誰か翻訳係来てー!
周りから驚きの声が聞こえてきた。
「…これが俺のステータスなのか。うわ、攻撃力37って、結構高い気がするぞ…神島は?」
「うーん、だいたい全部50くらいだね、称号は…召喚された勇者だね」
「ずる、しかも勇者の称号は全員持ってんのか」
神島達が何も無い所を見ながら言う。ステータスの板的なものが見えているのだろう。
ステータスねえ、俺はステータスを開こうとしても反応しなかったからな。ちょっと悲しいけど周りの雰囲気だけ見て楽しんどくか。
…まぁ、もう一回ステータス言ってみるか。なにか変わったかもしれないし。
無理だと思いながら俺は適当にステータスと念じた。
すると、目の前にホログラム的な青い画面が!
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名前:リエル
種族:ミニマナドラゴン
状態:通常
レベル:1/5
体力:14/14
魔力:18/18
攻撃:11
防御:10
魔法:15
敏捷:12
総合戦闘能力:25
特殊技能
【魔力動作】【観察】
技能
【あばれる】
称号
【召喚されし霊獣】
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え
ステータスが出やがった。
急に出たことに驚いてビックリしてしまった。
神島が俺に困惑の目を向ける。
おっと、すまん気にしなくていいぞ。
いやぁ、本当に出るとは思わなかったんだけど、やったね。
まぁ、このステータスってめっちゃよっわ…、マジで言ってんの…?
神島は平均50とか言ってなかった?
しかもレベルは5分の1ってことは5レベしか上げれないのかよ。
なんかRPGみたいに魔法とか敏捷って書いてるし、あんまり見ない総合戦闘能力は53万とか何処かにいそうだな。
技能に書いてある変なやつはノーコメント。
いやまだわからん、特殊技能が名前的に微妙だけど強いかも。
詳細とか見れるかな?
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【魔力動作】
魔力を動かす能力〈1〉
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【観察】
自身のステータスを表示する。相手のおおよその
実力も測ることが出来る。
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はい最高、じゃなくて弱すぎ効果雑魚いな!
観察はまぁ役にたつけど魔力動作とか絶対使えないって。魔力を動かすだけだし。
タイトルにすると«最弱竜は最弱技能を使って頑張って生きる»とかだろ。
ていうか、1ってなんだよ1って!なんか詳しく説明してくれないのかねぇ…。
残念にステータスを見つめていると周りの人達が立ち上がって、青髪が先導して部屋からでていっていた。
ステータスを見ていた内にもう話が終わったのか。一旦見るのは止めるか。
俺は神島にずっと抱えられながら部屋から出た。
なんか、ずっとこうされてるとラブコメ展開とかきそう、俺ドラゴンだから100無いけど。
暫くまた豪華な廊下を進んでいると、石垣に囲われた円状の大きな広場に着いた。
広場と言っても、足元は砂場のような色で、そこそこ大きい家の敷地ぐらいの広さのため、観客席のない闘技場のようにも見える。
広場にはこの国の兵士かもしれない人達がたくさんいた。
騎士集団の先頭にいる人は周りと違って素人でも風格が違う気がするし、隊長なのかもしれない。
先頭にいた人が喋り始めた。
「**********************?」
うーん、やっぱり全く分からん。分からないのがもどかしすぎる。
もしかしたらあの青髪の男だけかもしれないと思いたかったけどやっぱり分からん。
…もしかしてこれって自力で言語を、言葉を覚えろと?
異世界転生じゃあるあるだろうけど実際覚えるとか無理ゲーじゃね?英語すら話せないのに。
でも人の声がわからないとこの世界で人と意志疎通とか無理だよな。
まぁ、頑張って聞いておくか、絶対無理だけど。
さてと、ステータスの続きを見よう、あまり見たくない気もするけど。
他の霊獣達はいつの間にか主人の元から少し離れた場所で集まっている。
俺は神島の腕の中からひょいっと脱出して霊獣達が集まる所でステータスを開いた。
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【あばれる】
あばれる
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うん、知ってた。
説明が雑すぎるだろ…もうちょっとマシな説明の仕方なかったんですかねぇ。
もしかしたらと思ったけどやっぱりゴミ技能だったよ。チクショウ