十五 植物コワイ
大人数の集団というのは陰の者にとっては憂鬱な場所だ、それは異世界の人間でも変わらないと思う。
[はぁ〜、暇。]
[これも私たちの安全のためにやっているのですから仕方ないですよ。]
そう、俺たちは1時間ほど森の中、兵士の方々が先導してみんなで遠足気分のような感じで歩いているのだ。霊獣達は各勇者に運ばれてるけど。
うるさ過ぎる…。
ていうかさ、もういいじゃん、森で魔物と戦うなんて。
レベルを上げるためにやってるんだろうけど、それなら国側が魔物を捕まえて勇者達に倒させればいいのに。
「さっさと出てこいやぁ!魔物共がよお!」
「いないね〜、緑の自然しかないね〜。不思議だね〜。」
「見飽きたよこの風景、もう疲れた…。」
ほら、もう勇者達だって飽きちゃってるじゃん。あそこの女子4人組なんかすでに帰りたい雰囲気かもし出してるし。
それ以外の奴らは未だに楽しそうにしてるし、魔物も出現しないのに何を楽しそうにしてるのやら。
はぁ〜、何か起こんないのかねぇ。正直これがラノベとかだったら、常に面倒事を引き起こすのに…。
いや、何か問題あること自体普通じゃないからこれでいいのか。
でもさ、ほら、いっぱいあるじゃん。突然この森が火事になったり、昨日の魔物がまた来たり、あと新キャラとかが来たり?
とかするでしょ普通。
ここまで何も起こらないのはさすがにちょっとねぇ〜。
昨日は痛い思いしたけどさ、でも、あれはあれでスリル満点で本物の主人公みたいで楽しかったし。
もう二度と会いたくないけど。
今ここで暇を紛らわす事が出来るものといったら、周りの風景くらいだな。
昨日の探索した森は現実味が凄く、地球とほぼ変わらないような森(俺らからしたら巨大樹の森だけど)だった。
今居る場所は少し立地が悪く、木の形もぐにゃぐにゃで歪な形なのが多く、見た事のない花や草が沢山あった。草は少し高く、勇者達の膝辺りまで伸びている。
おっと、俺は神島の肩の上だぞ。
そろそろ勇者達が疲れてきたので全員で休憩タイム。
小さな石で地面がゴツゴツしている川の近くで霊獣達と俺、猪原は勇者たちの肩や腕の中から降りる。
そういえば、霊獣達はよく戦いはするんだけどお互いに長い間コミュニケーションをとっているのをみたことが無いんだよな。道中も一言も話さないし、休憩中の今も談笑中の勇者に近づかず、周りを見回しているだけで他の奴らと関わろうとしていない。白竜は地面で寝てるけど。
隣から猪原が話しかけてきた。
[それにしても、どうしてこんなにも魔物が少ないんでしょうか。なんらかの厄介事に巻き込まれているのはわかりますが…]
[もしかしたら、どこかでスライムみたいにフュージョンして強くなってるんじゃね?]
[うわー、それだと後に絶対戦わないといけないじゃ無いですか]
猪原はファンタジーテンプレ系のお話が好きなので、基本的にこういう話をしても簡単に察してくれるからいいよな。俺の通っていた学校がそういう系だからそれ以外のやつも大体察してくれるけど。
普通に考えて、生物の出現率の低さは国側も理解しているはずだ。
この森は、国から大体1kmほど離れてると思う。そこから奥に徒歩で3kmほど歩いている。国を馬車で出た時の感覚でいうと、やっぱり距離はそこまで遠くは無いし事前に魔物が少ないってわかると思うんだが。
[もしくは、王国側が悪役とか…]
俺はそう呟く。
[それだったら私たちはヤバいですね]
とにかく、こういう不思議な事態についていろいろ考えてないと。後からじゃ手遅れだ。色々可能性は探っていこう。
かといって、力のない俺がなにかできる訳でもないんだけどな!
[それにしてもこの森、非常に変な感じですね]
[変すぎて怖いくらいだ、あの花も見た目が凄いし、いよいよファンタジーって感じだな]
そう言って俺は木の根っこに生えてあるめちゃめちゃでかいハエトリグサに豪華な黄色い花弁が周りについている植物を見た。
猪原もそれを見る。
[明らかに触れたら危険と言っているようなものですよね]
[危険というか、近づいたら死ぬんじゃないか?]
そう言うと、木々の隙間から飛んできた小さい鳥が奥から飛んできた。
小鳥はハエトリグサのような植物の近くに行くと、ハエトリグサが黄色い花弁を大きく、めちゃめちゃ大きく開いて、小鳥を一瞬にして包んだ。
ベキバキボキと変な音が聞こえたが、きっと気のせいだろう。勇者達から少し離れているため、えぐい光景には誰も気づいていないようだった。
[あ、あはは、植物にはあまり近づかないようにしないとですね…]
言われなくても、目の前で見せびらかすようにされたら絶対近づかねぇよ。
兵士も何らかの注意喚起とかしたよな?な?
ちょっと不安になりつつ、俺は神島の所へ近づいた。
近づく途中、急に地面から後ろ右足を引っ張られた。
グハァ!な、なんだぁ!?
バランスを崩した俺は倒れる。
慌てて後ろを振り返ると後ろ足に植物のツタが絡み付いていた。
え、うわぁあああぁ!ナニコレ!?
ツタは絡みついた足の縛る力を強めると小さなつぼみがツタからだんだん生えてきた。
[と、とってぇぇぇえぇー!]
[え、ど、どうやって取ればいいですか!?]
つぼみが生え終わると俺の足からなにかを吸い始めた。
え、栄養?を抜き取られる!
神島達は誰一人俺の状況に気づかない。
[切ってくれぇ!]
[は、はい!]
猪原がツタを爪で、歯で切ろうとするがかなり頑丈のようだ。傷1つついていない。つぼみはだんだんと開き花へと変わっていっている。綺麗な白い花だ。
そんなこと感心してないで俺どうすりゃいいの!?
このままだと体がしおれちゃう…。
縛られた後ろ足は感覚が薄くなっている。
なんか気分も悪くなってきた気がする。
このまま寝ようかな…ってダメダメ!頭も栄養不足になってやがる。早くどうにかしてくれ…
あたふたしている俺達に気づいた白竜がやってきた。
[なにを遊んでいるのだ貴様]
遊んでねぇよ!逆だっつーの死にかけてんだよ!
[だ、はゃ、、助け]
体がしんどすぎて声もあまり出せない。
[全く、植物ごときですら負けるとは、滑稽だな]
白竜はそう言うとツタを爪で容易く切り刻んだ。
ツタを切られると花はすぐにしおれて地面と同じような色となりツタごと地面の中に引っ込んだ。
体がしおしおの俺は動けないがなんとか助かった。
なんでこんなあっさりと死にかけるんだよ、俺
体感20分程の休憩を挟んだ後、何とか体は元通りとなった。
そろそろ休憩の終わりかと思いきや、 兵士みたいな人が言った。
「〇〇、〇〇〇〇〇〇〇〇」
[翻訳プリーズ]
[至急、王国へと帰還する。そうです]
え、えぇ…




