十一 予想外の強さ
[我がやる、貴様らはそこで見ておくがいい]
白竜がそう言った。
相手の方が大きいけど、あいつがやればすぐ終わるだろうな。
一応魔物がどれくらい強いか【観察】で見てみるか。
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«ラーファウル»
総合戦闘能力:109
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うわ、強い。
100超えは俺なら一撃で死ぬだろうな。
白竜の方が高いから大丈夫だろうけど一応言っておくか。
[その魔物、結構強いぞ]
[それは貴様の基準でのことであろう]
白竜は俺の言葉をどうでもいいと言うように返事をしてくる。
うわ、ちょっとイラっとするなぁ。
白竜はもうすでにラーファウルの目の前まで進んでいる。
…なにもしてこないな。
それどころかやつは一切動かない。
不思議に思っているとふと白竜の上に俺らと同じくらいの大きさの火の玉が浮かんでいた。白竜はそれに気づかずにラーファウルが動くのをじっと見ている。
俺が気づいた瞬間、直ぐに叫んだ。
[危ない!]
俺が叫んだと同時に火の玉は真下めがけて落ちていく。
俺の叫び声は白竜に届いたのか周囲を確認、火の玉を視認し、ギリギリで横に回避した。
地面に着弾した火の玉は軽い爆発を起こし、煙がまう。
爆発した場所は小さなクレーターができて、表面に謎に黒いドロドロな液体が沸騰したように煙を出している。
あ、危な。白竜にいっていなければ今頃死んでしまっていたかもしれないな。
ていうか威力強すぎだろ!チートだチート。戦闘能力1000くらいありそうだよ!
[あの魔物、とても強くないですか?]
[少なくとも初戦で戦うべき相手ではないと思う]
[…確かに奴は強いようだが、火の玉の回避は容易だ]
白竜はラーファウルから離れて俺達のところへ戻ってきた。
あの魔物は不動でもう一度火の玉を生成し、俺らが攻撃してくるのを姿勢を低くして待っている。
[あの魔物、威力の高い火の玉しか出さないのかもしれない。俺が囮になるからその間にこっそり二人が攻撃してくれ。]
あいつの火の玉の速度は俺でも避けることができる速度だ。
戦力にならないの俺が引き付けて白竜達が速攻で片ずける、最高の作戦だろ。
やつは接近したらどうせ接近戦を始める、その間に神島達をどうにかしないと。
[その作戦、リエルさん大丈夫なんですか?]
[ならさっさと奴に向かって死ぬがいい]
[うわ、辛辣だなぁ]
[リエルさん、死なないでくださいよ!]
俺は猪原の言葉になにも言わずにラーファウルに向かっていった。
ラーファウルの近くまで来ると正面の火の玉ではなく、右方向から火の玉が接近してきた。
わー、火の玉を間近くで見るととても早いなー。
って回避ー!
俺は慌てて全力で後ろに飛び退く。
火の玉は俺に当たることなく遠くで爆発した。
あっあぶねぇ、一回の回避でこれかよ。猪原との特訓の時よりもしんどいぞコレ…。
白竜はギリギリでもすんなり避けていたけど、俺がやると一回だけでもめっちゃキツいぞ。
こんな作戦言わずに白竜1人にやってもらえればよかった。
俺が考えている間にもかかわらず、すぐに準備していた正面から火の玉が飛んできた。
俺はもう一度全力で回避する。
火の玉は後ろの神島達に当たらず通り過ぎて行った。
最初から緊急回避したせいか、既に疲れているんだが。あと何回避ければいいんだ?
今度は上から火の玉が飛んできた。
いやきついって!
俺はまた全力で避けた。
火の玉は地面で爆発し、ギリ足元が範囲内に入ってしまう。
[うわあああ!]
痛っでぇぇぇぇえ!熱い!
あまりの熱と痛みに大声を出して転げ回る。
足元を見ると黒くなって少し溶けていた。
はぁ、はぁ、やばい死にそう。そんな簡単に死なないけど。
で、でも、これで白竜達が攻撃するはずだ。
俺はラーファウルに目を向ける。
白竜と猪原は既に回り込んで両側から爪と噛みつきの一撃を放とうとしていた。
行ける!っと思ったとき、ラーファウルは勢いよく真っ直ぐ動き出した。
白竜達の攻撃は簡単に回避された。
ラーファウルは避けただけだと思ったが、止まらずに気づいたら俺の目の前まで来ていた。
俺は攻撃を回避されたことに呆然としていた。
ラーファウルは俺が一撃で死ぬであろう兎の血が付いた大口を開けて迫って来た。
ラーファウルの攻撃は足が動けないため、絶対に避けることが出来ない。
白竜達は離れたところにいて間に合いそうにない。
[リエルさん!]
あ、わりぃ、俺死んだ。