第6輪・希少な黒百合姫と不器用な黒百合姫
私はその日から、次第に彼に好意を寄せる様になった。
しかし、成長していくにつれ、私は素直に好意を伝える事が怖くなっていった。
自身の母親は黒百合姫と呼ばれ、忌み嫌われていた。
その娘だからと私も嫌われていたので、周りを信じるのが怖かったのもあったのかもしれない。
私の彼へのあたりは、表向きは日に日に強くなった。
しかし、そんな事情をほぼ全て理解していた彼の両親は、どんなに彼へのあたりが強くなろうとも、私を怒らなかった。
年上で権力者である彼の両親には、どこか安心できて、本心を何度も口にすることができた。
だから、私が素直になれるようにと後押しをしてくれたのだが、どれも失敗してしまった。
わざと彼の両親が二人の部屋を作ってくれても
『あなた様と寝るなんて、寝てる気がしないので、こちらで寝ますわ』
だとか可愛げのない事を言っては、ソファーでよく眠っていた。
本当は同じベットで寝るだなんて、とてもじゃないけれど恥ずかしくて眠れない気しかしなかったからだなんて言えるわけもなかった。
そんな毎日を過ごしていたばかりに、私は勘違いされ続けたのだった。
私はそれを心の底から後悔していた。
だから、こんな日がくるだなんてと驚いていた。
そう、私は死んだ筈なのに。
自分の家で幼い頃の姿でベットの上に寝ていたのだ。
目がさめて鏡を見た瞬間はとても驚いた。
そして更に驚いたのは
『起きたのか』
と、私に声をかける御父様だった。
なんとか咄嗟に
『御早う御座います、御父様』
と、きちんと挨拶をすることができたが、本当は心臓が飛び出るほど驚いた。
そして私は自分の隣の部屋のドアの隙間から漏れる、黒百合の匂いに驚いた。
そう、生きていた頃の御母様の匂い。
御母様は世にも珍しい精霊の血を受け継いだ由緒正しき家計の娘だった。
普通は御母様の御母様…つまりは私の御婆様の血の中に少しだけ流れている精霊の血が発動して、その精霊に関する匂いがするはずだった。
しかし、どうやら御母様はかなり遠い親戚の血が暴走した、
特殊な体質らしく、御母様等の近しい親戚に関する精霊のものではない匂いがした。
そう、百合だった。
百合はとても人気な精霊であり、希少な筈であり、普通なら国中から崇められるべきなのだが、御母様の血に流れているのは、運悪く黒百合の精霊の血だった。
黒百合の精霊にはどうも悪い伝説が多く、その中でも一際目立っていた黒百合姫という黒百合の精霊の姫からとってつけたあだ名で呼ばれ、忌み嫌われていたのだった
私はそんな御母様の匂いにつられるように、御母様が生きていた頃ならば、御母様の部屋のはずである場所のドアを開けるのだった…
お久しぶりです
十六夜零です
更新の期間がかなり空いてしまったにも関わらず、なんと、
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をいただきました
ありがとうございます
今後ともこんはきをよろしくお願いいたします




