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04 薬草採集に行ったらモンスターに遭遇した

 冒険者を引退して、故郷の村で農民をやっている、俺。

 今日は村の中では採取できない、特殊な薬草を手に入れるために山登りである。


「大丈夫だと思うけど、なにかあったときはよろしくね」

「へいへい」


 一緒にいるのは、幼馴染のユリィ。

 正確に言うと薬草を採取しに来たのはユリィで、俺は彼女の用心棒だ。

 俺はこれでも一応、元冒険者なので、野獣やモンスターが出た際の戦闘要員になるだろうと思われているのだ。


「よかった、今年は誰にも荒らされてないみたい」


 薬草の群生地に到着。

 ユリィが安堵の声を漏らした。


「野獣とかに荒らされるのか?」

「まあね、鹿とか、猪とか。あとは低級なモンスターとか……」


 ガサ。ゴソ。

 ギィギィ。


 そんな話をしていたら、森の茂みの中から不穏な音と声が聞こえた。

 奥から、ずんぐりむっくりとした半裸の化物が出て来た。


「キャー! ちょ、ちょっと、こんなでっかいモンスターが出るなんて聞いてないわよ!」

「トロルだな。こんな田舎にも出るのか」

「冷静に言ってないでどうにかしてよ!」


 とぼけて感心する俺と、キャーキャー騒ぐユリィ。


「オッラァ!!」


 手に持っていた藪払い用の鉈でトロルに攻撃。


「ブギュウ……」


 脳天をかち割られて、トロルは死んだ。


「相変わらず滅茶苦茶強いわね、アンタ……」

「首都にはカタナひとつでドラゴンを切り刻むような冒険者もいるぞ。俺なんかは別に大したものじゃない」

「はあ……」


 脅威は去ったので、せっせと薬草集め。

 根っこから引き抜かずに、あくまでも葉っぱだけをむしるように採集する。

 そうしないと次の年に生えてこないんだそうだ。


「……時魔法かけたら、もう一回伸びてくるんじゃねえか?」


 そう思って俺はじんわりと魔法をかけてみた。

 しかし、ほんのわずかしか伸びなかった。

 まともな大きさに育てるには、一晩中魔法をかけ続けなきゃならん。

 さすがに葉っぱ一枚のためにそこまでやってられんな。


「もうだいたい採り終ったんじゃねえか?」

「そうね。でもせっかくだからキノコとかも採っていきましょうよ」


 ユリィがそういうので俺も付き合ってキノコ狩り。

 そのときである。


「キャーーーーッ!! ま、また出た! トロルが出た!!」


 泣き叫んでユリィが俺の背中に隠れる。

 しかし、今回はさっきとは事情が違った。

 トロルの足元に、もう一匹、別のモンスターがいた。


「ジェリーデビルの幼生か。あれはトロルより更に珍しいぞ」

「どうでもいいからさっさとやっつけてよ!」


 フシュー、と俺は深く呼吸をして、駆け抜けざまにトロルの首を刎ねた。

 そして、地面でプルプルと震えているジェリーデビルの幼生を見る。

 名前の通り、ジェリー状の半透明、不定形の体を持ったモンスターだ。


「このジェリーデビルを襲って食うためにトロルがこの山に寄って来たのか。こいつの体は栄養価が高いらしいからな」


 食っても美味いモンスターなので、討伐依頼がたくさん出ていたことを思い出す。

 俺は冒険者パーティーを追放された身なので、そのときのことはあまり思い出したくないんだが。


「ぷるぷる、ぷるるる」


 なにかを俺に対して訴えかけているような動きをしている。

 あいにくとジェリーデビルのボディランゲージはわからない。


「レン、この子、食べちゃうの?」


 ユリィも興味を持ったようで、ジェリーデビルの体をツンツンとつついている。


「別にどっちでもいいんだがな。この森に放置しておくと、トロルたちみたいに別のモンスターが寄って来るんだよな」

「じゃあ、村に連れて帰ればいいじゃない。害のあるモンスターじゃないんでしょ?」

「そうだな。爺ちゃんやマヤも呼んでみんなで食うか」

「可哀想でしょ! 悪いことしてないのに!」


 さっき、別に悪いことをしてないトロルを2体、俺はサクッと惨殺したわけだが。

 

 そんなわけで、俺の家の同居人にジェリーデビルが加わった。

 爺ちゃんが寝ぼけてたまにかじっているようだ。


 ジェリーデビルは水と空気とその辺の雑草だけ食ってれば生きていられる。

 畑仕事の雑草むしりに、ジェリーデビルは大活躍した。


「ぷるぷる! ぷるん!」


 気のせいか、一仕事終えた後のジェリーデビルは誇らしげだ。

 愛嬌もあるし、しばらくは食わずにおいてやろうと思った。

 

 

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