16 大規模討伐ミッションに参加した・前編
若人たちに喧嘩を教えたり、畑の作物の面倒を見たりして過ごしていた元冒険者の俺、レン。
ある日、そんな優雅な暮らしをしている俺のもとに、首都から一通の便りが来た。
「冒険者ギルドからの手紙ニャン? 懐かしいニャァ」
「なんだって今更、俺なんかにギルドが便りをよこすんだ」
開封して中身を確認する。
国境近く、今では誰も寄り付かなくなった廃城に、上位のモンスターが住み着いたらしい。
そいつは下級悪魔を組織して軍勢のような規模まで膨れ上がってしまった。
「ありゃりゃ、シュウザのパーティーの仲間が二人も大怪我して戦線離脱したのか」
手紙をよこしたのは俺がもといたパーティーのリーダーである、シュウザだった。
怪我人が復活するまでの間、穴埋めとして俺を雇いたいんだろう。
「バカにした話ニャン! そもそも真面目に冒険者やってたレンちゃんを追い出したのは、シュウザの野郎だニャンよ!?」
前にギルドのラウンジで給仕をしていたマヤも、シュウザのことは知っている。
しょっちゅう色目を使われてすごく嫌だった、とのこと。
「そうは言っても俺が冒険者を辞めて田舎に帰ったとき、結構沢山の金をくれたのはシュウザだからな。俺の爺ちゃんの歳のことも心配してくれて、田舎に帰れって言ってくれたんだよ、アイツ」
その金でマヤを奴隷から開放できたというのもある。
というわけで、俺は久々に、シュウザに会いに首都に行くことにした。
喧嘩別れしたというわけでもないし、そのときのわだかまりも俺の方にはもうほとんどないしな。
「よ、よく来てくれたな、レン……」
首都の冒険者ギルドでしばらくぶりに会ったシュウザは、やつれてボロボロだった。
「なんか大変そうだな。敵はどんな奴なんだ?」
「上位悪魔、いわゆるアークデーモンってやつだ。部下にはオークの軍勢が少なくとも100、ケルベロスとバジリスクも合わせて10体以上いる……」
それは確かに面倒な敵だが、シュウザたちSクラス冒険者パーティーなら、難なく対処できそうな気もするが。
「それだけではないのでござる。敵の根城には様々な罠が張られていて、城の周りの平原も広大な毒の沼地に変容しているのでござるよ」
黒髪を頭の後ろで縛った、カタナ使いの女が付け加えた。
俺と入れ替わりでシュウザのパーティーに加わった、カタナの達人だな。
「自己紹介が遅れたでござるな。拙者の名はイスカと申す。遠い東の国の出身でござる」
「どうも、レンです。辺境の村で農民やってます」
シュウザたちパーティー4人は、王城からの依頼を受けて悪魔どもの根城の斥候、いわゆる威力偵察に出たらしい。
敵の規模を図りつつ、可能であればボコボコにしてしまえと言う任務だ。
シュウザいわく、油断や気の緩みもあって、散々な目に遭って逃げ帰ったのだそうだ。
「王都はギルドの冒険者を中心に、討伐隊をかなりの規模で編成するみたいだ。俺たちもその討伐隊に参加して、今度こそ完膚なきまでにあの魔物たちを殲滅したい。力を貸してくれよ、レン」
「最初からそのつもりで来たんだけどな。嫌だったらわざわざ首都まで来ねえよ」
シュウザの頼みに軽く応える俺。
それを聞いてイスカという名の女剣士も安堵の顔を浮かべた。
「かたじけのうござる」
「俺はあんたより白兵戦弱いと思うんで、危ないときは助けてくれよ。怪我せず無事に帰って、新しく植えた新種の作物の生育を早く確認したい」
冒険に出ていても、俺の本業は農家である。
「野良仕事をなさってござるか」
「ああ、今はイネって穀物を試験的に作り始めたところでな。勝手がわからないから色々七転八倒してるんだ」
「ほお……」
なにやらイスカさんは興味深げな顔を浮かべたが、まずはミッションを片付けて無事に帰らないとな。
というわけで俺は久しぶりに冒険者としての依頼を受けることになった。
バッツとリナくらいは、いい訓練にもなるだろうし連れて来ても良かったかなと思ったが。
急いでいたし今回は仕方がない。
敵は大軍。
味方は満身創痍。
久しぶりに、神経がひりつく、緊張した任務に俺は赴くのであった。
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