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11 ダンジョンで悪戦苦闘した

 このダンジョンを作った奴は性格が非常に悪いということだけはわかった。


「階段があるぞ、行ってみよう」


 そうして降りている途中、階段の足場が抜けて落とし穴にはまり、その下の部屋には鉄の杭が!


 カチリッ。


 意識の中で音が鳴り、俺とリナは遺跡の入り口に戻っていた。


 そう、死ぬような目に遭ったら「ダンジョン突入前に戻る」という時魔法を仕掛けておいたのだ。

 

「レンさん、なにか顔色が悪いようですけど……?」

「気にするな。大人には気苦労がたくさんあるんだ」


 リナには、俺たちが死ぬ目に遭ってそのたびにダンジョン入口に戻っているという認識はない。

 俺だけがそのことを記憶しており、ちなみにこれでもう255回目だ。


 石の扉がギロチンのように落ちてきたり、横の壁から矢が飛んできたり、毒ガスの吹き出る部屋に閉じ込められたり、などなど、などなど……。


 実に多種多様な殺され方をした俺たちは、256回目のチャレンジで、ようやくダンジョン最奥に鎮座する、ヌシともいえる魔物に邂逅した。


『よもや、か弱き人間ごときがここまでたどり着くとは……』


 そう言って俺たちを迎えたのは、尻尾が九つに別れている巨大な化け狐だった。


「れ、レンさん、この相手は、強大すぎます……」


 俺の背中に隠れているリナも、すっかりおびえきっている。

 これは普通の魔物や魔獣というより、ほぼ神獣の類だな。

 冒険者やってたときも、これほどの存在にはなかなかお目にかからなかった。


 ともあれ、この神さまじみた魔物への対処を決めなければいかん。


「狐の神さまに一つ聞きたいんですがね。ここを根城にして、なにをなさるおつもりですか?」

『なにもせぬ。我は静かに眠りにつく場を探し求め、ここに至ったまでのこと』


 狐さまが言うには、大地や世界と同化し、本当の神になるために、もう眠りにつきたいのだそうだ。

 堅牢なダンジョンの奥底ならばだれにも邪魔をされないだろうと、この場を選んで罠や防衛機構をガチガチに構えたということだ。


「それは、ご迷惑をおかけしまして……」


 俺は素直に頭を下げる。

 

『よい。面白いものも見せてもらったしな。手土産をとらそう。受け取るがよい』


 そう言って、狐さまは口から光る玉を吐きだした。

 

『祭壇を作り、その玉を我と思って祀るがよい。さすれば、汝らに加護を授けよう』

「ありがとうございます。村に戻ったら、さっそくそのようにします」


 よくわからんが、貰える物は貰っておくか。


『もう行くがよい。我は眠る』

「わかりました。ではこれで失礼します」


 きっとありがたいのであろう宝玉を貰い受けて、俺とリナは遺跡を出た。


 狐神さまは「面白いものを見た」と俺に対して言っていたな。

 きっと俺が時間遡行しているのを、神さま的な力で感じ取っていたんだろう。


「はあ、あんなに強大な魔力の持ち主が、いるんですねえ」


 貴重な体験をして、いつもは見せない興奮した表情でリナは言った。


「あれでも古代のドラゴンよりは格下だと思うぞ。やっつけちまってもいいんだが、面倒臭そうだから今回は放っておこう」

「え、た、倒せるんですか、レンさん?」

「百回くらい挑めば、攻略法が見つかるんじゃねえかな」

「その前に死んじゃうじゃないですか……」


 俺は死にそうになっても、その前に戻ってやり直せるからな。

 そのことはいまのところ誰にも打ち明けていない、俺だけの秘密ではある。


 本当に死んでしまったときは、きっと元には戻れないんだろうと思うが。

 それはよくわからないし、試すつもりもなかった。


 村に帰り、自慢話をしたらバッツが死ぬほど悔しがった。


 リナは狐神から譲り受けた宝玉を、丁重に祭壇を作って、毎朝祈りをささげている。

 なんらかのご利益があって、村がもっと豊かになればいいなと俺も思った。

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