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10 ダンジョンに乗り込んだ

 武術訓練を若者たちに施して。

 魔物の生態や弱点、行動パターンなどを若者たちに座学で教えて。

 もちろん畑や酒蔵を見回って。


 辺境の村でそうして過ごしているうちに、見どころのある若者たちも何人か育ってきた。


「じゃあバッツは1班、リンは2班を率いて、それぞれ北東の山と北西の山を調査しに行ってくれ」


 俺はその有望な若者たちを2つの班に分けて、練習がてら近隣の山々を調査に向かわせた。


「わかったぜレン兄ちゃん! 魔物が出ても、倒しちまって構わねえんだろ?」

「無理すんなよ。勝てないと思ったらさっさと逃げろ」


 バッツは自分が班長を任されて、意気込んでいる。

 元気なのはいいことだ。


「細心の注意を持って、任務にあたります!」

「リナはいつも真面目だな。心強いぞ」


 若き獅子たちを送り出し、俺は野良仕事。

 時魔法をかけているおかげで、穀物が年に何度も収穫できるのがうちの村の強みだ。

 上手く育てる作物を考えないと、土地があっと言う間に痩せるのでそこは注意しなければいかん。


「アンタは今回は行かないのね」


 相変わらずふらふらしている幼馴染のユリィがそう言ってきた。


「いつまでも俺がついて行っちゃ、若者たちの自主性が育たないからな」


 ともっともらしいことを言っているが、単に畑の様子が気になるので行かないだけである。


「でも、リナちゃんが行った北西の山って、確か古代の迷宮遺跡があるところよね。変なモンスターの巣窟になってなければいいけど」


 ユリィは生まれてからずっとこの村で暮らして育ったので、周辺の土地事情には明るい。


「リナは魔法感度が高いし慎重派だからな、怪しいと思ったらすぐに帰って来るか、報せをよこすだろ」


 だから怪しい要素の多い方をリナの班に行かせたという事情もある。

 

 案の定、翌日にリナの使い魔から知らせが届いた。

 使い魔というか、いつぞやに捕まえたジェリーデビルなんだがな。

 村の住民によくなついているし、微妙に知能が高いので使い魔的な役にも立つのだ。


「ぷるるん! ぷるるん!」


 残念ながらこいつの言ってることはわからないので、ジェリーデビルの体に添付されている手紙を読む。


「なになに……ダンジョン遺跡の奥に、いつぞやの洞窟で出会ったフレイムタートルの数倍、もしくはそれ以上の魔力反応あり、と」


 リナたち調査班は、ヤバくなったらいつでも逃げる心づもりで引き続き警戒中、ということだ。

 北東に向かったバッツの班を呼び寄せても時間がかかるな。

 リナになにかあってからでは遅いので、すぐに応援に向かおう。


「結局アンタも行くの?」

「おう。ちびっ子の面倒を見るのはお兄さんの仕事だからな」


 出かける準備をしていたら、ユリィが来て言った。


「帰ってきたら、うちの店に来なさいよ。美味しいご馳走をたくさん食べさせてあげるわ」

「なにやら偉そうにドヤ顔決めてるが、その飯を作ってるのはお前のオバサンとマヤだよな?」

「いいじゃない別に。あたしが作るより美味しいんだから」


 ユリィの奴、単純に実家に居場所がないだけなんじゃ……。

 と言うのは悲しい想像なのでやめておこう。



 リナたち調査班から知らされた地点に俺は到着した。

 うっそうとした森林の木々に隠れるように、ダンジョン遺跡への入り口が暗い口を開けている。

 調査班員たちは、入り口の近くでキャンプを張っていた。



「あ、レンさん! ごめんなさい、わざわざご足労をかけて」

「気にすんな。ゴブリンが見張りに立ってるって感じじゃないんだな」


 遺跡の入り口には、魔物の姿はない。


「はい、魔力の反応は遺跡の奥に、一つだけなんです。でもそれが今までに感じたことがないくらいに大きくて……」


 リナはかつてない脅威を前に、若干震えていた。


「倒すにしても放置するにしても、どんな奴が居座ってるのかだけは確かめたいな。今後の治安問題にかかわる」


 下手に他の魔物を呼び寄せるタイプの魔物が居座っていたら、この山一帯がモンスターパークになってしまう。


 俺は遺跡に入る前に、時魔法を行使して、ある仕掛けを用意した。


 カチリッ。


 俺の意識の中で、その仕掛けが上手く働いた音がした。


「なにをしたんですか、レンさん?」

「気に住んな、どうせ発動してもお前たちにはわからん」


 俺はそう言って、リナだけを従えて遺跡の内部に入っていった。


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