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蛇飼いが蛇になる  作者: 天麩羅
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プロローグ

 俺の名前は月見里実(やまなしみのる)。苗字が読みにくい以外は普通の28歳独身サラリーマンだ。

趣味は読書とゲーム、そして蛇の飼育である。そう、俺は生粋の蛇マニアなのである。

そんな趣味を持っているからか、そうでないのかはわからないが彼女はいない。年齢=彼女いない歴というやつである。

何?蛇の世話してる暇があるなら婚活でもしろって?やかましいわっ!!!

 そこまで言うのなら蛇の魅力について語ってやろうではないか。

 俺が蛇を好きになったきっかけは小学生の時だっただろうか、学校の裏庭に出没したアオダイショウを捕まえて家に持って帰ったことがあり、こっそりと自室で飼育してたりした。

そのときに蛇って割とスベスベしてて質感がいいなと思った。顔もなんだかかわいく見えてきたりしたしね。

まぁ3日くらいで親に見つかって超怒られたけど。泣く泣く逃がしたことは鮮明に覚えている。

それ以来俺はずっと蛇を飼いたいと思っていた。そして社会人として独り立ちするときに蛇を飼育するという夢を叶えたのである。

今では一匹では飽き足らず数種類の蛇を飼育している。中には毒蛇なんかもいたりする。

飼育に許可が必要だったりケージを掃除するときに嫌な汗をかいたりと割と苦労するわけだが、手のかかる子ほどかわいいとは誰の言葉だったか。飼っていると自然に愛着が湧くものである。

そんなこんなで俺は蛇との生活をエンジョイしていたのである。あの日までは――




 その日俺は家で休日を満喫していた。

「久々の休日だってのにいつもの癖で起きちまった・・・ねむ・・・」

休日であっても普段通りの時間に目覚めてしまうものである。

「テレビでもつけるか・・この時間だと情報番組とかニュースしかやってなさそうだが・・・ついでに換気でもして目を覚ましますかね。あとは蛇たちの餌の準備だな。」

俺は窓を開け、冷凍庫からマウスを取り出して机に置き、解凍されるのをテレビを見ながら待つことにした。

「あれ?リモコンどこやったかな?さっきまで持ってたと思うんだが。最近物忘れが激しいな・・・老化が進んでるんじゃねーか・・・?」

しばらく探し続けたのは言うまでもない。ちなみにリモコンは冷凍庫の上で発見された。蛇の餌であるマウスを取りに行ったときに置きっぱなしにしてしまったようだ。

「やれやれ、テレビつけるのに何分かかってんだ俺は・・・。」

自分で自分に文句を言いながら俺はテレビをつけた。


一時間くらい経っただろうか。俺は時計を見て思った。

「そろそろマウスの解凍も終わってるだろうし、餌やりの準備でもしますかね。・・・ん?マウスの数が減っているような・・・?気のせいか?」

気のせいなわけもなく冷凍庫から出したときのマウスよりも机の上で解凍されているマウスは数が明らかに減っていた。

「いくら物忘れが激しいといっても流石に数までは見間違わないよな―――いッ!!?」

右足に何かが刺さったような鋭い痛みが走った。

「一体なんなんだよっ!」

俺は右足に噛み付く灰色の蛇を見て目を疑った。

「はぁ!?なんでこんなとこにブラックマンバがいるんだよッ!?」

―—―ブラックマンバ 世界最強の毒を持つとされている毒蛇でその毒はマムシのおよそ60倍と言われている。血清等で治療を行わなければ致死率100%であり噛まれた人間は治療が間に合わず死に至るケースも少なくない。

「くそッ!!とりあえず救急車呼ばないと死ぬっ・・・!!」

俺はスマートフォンを使って救急車を呼ぼうとした。しかしそれは叶わなかった。

「ちくしょ・・・う身体が言うことを・・・聞かねぇ・・・」

意識が遠のいていくときに聞こえたのは先程つけたテレビのニュースだった。

『次のニュースです。本日未明、指定動物の密輸を行ったとして自称会社員の津田明容疑者が逮捕されました。津田容疑者は持ち運びの際に数匹の蛇が逃げ出したと供述しており中には強力な毒をもった蛇も確認されていて、警察は周囲の住人に注意を呼びかけ――』

(運悪すぎだろ・・・逃げ出したブラックマンバが偶然(たまたま)この部屋の近くに居て開けた窓からマウス目的で侵入してきやがったってことか・・・どうやったらそこまで偶然が重なるんだよ・・・)

 こうして月見里実(やまなしみのる)は28年の生涯に幕を下ろしたのである。



誤字脱字等ありましたらご指摘の方お願い致します。

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