異世界1日目⑤
ほどなくしてエムが帰ってきた。
晩御飯作ってきたよっと笑顔で鍋のようなものを手にしてる。
そういえばお腹がぎゅるぎゅるとなっている。
色々ありすぎて忘れていたが、もう何時間も食事をしていない気がする。
エムは簡易的な丸太を机にし、鍋を置きその中のスープのようなものをお椀に注ぐ。
「はい、どーぞ。熱いから気をつけてね。」
「ありがとー」
返事は元気よく。エムにはいろいろと聞かなければならない。いい子にしておいた方が聞きやすいと考えての行動だ。
そして本当にお腹がすいている。
「いただきまーす。」
そううとルミナはスープに口をつける。
!!??!?
なにこれ
めちゃくちゃ・・・
「おいしいいいいいいぃぃいぃいいっ」
いまだかつて食べたことのない、言い表せない深み。
思わずお椀をがっついて食べてしまう。
「なになに!エムさん。これすっごくおいしいんだけど!もしかして料理の天才さん?」
正直な感想。日本でもこれほどの料理は味わったことはない。
正直どのラノベみても異世界の料理は、大概まずい設定となっている。
料理に期待してなかったが、これは大きな誤算だ。
異世界・・・いいかもしれない。
「うん、僕もびっくりしてるんだ。こんなおいしいスープできたの初めてで。」
エムは笑顔でそう答える。
「まさか、ルミナちゃんが浸かってたお湯がこんなスープになるなんてね。」
・・・・・・・・・はい?
「俺の・・浸かってた・・・あのお湯?」
「そうだよ。」
エムの笑顔は崩れない。
よく見ると笑顔というより作り笑いなのか。
「お湯を入れていた釜に戻ると大量の魔物が、湯の奪い合いをしていた。あんな光景は初めて見た。」
気になって味を確かめてみると、恐ろしく芳醇な香りと味わいを感じるお湯だったらしい。
そして魔物を追い払い、残ったお湯からスープを作製、俺の反応を見に来たらしい。
「だけど、君にとっても想定外だった。だから余計わからなくなったんだ。」
エムはそういうとルミナの顔をまじまじと見つめ
「君は、いったい何者なんだい?」
と問いかけるのだった。
あまりの急展開に思考が追い付かない。
だがそうも言ってられない。
正直に話すべきか・・・
ルミナは考える。
・・・・正直も何も話せることなどあまりなかった。
異世界召喚とか頭おかしい子と思われるだけだろう。
だけどこれを話さないと説明のしようがない。
どうするべきか。
即答できず、悩んでるところへ
「もしかして君はこの世界の人間じゃないのかな?」
エムによってズバリ言い当てられてしまった。
「ちょ!・・なんで!」
「あーそうかやっぱりなあ。」
まさかの直撃弾に狼狽えまくってしまった。バレバレである。
「実は、僕の知り合いに勇者の子孫がいてね。勇者は遠い世界から来たという話を教えてもらったことがあるんだ。」
勇者情報きた!まさかの展開にびっくりするルミナ。
「気が付いたのはいくつかあるんだけど、この世界で食べるとき祈ることはあるけど、決まった言葉を話す習慣はないんだ。」
こ・・これはどっかのラノベで見たな。頂きますとご馳走様のことだな。
「あと決定的なのは、実は鍋持ってきたあたりから公用語、キシン語、ラノティール語、モンスター語と分けて話してたんだけど、君は全く気が付かずに話してくれてたよね。」
これは勇者のスキルの特典(すべての言語が理解できる)らしい、との話。判別でよく使われる手らしい。まじか・・・
「ただ、君はゴブリンに襲われていたから。勇者とは思わなかったんだ。」
確かに・・・・ゴブリンに負ける勇者とか・・・いないよね
「俺もよくわからないんです。勇者なのに。勇者としての力が出せないなんて。」
この人には正直に言ってもいい。きっと力になってくれる。
ルミナはそう判断する。
この判断の速さは、誰がどう見ても軽率で考えが足りない。でもどうせ一人で解決できないからいいやと、ちょろいルミナであった。
召喚にまつわる経緯を、性別と年齢、別途会得したスキル、お風呂から裸で召喚されたことを除き、エムに説明した。結構重要な情報な個人情報得お包み隠さずだ。
話を聞いたエムは、
「聞く限りルミナちゃんが浸かったお湯がおいしいスープになるっていう原因が全くわからないね。そっちの世界の人々の体質なのか、もしかして食べてきているものが違うのか。」
養殖して食用とする生物は、美味しくなるために与える餌も研究されているといわれてるが、
食べてきたものが良かった?カップラーメンとかばっかり食べてたけどな。いいとは思えないんだけど。
「あと女神様がかかわっているっていうのも初めて聞いた。女神様役割はダンジョン管理だけだと思てたけど。」
新しい知見だ。いいこと聞いたなーとうなずく。
「ダンジョン管理?」
ダンジョンといえば異世界冒険の宝物とか遺跡とかある場所で、結構重要なキーワードでは?
「この世界では女神は崇拝する存在であるんだけど、その数だけダンジョンがあるとされているんだ。言い伝えによれば、試練を与えるための場所としたり、褒美を与えたり、眷属を守ったりとそれぞれいろんな説があるってはなしだよ。」
「と、いうことは俺を仲介した女神の管理するダンジョンへ行けば、女神に会える?ってことですか」
「その可能性は高いだろうね。まぁ実際に女神にあった人っの話を聞いたことはないんだけどね。」
所謂都市伝説というやつだよと、教えてくれる。
「話を聞く限り、僕だとどうにも判断できることが無いね。これからどうするの?とりあえず女神様の管理ダンジョンを探す?」
それにしても伝手が無いと難しいよね、と言われた。
まったくもってその通りだ。
「エムさんに手伝ってもらうことはできませんよね?」
頼れるのはエムさんしかいない。むしろこのまま見捨てられたら生きていくことすら難しそう。
エムさんは一寸考えた後、
「少なくてもダンジョンを巡る旅は難しそうかなあ。さすがに予定のめどが全くつかないしね。
ですよねー。さすがに会ったばかりの人にそこまでは望めないか。
ルミナがちょっと難しい顔をしてその返答を了承する。
「代わりといっては何だけど、僕に提案があるんだ。」
とエムは、落ち込みそうなルミナに新しい道を示してくれる。
「その勇者の子孫に会ってみない?僕よりはきっと話にのってくれると思うよ」
超展開です。エムさんは有能。