SS:勇者の冒険③
空を飛べる魔法。本当にあったのか。
しんどみぃに抱えられながら初めての体験。
「おちついたか。」
「う・・うん。」
しんどみぃの言葉に答えるそらゆき。
飛び始めたころは怖かったが、さすがに慣れてきた。
「俺は、こなゆきから魔獣の氾濫について聞いている。あれは戦士のレベル保つための儀式だ。」
慣れてきた頃に、爆弾発言。
「どういうこと?」
「決まった時期に魔獣が氾濫するっていうのは、おかしなことだとは思わないか?本来なら氾濫の原因調査やを行ったり、起きる前に最小限に被害を抑えようするはずだろ。」
言われてみれば、そうかもしれない。
毎年魔獣を倒すために、修練を積んでいる。だが、なぜ発生するのか調査したことはない。
「代々長老だけが自分たちの手で氾濫を起こしている。戦力の維持を目的として。そもそも猫人族は戦闘に向いているかと言えばそんなことはない。修練で維持してるだけだ。」
「猫人族への侮辱は許さない。」
そらゆきの反論にしんどみぃは冷静に答える。
「事実だ。修練が無ければ人族と変わらぬ。だがそれならばなぜ強くあろうとする。修練が必要な理由はなんだ。」
むずかしい。何を言っているのかわからない。
「正解は、恐らく長老だけが知っている。・・・今回の魔獣の数は尋常ではなかった。足止めか・・・それとも戦士の殲滅を狙ったか・・・」
「何を言っている。お前は何を言っているんだ。」
戦士の殲滅を狙う。長老が私たちを殺そうとしたというのか。
「まだ、情報が足りなく推察できない。とにかく村に戻るぞ。」
「あ・・・わああまだ速くなるのかあああああああ。」
そらゆきの悲鳴もなんとせず、村へ急ぐしんどみぃだった。
村に戻ったしんどみぃの予感は悪い風に当たっていた。
「・・・・なに・・・これ・・・・。」
簡素で素朴ながら建築された家がほとんど吹き飛んでいる。
大嵐でも来たのか、村は廃村のようになっていた。
半日程度でここまで村は壊されるものなのか。
・・・・いや俺には心当たりがある。短時間でこれだけのことをできる奴に。
微かに残っているのは一番大きく頑丈にできていた長老の家のみ。
「あわゆきぃどこだあ。マナぁあああ。長老ぉおおお。クジタぁああああ」
知っている名前を叫ぶ。返事を期待して。叫ばずにはいられない。
「・・・・・そらゆき・・・か。」
声がした。そらゆきは慌てて声がしたほうへ駆け寄る。
そこには倒れている長老の姿があった。
「長老!どうした。何があったんだ!あわゆきやクジタはどうした。」
詰め寄るそらゆきに、長老は
「人族に・・・・・襲われた。数は10人程度だったが・・・・戦えるものがマナしかいなかった。あわゆきも・・・・さらわれた。」
「あわゆきが・・・・・。そんな。マナ・・・・・マナはどうなったんだ。マナがいて人族に後れを取るなんてことは。」
そういいながらそらゆきの頭には爆炎の姿がよぎる。
侮っていた人族に、あれほどの使い手がいるなんて思いもよらなかった。
爆炎相手ではマナどころか悔しいがこの村すべての戦士総出でも歯が立たないだろう。
そらゆき自身を含めてすら。
「なるほどな。勇者もいない。目的はそれだったか。」
「おまえ!・・・・マナ!」
女性を抱えたまましんどみぃは長老の元へ歩を進める。
「勇敢な戦士だ。引くことなく戦ったんだろう。・・・・それに比べてお前は・・・・。」
爆炎の言葉にそらゆきは気づく。長老に傷は見当たらない。戦った形跡すらない。
「長老!どういうことだ。それに魔獣の氾濫がいつもより多かった!長老の仕業なのか!」
「・・・・・そうか、こなゆきから聞いていたのか。」
長老から出た言葉にそらゆきは動揺する。
「俺たちを追跡している部隊で、魔獣の氾濫の話を知っていて、ここまでできるもの。グラン隊と取引したということか。」
「グラン隊・・そいつらがあわゆきやマナ、村を?」
「人族は約束を守らない。簡単に裏切る。そらゆきや。ゆめゆめ忘れるな。われらは強くなくてはいかん。強くなければ村は守れん。わかるな。」
「・・・・裏切るのは人族だけではないさ。長老。お前は俺たちを売ったんだろう。」
長老は微動だにしない。
「どういうこと。」
もう何が何だかわからない。なにがどうなってるんだ。
混乱するそらゆきは、しんどみぃに問いただす。
「俺を勇者から引き離すために、魔獣の数を多く設定した。あまり少ないと俺が早く帰ってきてしまうからな。お前は時間稼ぎを依頼され了承した。そうしてグランに勇者を差し出した。といったところか。」
「わかってるなら、追いかければいい。人族は信用ならん。」
長老の言葉にしんどみぃは確信をもって発言する。
「そこまで芝居か。お前は人族の信用を落とすためだけにここまでやらせたのか。」
「・・・なんだと。」
長老の目が初めて光を取り戻したように鋭くなる。
「グラン隊は非効率なことはしない。村を破壊するなんて非効率なことは。それにお前の家とお前だけは無事だ。孫がさらわれているというのに、傷一つない。」
「・・・・・・・・・」
「無言は肯定ととるぜ。大方人族の信用を落とし、より村を強くするための策ということか。こなゆきから聞いていたが、腐ってやがんな。」
「儂はこの猫人族を守らねばならない。そのためには戦士を増やす必要がある。危機管理は必要なことだ。」
「猫人族のためじゃねーだろ。自己保身の為だろ。そのために孫娘まで差し出すとは・・・・・。」
なに・・なんのはなしをしているの。
そらゆきには理解できない話だった。
ただ一つだけ理解できたこと。
「長老。あわゆきを差し出したというのはどういうことだ。」
ぐるぐる回る頭の中でそこだけははっきり理解できないことが分かった。
「あわゆきは、お前と違い体が弱い。戦士としては不適格なのだ。ここで暮らすことはできぬ。わかってくれ。」
「・・・・で孫娘はいくらで売れたんだ。勇者込みだとさぞ高いことだろうよ。」
「だまれ!部外者は口出しするな。必要な事なのだ。村を守るためにな。そらゆき、こいつを殺せ。人族の言うことなぞ聞く必要はない。」
あわゆき・・・・マナ・・・・。
「村のために犠牲にしなければならない。そうしないと村が守れない。・・・・ははははは、何を言ってるんだ長老。そんなの間違ってるなんてわたしでもわかるぞ。」
「そらゆき!」
「マナは誇りを持って戦った。戦士でない長老なんかよりずっと立派だ。・・・・猫人族は戦士の村だと思っていた。・・・・違ってたんだな。こんな卑怯なやつが率いていたなんて。」
「そらゆき・・・きさま。長老の命令が聞けんというのか。」
怒鳴る長老を、そらゆきは一喝する。
「戦士でないものが、命令するな!誇りの無いものが偉そうにするな!」
その形相に長老はたじろぐ。この程度の圧に屈するとは。
そらゆきには失望しかなかった。こんな奴のために腕を磨いていたなんて。
「そらゆき。そんな奴はほっておけ。今、俺たちはやらなければならないことがある。そうだろ?」
しんどみぃはゆっくりとマナを寝かせると、そらゆきの方を見る。
「あわゆきも勇者も取り返すことはまだできる。猫人族の戦士の誇りを貶されたままじゃ・・・駄目だろ。」
爆炎の言うとおりだ。まだすべては終わっていない。終わらしてはいけない。
「当然だ!猫人族戦士の誇りにかけて。あわゆきは必ず取り返す。」
そらゆきは力強くしんどみぃに答えるのだった。
もう一話かかります。
纏めれなかった。
お時間かけてすみませんでした。
ゆっくりですがまた書いていきます。




