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ルミナの冒険  作者: サーディ
ルミナ この世界を学ぶ
4/58

異世界1日目①

展開がちょっとグロいです。

苦手な方は、後書きにあらすじを載せてますので

そちらをお読みください。

四肢に走る熱いもの


認識できたのはそれが最初だった。



次に意識したのは・・・嗅覚だった。


臭い。ヘドロのにおいがする。

思わずむせ返りそうになる。


そして聴覚。


荒い息遣いにガシャガシャとした金属音。間近で聞こえる。意識がはっきりとしてくる。



最後は触覚


顔に伝うざらりとした物体に液体を塗られる感じ。


「う・・・・・・」



木間氏はあまりの気色悪さに目を開く。


暗闇。


少し背が痛い・・・岩肌のようなものを背にしているらしい。


目をつむっていたためなのか、闇の中でも視界ははっきりとしている。

なので不幸なことに眼前に迫る醜悪な怪物に・・・気が付いて直視してしまった。


怪物は潰れたブルドックのような顔に、なめらかではないガサツな肌。


壊れかけの兜を被り、眼光はまるで狂ったジャンキーのような赤くて一定でない動き。


化け物。そう呼ぶにふさわしい生き物だ。



「ひぃいいいいい」


思わず悲鳴を上げ振り払おうと・・・振り払おうと・・腕が上がらなかった。



いや、腕だけではない。手足が動かない。拘束されているわけではない。が、腕と足にかなり深い切り傷がある。


これは・・・・腱を切られているのか。


「くっ・・・・」


動けないことをいいことに、その怪物たちは、体を全体を嘗め回し、その臭気を存分に浴びせてくる。



気持ち悪い。吐き気がする。



なにより動けないことが恐怖に拍車をかける。



四肢が動かないまでも、じたばたとできるだけの抵抗をしようと試みる。


が、体格の違いからか、それさえも自由にできない。


自由になるのは首から上の部分くらいだった。


現実から目をそらしたい。その思いからか視線を怪物から離す。



が、目に入った光景は木間氏をさらに恐怖えと駆り立てた。



怪物は一体ではなかったのだ。


見える範囲だけでも5~6体ほど確認できる。



しかも怪物たちはそれぞれ、何かを押さえつけ、何かをしているように見える。



まさか・・まさか・・・これは。



ファンタジー世界、醜悪な部分を強調する光景。


コブリンや、オークなどの魔物による、繁殖場・・・・苗床。


いや、ありえない。自分は男だ。ありえない!!!


ちっちゃいからって間違えてんのか!


ありえねぇえ。


そう思うと怒りがふっとわいてくる。


強く怪物の方をにらみつける。


だが、怪物の方は不適に笑い(ように見えた)、なめるのをやめなかった。


そして、まんべんなく舐めたかと思うと・・ふいに・・・・がっ!!!


肩口に噛みついた。


「ああああああああああああああああああああ」


痛みで悲鳴をあげた。そしてそのまま肉事食いちぎられる。


熱い。そして痛い!

生涯でここまで激しい痛みを感じたことはない。

ショックで気が飛びそうだ。


怪物は噛み千切った部分を咀嚼し、嬉しそうに味わっている・・ように見えた。


・・・餌か・・・俺は・・・


なんでこうなった。


激しい痛みに耐えながら、木間氏は考える。


なぜ食われている。


そもそも俺はなぜここに。


・・・確か・・・俺は風呂に入ってて・・・・・そしたらいきなり裸で・・・


!!!


瞬間、意識が完全に覚醒し

思い出す。そうだ・・俺は・・・


「勇者だろうが!!!」



再生スキル・・・・ON!


木間氏は強く念じる。そうすると瞬時に痛みがなくなった。


同時に・・四肢も・・動く!!



「だあああああああああああああ」


動くようになった右腕を使い、思いっきり怪物の顔面・・右目の部分を狙い拳をふるう。


予期していなかったのか、それとも咀嚼に夢中になっていたのか。


怪物は無防備にパンチを受け、「ぐぁあぁうぅ」と悲鳴を上げのけぞった。


その隙に木間氏は立ち上がり距離をとる。


そして傷跡を確認する。


体が・・・治ってる。食いちぎられた肩口の傷が完全になかったかのように跡もなくなっていた。


これが再生スキル・・・夢ではなかった。


怪物は右目に受けたダメージにふら付きながら、嗚咽と悲鳴を上げている。


恐らく獲物は完全に動けないものと油断していたせいだろう。


間違いなくダメージで動けてない。


チャンスだ。勇者の力を見せてやる。


再生スキルは「念じる」だけで発動した。おそらく今も発動し続けている。


なら、勇者スキルは・・・念じればいい!


そう結論づけると、勇者スキル発動と心の中で念じ、ダメージを受けている怪物へ突進する。


武器?そんなものはいらない。


俺の拳が武器だ!


「でゃああああああああああ」


雄たけびを上げつつ、怪物の頬に渾身のパンチを見舞った。


完ぺきに顔面、頬の部分へヒットする。手ごたえ十分!


だが、


「いてぇええええええええ」


殴った拳が痛かった。


殴られた怪物は、頬のダメージより右目の方が痛いのかこちらを見ていない。

・・・・殴られたことに気づいていない・・・・っぽい。


こいつ・・・硬い。岩壁か何かを殴ったような感触だった。


どういうことだ!。勇者とは力なのだろう。スキルが発動していれば、一発で消し飛ばせたはず。確かそういう説明だったはず。


発動方法が違うのか?何か特殊な方法なのか。


「ぐるぅうああぁああっぁ」


怪物の鳴き声が変わる。


ふと怪物の方を見ると、こちらの方をにらんでいる。


よだれがしたたり落ちている。目がさらに真っ赤になって充血している。


やばい!


そう思った瞬間後方へ大きくジャンプした。体は思うより軽快に動いた。


が、それでもぎりぎりだった。

今まで頭があった個所に、怪物の得物が振られたのだ。


得物は大きな大剣のようなものであった。


バックしていなければ間違いなく、頭に当たっていただろう。


そして間違いなく一撃で死んでいただろう。


俺の場合はおそらく再生スキルで死ぬことはないだろうが、動けなくなる可能性は十分あり得た。



怪物は得物の重力に振られるようにたたらを踏むが、かろうじて立ち止まる。


そして再び、こちらをにらむ。


「く・・・・」


木間氏は再び距離をとるべく後ろへ下がる。


が、一、二歩下がったところで下がれる場所がなくなった。

すぐ後ろは岩壁だったのだ。


お い つ め ら れ た。


怪物が距離を詰めてくる。


死ぬことはないだろう。再生スキルがある限り。


だけどまた、食われたら。


あの痛みが再び訪れたら。恐怖がよみがえる。



「うわぁっぁぁぁぁ」


恐怖で足がすくんできた。やばい。何か・・・何かしないと・・・


あたりを見回すが、何もみあたらないし何も思いつかない。


勇者スキル・・・どうした!念じ方が足りないのか。もっと強く念じないとだめなのか。それとも声とか所作が必要なのか!


頭の中でぐるぐると思考が巡るが、木間氏に考える時間は残されていなかった。


完全に距離を詰められた。


怪物はおもむろに得物・・大きな剣を振り上げると、そのまま木間氏へ振り下ろした。


だめだ。木間氏は最もとってはいけない行動、目をつぶって体を縮こませた。それ以外にできなかった。


ぎぃいいんん


得物の衝撃による効果音。ああ、おわった。


おわった・・・・








あれ?




衝撃がきていない。痛みもない。


どういうことだ・・・・


木間氏は恐る恐る目を開ける。


そこには・・・・・・一つの影が、木間氏を守るように怪物の得物を受け止めていた。


た・・助かったのか?


助けてくれた・・・?



助けてくれる人がいるのか!



絶望から消えかけてた希望がわいてきた。



「ありがとう」



感謝を伝えようと口にして守ってくれた影をみる。



影はこちらを振り向くと


にぃいいっと口を開く。



人ではなく

骨を頭にかぶり赤い目をした、獣だった。


その眼光を見た瞬間、脆くなっていた木間氏の意識は完全に吹っ飛んで闇に落ちてしまった。

<今回のお話>

意識を取り戻した木間氏が目にしたのは、動けない状態で怪物に襲われていた自分の姿だった。

すんでのところで再生スキルを使い、ピンチを脱し、勇者スキルで怪物を倒そうとするが勇者スキルが発動しない。なすすべなく追い込まれた木間氏を助ける影。それもまた怪物であった。



早くほっこりしたところを書きたいですなぁ。

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