プロローグ②
「では、ご説明させていただきます。あなた様・・・木間氏忠雄様は現在異世界への召喚儀式の最中でございます。」
「召喚・・ですか?転生などではなく」
もはやテンプレとなっている異世界物だが、大きく分けて召喚と転生が存在する。(と思っている)
召喚というのは魔物や精霊等の召喚のように、個人そのものを呼び出すこと。
転生とは新しく生をうけること。
自分の知識ではそんなふうに判断していたので、その思考を読んでいる女性が召喚といったなら、たぶん・・・
「俺は・・死んだり夢を見ているわけではないということですか?」
確認のため女神「夢咲」に質問してみる。
なぜか敬語である。
夢咲は「ええ」とうなずくと
「木間氏様は現在、召喚されている最中でございます。ここはすでに木間氏様が居られました世界ではございません。召喚儀式の中の一つ、召喚されし者への説明を行う空間でございます。」
なるほどさすが自分の思考を読んでの説明だ。自分にとってわかりやすい説明となっている。
「召喚されし者への説明とはなんでしょうか?」
たぶんこの質問を誘導したかったのではないか?そう思いながら夢咲に問いかける。
「召喚されし者・・木間氏様のことでございます。木間氏様は只今こちらの世界「アムネシア」へ召喚されています。むろんただ召喚されるだけではございません。木間氏様は召喚時に特定の力を得る儀式となっております。その得られる自分の力についてご理解していただくことがここでの主な説明となります。」
召喚キャンセルとか、その異世界について教えてもらうことはできないのかな?
後で聞いてみることにしてとりあえずは、
「・・・・得られる力?」
気になるワードが出てきたためあえて聞き返してみる。
「はい、勇者という力です。」
キタキタキタ!!
何やら成功者的なテンプレ力!
「勇者とは召喚時にある特定依頼時に基づいて行う儀式時につけられるスキルのことを指します。わたくし「夢咲」が仲介して行う儀式では、その勇者スキルが召喚者に対して「無条件」で付与されます。」
勇者が付くというのはわかった。が、勇者というのがわかりにくい。
「なお、勇者という説明は木間氏様の中では抽象的過ぎてご理解が難しいとは思いますので、単純に力と考えていただいた方がよいかもしれません。比較する形でご説明させえて頂きますと・・・例えば武器を持った現地の人間の戦闘力が5といたします。」
戦闘力?総合的なレベルのことかな
「その世界での強者・・・緑色の魔王が408、尻尾が切れた男が416といたしますと」
なるほど。この説明はド〇ゴンボール?わかりやすすぎるが・・
「その中で勇者スキルを十全に使いこなせれば戦闘力は53万となります。」
俺は〇リーザだった!そいつはつええ。
「このスキルをもっていればもはや荒事などの事態に関しましては無双できるほどのものです。強さがあればご自分の王国を築き上げることすら可能です。ご自分にとってバラ色の世界を満喫できます。」
そして夢咲は一呼吸おくと
「木間氏様の新たなるバラ色の人生に幸があらんことを!」
「いやだ」
即答する。
「・・・木間氏様?」
「いやだああああ。いやなんだあああああああああああ」
俺は思わず大声を上げる。
召喚?そんなことしるか!
勝手に決めるな
勇者とかもらったって譲れないものがある!
バラ色?そんなのくそくらえだ!
この女神様は俺がそんな力で無双することが幸せだと思ってるのとでもいうのか。
違うんだよ!そんなものは・・そんなものはだな・・
「ガンプラを置いていく世界なんか!おれはいらねぇええええ!!!」
「・・・・・・・・・は?」
女神の目がきょとんとしている。
おかしいな?俺の思考を読んでいるならわかるだろ!
俺が大切に制作し愛でてきた兄弟たち。
それを置いていくなんてありえない。
どれだけバラ色の世界だろうが、満たされなければ意味はないだろうが!
ソシャゲならまだ許す。課金してるけどある程度惰性もある。だがガンプラは違う。きれるもんじゃねーんだよ!
「俺はガンプラを置いていけない!置いていくくらいなら死んだ方がまっしだ!」
「もちろんもっていけますよ」
・・・・・え?
「最初にお話させていただいた通り、貴方様の思考を確認させていただいております。あなたがそうおっしゃることは想定内です。すでにご理解済みと思っておりましたので少々驚きましたが。」
・・・え?そうなん?有能やん
「ただし持ち込むだけなら全て可能ですが、飾っておく場所がございませんので、当然持ち運ぶこととなりますが・・・いずれ破損し、修復できないまま破棄することとなると思います。」
・・・・無能やん
「ですので持ち込み方法をゴーレムとして召喚できるよう取り計らうことが可能です。ゴーレム召喚であれば、破損しても再生する道はありますし、何より一緒に動けます。」
「・・動ける・・だと?」
「はい、ある程度自由に動かせますし、パターンを登録することにより自動化も可能です。なにより召喚となりますので・・・・空間からいきなり出現することとなります。演出としては最高かと。」
俺の相棒達が・・・動くだと!すげぇええええええ
夢みたいだあああああああああああああ
大きくして乗り込んだりとかできるのかな。いやいや空飛んだりとか…胸熱すぎる。
「もちろん貴方様の力量次第で、巨大化、搭乗なども可能と思われます。」
「異世界行きます!」
断る理由がどこにあるだろうか?素晴らしすぎる提案。
個人で圧倒的な戦闘力を持ち、さらに相棒達に搭乗でき自由に動かせる。まさに俺の思考を読んだかのような(読んでいる)模範解答だ!
「では・・心苦しいですがお手持ちの中で3機お選びください。初期段階では3機までの登録が限界となります。力量次第で増えていきますが」
「3機・・ね・・」
初期段階3機か・・・・
選ぶというのは確かに心苦しいが、事情は分からんでもない。どうせいずれ全部使用できるということだし。
「じゃあ選ぶんでちょっと待ってください。」
・・・・・選ぶのに3時間強かかった。
優柔不断というなかれ。大事な大事な相棒の選別なのだ。
「お待たせしました。じゃあこれで。」
3時間も待たせたというのに、まったく動じていないようにみえる女神夢咲。
「いえ、全然大丈夫ですよ。私は、時間をコントロールすべを持ち合わせております。」
さすがは女神。心が広いうえにいい能力を持っている。
「お声がかかるまで旦那様と通信しておりましたので、まったく時間など気になりませんでした。」
前言撤回。どこかのバカップルか。
「では、・・・はい確かに了承いたしました。この3機ですね。では、ゴーレム召喚スキルの付与と、召喚対象物の設定を致します。設定には少々お時間をいただきます。」
と、その間・・・と夢咲はなぜか少々顔を赤らめつつ
「ぶしつけとは思いますが、こちらを使用ください。」
夢咲はそういうと空中に淡い光を放ち、紋章を描くように指先を奏でる。魔法陣か?
暫くするとその紋章から何かが飛び出てきた。
それはふわっと木間氏の体を包み込んだ。
布だ。布団サイズほどある真っ白な布だった。
「忘れているとだとは思いますけど・・・隠してくださいね。」
・・・・・あ、はい・・・・
そういえば裸だったわ・・・・・マナーとはいったい・・・
選んである間、通信しててもらってよかったと木間氏は心の底から思った。
プロローグは3部構成です。