16.枝分かれした本
怪物は鋭い角でサイセを突き刺そうとする。サイセは光弾を撃つが、はじかれてしまう。
またも、怪物の突進を闘牛士のようにすんででかわす。
怪物は壁に激突する。 だが、怪物の破壊力は相当なものだった。 壁を突き破り、隣の部屋まで穴を空けたのだから。
サイセは「ブラスターモード」を「ブレードモード」に変えた。
「暴れウシめ。」サイセの知ってる生物としては牛が一番近かった。
そんなことはどうでもいい。サイセは剣を逆手に持って構える。
怪物は穴を空けた別の場所から穴を空け、突き破って突進する。
不意を突かれるが、逆手に持ち構えたことで対応が間に合う。
「あちこち壊しまくりやがって…」
青白い光の剣と角がぶつかり合ってるがこっちは押されてる。
背後はドアということに気づく。押されながら、後ろのドアを蹴り開けると力を抜き、受け流す。
怪物は勢いあまってドアの向こう。廊下の壁にぶつかる。
廊下の壁は厚塗りで強度はかなり高い。それでも怪物の頭が壁にはまってしまう。
怪物は頭を抜こうとするが、中々抜けない。
「深くめり込んだようだな。ここで終わらせてやる。」
サイセは背中を斬りつける。
予想以上に背中が硬く、腕がしびれて剣を落とす。
怪物は頭を抜く。角が片方折れてる。 怪物はうなると、俺を睨み逃げてしまった…。
「……わざと逃がしたんだ。」誰に言ってるのかわからない言い訳を言う。
まあ三分の一は本音なのだが。なぜなら折れた怪物の角がこっちに残っているからだ。
角を拾う。すると角は別のものへと変化した。いや、角には変わらないが、街でよく目にするある種族の角だからだ。
「………なるほど。」
『我々の先祖はゴブリン。ゴブリンが起源に我々は生まれた。』
読んでいるルバーケー・ウィンダーという人が書いた本にはそう書かれてる。らしい。人間語ではわからないので工場長の側近に音読してもらった結果、そう書いてあるらしい。
右ページには絵がある。ゴブリンを起源にして、オーク。エルフ、エルフから人間。またドワーフなどと枝分かれした進化図が描かれてる。 依頼人達ことグレムリンはかなり後に出てる。
『ある日、ゴブリンの中からグレムリンという変異種が生まれた。グレムリンの存在は後の世界に革命的な変化をもたらす。グレムリンは機械技術に長けており、その技術はドワーフも及ばないほど。
やがてグレムリンは魔法すらも超越した兵器を作り上げた。グレムリン達はそれを使い、大規模な種族戦争を数日で終わらせたという歴史もある。使用者の限られる魔法に誰でも使える兵器。(しかも、グレムリンならば誰でも作れる。)に勝つ術はない。今でも魔法は衰退し続けている。
グレムリンの存在はある者にとっては 神の降臨 であり、またある者にとっては 悪魔の誕生 だった。』 そこまで読み進めて
「皆さん。至急、全員集まってください。今回の事件がわかりました。」サイセのアナウンスが入った。
部屋外がざわめき始める。工場中のグレムリン達が動き始めたのだ。
「ほら、お前さんも行くぞ。」
「あ、はい。」俺も工場長についていく。




