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仰ぐ月に紅を映して 改訂版  作者: 紫宮月音
8/11

閑夜

仕事から帰り、食事も身支度も済ませて眠ったはずなのに、急に目が覚めたから。

そういえば、ただいまの挨拶を今日はしていなかったなと思い出して。

深夜に妹の部屋を訪れた。

体調はどうか、大丈夫かまだ休むか、そんな他愛のないことを確認しようとしたら。

何故かドアが開かない。鍵は壊れていないはずだし、中に澪がいるはずなのに。

いつまでたっても開く気配のないドアに痺れを切らし、蹴り開けた。

転がるように妹の部屋にはいると、居たのは赤髪の女性と見知らぬ青年。

何事かと戸惑ったものの、妹の顔を見間違うはずがない、すぐに澪だとわかった。

だが、隣にいる者は誰だ、何をしている。

何故、妹を連れていこうとしている!

今にも飛びかかりたいのを抑えて、近づいて澪の名を呼ぶ。

答えはないが、唇は動いた――どうして。

どうして『さようなら』と動いたのか理解できず。

動けないでいると、彼女が傍らの青年に声を掛けているのが聞こえて。

慌てて手を伸ばしたのだけれど……彼女の髪に触れただけで、すり抜けていった。

二人が飛び降りた後、ベランダから覗き込んだものの見当たらない。

月明かりがあっても、夜の闇の前では姿を見つけることができなかった。

衝動的に飛び降りて後を追いたくなったが、追いつけない。

直感的に、何故かそれを理解してしまっていて。


「確かに、今……触れたのに」

すり抜けていった、彼女の髪の手触りはまだ残っている。

急激に目眩を覚えて。よろめきながら部屋のなかへと戻る。

テーブルに手をついたとき、置かれている携帯電話に気がついた。

そして彼女が大切にしていた家族写真。裏にしていれられていた。

その隣には、切り抜かれた写真……

「これは確か、一緒に写って欲しいとねだられたときの」


いつもは控えめな澪があの時ばかりはしつこくて、根負けした記憶がある。

それいらい、大事そうに飾ってあるのを何度か見かけたことがある。

「持っていったのなら、何故……」

やり場のない気持ちの襲われて、いらつく。


写真立てを床に叩きつけると、ガラスの割れた音が鋭く響いた――

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