第六話 魔法の適正
俺は再度書斎に来ている。
『魔法初心者への指南書』を読むためだ。
ちなみに誕生会は昨日盛大に行われました。突然、あまりにも流暢に俺が喋れるようになってたから、父上はめちゃくちゃ驚いてたな。母上は気づいてたみたいだけど。
なんでだろうな?
それはさておき、遂に魔法を使う時が来た。
豚鬼族は基本的に魔法を使うのには向いていない種族だけど、俺は自分が魔法を使えることを知っているから心配はない。
俺は意気揚々と本の付録についていた水晶玉を取り出し、ページを開いた本と共に目の前におく。
「ええと・・・・・?まずは水晶玉を覆うように両手を翳します・・・と」
すると透き通っていた水晶玉にもやがかかりだす。
「水晶玉にもやがかかると、魔法の才能があることを意味します・・・・で、次に」
今度は水晶玉のもやが色付き始め、最初に藍色、次に黄色、その後白色、黒色というふうに濁っていく。
「順に適正のある魔法属性です。色により、どの属性に適正があるのか分かります。水晶玉が透明になるまでに現れた色の数で適正の数が分かります・・・・・か。なるほど、俺は適正が、四つってことだな。で、俺の適正は・・・・・・・」
属性の色分けを確かめるべくページをめくっていると、ふとある一文が目に入る。
『魔法が使えても、基本的に適正は一つで、二属性は十万人に一人、三属性は百万人に一人しかいません。そして四属性に至ってはは千万人に一人という確率です。因みに五属性は・・・・・・・・・』
千万人に一人!?おいおい、バアルくんってそんなに才能あったのかよ。
ラッキー!
あ、ごほんごほん。え、えーっと、俺の適正はと・・・・・・・
あった!・・・・・えっと、一番に空間、二番に光、三番に無、四番に闇だな。
よし、こんなときこそ先生の出番だ!それぞれの詳細教えて!
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空間属性
賢者級の魔力を持っていないと使いこなすことが困難な扱いにくい属性。しかしその効果は絶大で、空間を跳んだり、広げたりすることが出来る。
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光属性
主にバフや回復魔法、光速・光熱を利用した攻撃魔法によって構成される。魔導士に最も人気。
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無属性
純粋な魔力によって様々なことが出来るが、その多様性は術者のイメージ力と応用力にかかっており、基本的には使いづらいマイナー魔法として知られている。
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闇属性
主にデバフや目に見えないエネルギーを利用した攻撃魔法によって構成される。魔導士に最も不人気。
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おい、光属性以外説明が悪すぎるだろ。
でも分かりやすくはある。
やっぱり一番気になるのは空間属性。その次に闇属性かな。
何故なら空間魔法があればラノベなんかのアイテムボックスだったり、テレポーテーションだったりが出来るんだろ?
A : できます。
ほら、浪漫に溢れてるだろ?
で、闇属性はデバフが魅力的だ。
ゲームなんかだと、あんまり関係が無かったりしてピンと来ないかもしれないけど、あれ、現実でやられたら絶体絶命だと思わない?
それに俺、派手ばっかりな魔法よりも影で支える支援職の方がかっこいいと思うんだよな。
こう・・・・・智将っぽくて!分かんないかな~?
まあ、いいや!
取り敢えず魔法を使ってみるとしようじゃないか!
部屋の中でも問題のない魔法は・・・・・・と。
「ええっと?・・・・・こうかな?“灯”!」
すると、立てた人差し指から暖かい光が現れ、やがて離れていく。光はふよふよと浮遊し、俺から一定の距離で止まる。
成功だ。
しかし俺は満足していなかった。
「・・・・・もう一度、“灯”!」
魔法を使うにはイメージが重要だ。そして今回俺がイメージしたのはLED電球。つまり省エネと明るさを両立した魔法だというわけだ。
そして、先程の暖かそうな光と打って変わり、より明るい白光が書斎を包み込む。
うん、いいね。
俺は満足げに頷く。
「やっぱりイメージは大切だね。日本のサブカルチャーをこよなく愛する俺には堪らない」
それに、新たな発見もあった。
「やっぱり身体強化よりもこっちの方が魔力を消費する量が多い。今度からこっちでMPを増やしていこう」
ぐふふ。これでまた一歩、夢の魔法チートライフに近づいたぞ。
「バアル様~!何処ですか~?夕飯のお時間です~」
セリアの声だ。どうやら没頭しすぎて日が暮れていたらしい。
「今行くよ」
俺は本を片付け部屋を飛び出した。
◆◆◆
ダイニングには既に俺以外の全員が集まっていた。その中にはヴィクトリアさん、セドリック、カレンも含まれている。
「遅れてごめんなさい」
俺はあえて子供っぽい言葉で謝る。
「バアル。また書斎にでも行っていたのか?」
俺にそう尋ねてくるのは父上だ。
「はい、父上。僕はまだ外出できないので、外の知識はとても面白いんです」
あえて魔法ではなく、外の知識と言ってみせる。
「そうか。お前は成長が早そうだからな。そろそろ家庭教師か何かでも付けるか」
家庭教師。生前は勉強が嫌いな俺には嫌な響きだったろうが、今の俺は違う。知識に飢えているのだ。だって勉強がファンタジーって最高だろう?
「ホントですか!」
「ああ、魔法も教えられる家庭教師を探し出しておいてやろう」
あ、こりゃバレてら。
なら誤魔化す必要もないか。
「魔法を学べるなんて嬉しいです!」
「ふむ、将来は宮廷魔導士かな。バアルは」
父上もワインを飲みながら喜んでくれている。
「な、なら!私は近衛に入るわ!」
「近衛・・・・・ですか?」
「ああ、グラ王国の花形は王を守る近衛騎士団に宮廷魔導士だからな」
カレンには絶対的な接近戦の才能がある。このままその才能を開花していけば、きっと近衛になれるくらいに。
だから十歳になると、カレンは騎士学校へ入学する。そこで活躍すれば、国内の騎士学校の選抜が頂点を巡って戦う、闘技大会に出れるらしい。そしてそこで取り立てられた者だけが近衛見習いになれるのだとか。
「うん!カレンお姉ちゃんならきっとなれるよ!」
俺の満面の笑みを受けて、カレンの頭から白い煙が出てくる。
また、やりすぎちゃったかな?
ちなみにセドリックはニヤニヤと笑うヴィクトリアさんに頭を鷲掴みされて身動きが取れない状態になっている。
うん、今日も平和だな。
そして四年がたち、俺は五歳になった。
魔法を覚えてから、勉強に魔法の訓練、それに父上から剣術を学んだりした。
散歩と言いながら、俺が考えたオリジナル魔法の実験で環境破壊じみたことをしてしまったのは苦い記憶だ。
もはや五歳児の自己訓練では無くなっていた。
ちなみにこの時点で俺のMPは魔王バアルくんを大幅に超えていた。
「俺は魔導王に・・・なるっ!!」
そう宣言し、日々を過ごしていった。
そして典礼を受ける日を迎える。
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