第三話 マイチートファミリー
「はぁーい、バアルちゃん。もう一回言ってみて?」
「ま・・・・・まんま!」
「えらいえらい!よくできまちたねー」
この前に続き、名前を呼ばされる俺の目の前にいるのは、今世での俺の母親だ。見た目は完全に十代後半くらいで、年齢も実際それくらいだったはずだ。
まさか俺よりも年下の女の子をママだなんて呼ぶ日がくるとは・・・。
い、いや?あれはママじゃなくてまんま!つまり飯って意味だから!ノーカンだから!
はい、無理がありますね。
目の前の少女は、ゆらゆらと漂う宝石の如く輝く金髪に、玉子のようなハリのある肌、人形のような見目麗しさを持っている。それが俺の前で満面の笑顔を浮かべるのだ。男だったら一目惚れ一直線コースだろう。ただ、俺が赤ん坊の肉体であるからか、そういった情欲がないに等しい。
そう、たとえ見事に服を押し上げる双丘がそこにあったとしてもだ。
これはある意味地獄だ。授乳中、ずっと眼前にそれがあるというのに、俺はむしろ母乳を貪ることしか興味がなくなっている。卑猥な意味ではない。ただただ、喉の乾きを潤さんが如くだ。
しかし、それで貴豚鬼だなんて、今でも信じられないのだが。
一応ステータスは調べといた。
エリザベス=アウローラ 19歳 女 貴豚鬼 魔導士
レベル:32
称号 :アウローラ公爵家当主の第一夫人
HP :240/240
MP :480/480
筋力 :210
耐久 :200
敏捷 :190
魔力 :500
幸運 :360
【スキル】
魔力感知(B級)
火魔法(C級)
水魔法(B級)
光魔法(A級)
魔力制御(B級)
料理(C級)
家事(D級)
わあ・・・・・。魔法チートだあ。
光魔法に関しては王級まで使えるとか、聖女名乗っていいんじゃないの?見た目豚じゃないし。それどころか完全美少女だし。
「さすが元聖女だな。子供に対する駄々甘えっぷりが半端じゃない」
背後から覇気の篭もった声を響かせたのは、アウローラ公爵家当主、つまり俺の父親だ。
って聖女かよ!合ってたのかよ!?
快活そうな笑みを浮かべ、こちらへ向かってくる。相変わらずすごい筋肉だ。見た目完全DQNなんだけどな。
オールバックの茶髪を軽く整える父のステータスを俺は覗き見る。
アルバート=アウローラ 27歳 男 豚鬼公 剣士
レベル:76
称号 :アウローラ公爵家当主
HP :1080/1080
MP :150/150
筋力 :1240
耐久 :1180
敏捷 :1020
魔力 :90
幸運 :500
【加護】
闘神の加護
【スキル】
剣術(S級)
危険察知(A級)
身体強化(A級)
格闘術(S級)
闘化(SS級)
うぴゃああああ!!
完・全・脳・筋!!!
てかレベル!魔王時代のバアルくんより高くね!?
・・・まあ、魔導士だし?魔物とかと戦うよりも、本を読んで知識を貪るのが役職だし?
てか、一つも魔法も覚えてない今の俺って、魔導士って言えるの?
そんなことを考えながら、俺は見当がつかなそうなスキルの詳細を確認していく。
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闘神の加護
その戦いぶりが闘神に気に入られたものに与えられる加護。
【闘化】会得。レベルアップ時MP、魔力が低下し、それ以外が大幅上昇。
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闘化
十分に限り、MP、魔力以外のステータスが三倍。使用後、一時間の間MP、魔力以外のステータスが二分の一。
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うわお・・・・・これまた脳筋スキルだなあ。
しかもこれ、絶対闘神も脳筋でしょ。
「ん?今なんかしたか?」
ステータスを確認し終えた直後、俺にそんなことを聞いてくるアルバート。
おいおい、なんで分かんだよ。
しかし、俺はとぼけて見せる。
「う、わうわう!」
果たしてとぼけていると言えるのか、よく分からない返しをしてしまったが、一応の効果はあった。
「ちょっと、アルちゃん。生まれたばかりのバアルちゃんにガン飛ばさないでください」
「ガンなんて飛ばしてない。それにちゃんづけもやめろって・・・・・ったく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・確かにステータスを覗かれたときの感覚があったんだがな」
おい、最後ボソッと言ったやつ、聞こえてんぞ。なんでバレたんだ?どう考えても普通の人間(豚鬼)じゃないよな。
そう言えば、豚鬼公ってのも初めて見たな。バアルくんの豚鬼王よりは下位の魔族だとは思うが、それでも絶対バアルくんより強い。
そこんとこどうなの、先生?
A : 豚鬼族は上位種より、豚鬼王、豚鬼公、豚鬼侯、豚鬼伯、豚鬼子爵、豚鬼男爵、貴豚鬼、豚鬼という順で強さが表されます。例え豚鬼王でも、偽りの魔王であったのであれば、豚鬼公の方が強くても不思議はありません。
多くね?それに偽りの魔王?
A : 七大罪スキルを持っていない魔王のことです。現在は・・・
あ、それもう聞いたことあるから割愛。
なるほどな、アルバートが魔王バアルくんより強い理由が理解出来た。
そうそう、俺は今、常に身体強化状態にしている。
理由はMPを増やすのに丁度いいから。
どうやらMPを限界まで消費することで、最大MPが増えるようなのだ。ただ、使い切ってしまったら魔力切れに鳴ってしまうため、注意が必要なようだが。
というわけで現在俺は一番気づかれにくい耳、つまりは聴力を強化している。アルバートのボソボソ声が聞こえたのも、そのおかげだ。
というわけで俺のステータスはこんな感じ。
バアル=アウローラ 0歳 男 貴豚鬼
レベル:1
称号 :アウローラ公爵家次男
HP :90/90.
MP :60/210
筋力 :50
耐久 :50
敏捷 :70
魔力 :80
幸運 :300
【加護】
魔神の加護
【スキル】
魔神の魔眼(SSS級)
神獣召喚術(SS級)
〈ベヒーモス〉
調教術(S級)
魔力操作(D級)
身体強化(D級)
うん、順調に伸びてるな。
よし、俺は決めた!俺はこの魔法の世界で、魔導士の頂点、魔導王になって魔法を極めてやる。
そして、いつかあいつを・・・・・・・・。
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