第二話 魔法への第一歩
俺が生まれ、改めてバアルという名をつけてもらってから半年がたった。
現在俺は揺りかごの中でメイドさんに絶賛宥められ中だ。
「はーい、バアル様~。ねんねしましょうね〜」
そう言って俺の胸の辺りをトン、トンと叩くこの少女は俺のお付きのセリアだ。
多分十二歳くらいだったと思う。将来が楽しみな可愛らしい顔立ちだ。
「あいあい!あうー!」
そんなセリアに赤ちゃん言葉で返事を返す元社会人氏(享年24)。どう考えても犯罪だな。
いやいや!今の俺は生後半年の赤ん坊だし!ノーカンノーカン!
それにこれにはちゃんとした理由がある。以前、赤ん坊の作法というのが分からなかった俺は、セリアに対しての反応を全て無表情で返してたんだが、そしたらこの娘、めちゃくちゃ泣くんだよ!さらにあの後、母親と父親も巻き込んで家全体で泣き出すから、こんな悶絶死レベルの恥辱をやらざるを得なくなった。
あ、そうそう。当たり前だが、俺には両親がいました。
当然の如く二人とも豚鬼だったが、おっかなびっくり、見た目は普通の美男美女だった。
その二人から生まれた俺も、将来が期待されるような顔立ちの、普通の人間だった。
どういうことだ?
今はまだ舌が未発達で話すことが出来ないが、話せるようになったら聞いてみよう。
そして俺の魔法についてだが、実は豚時代、魔法を使えるようになったものの、どれか一つでもスキルを得た試しがない。
つまり、スキルはそう簡単には会得できないか、何かが足りないかだ。
そこで先生の出番。
A : 知識を得ても、魔力が無いと魔法は発動しません。たとえ発動されたとしても、その魔力は自身のそれではありません。よって魔力についての何らかのスキルを会得する必要があります。因みに、魔法スキルを得た場合と、得なかった場合では、威力においても消費魔力においても大きく差が・・・・・・
はい、長文ありがとう。そろそろ割愛しようか。
まとめると、魔力関係のスキルを得ろってことだろ?
ラノベとかだと、体の中にある魔力を感じ取ってたけど。実際どうなの、先生?
A : その通りです。しかし、人によってある場所も感じ方も変わってくるため、自力で確認することを推奨します。
さいですか。
まあ、取り敢えずは心臓だよな。目を瞑って、脈打つ心臓の音に意識を向ける。
ドクン、ドクン
・・・・・・。とくに何ともないな。
次はなんだろうか。心臓と来たら次はやっぱ血液かな?
先ほどと同じようにして、ドクドクと流れる血液に意識を向ける。
すると何か温かいような気がして、それが全身を巡り回っていると思うと、どこか力が湧いたような気になる。
ピコン!
『【魔力操作】を取得しました』
『【身体強化】を取得しました』
うお!なんかいきなり気怠くなったんだが。
ステータスで確認してみるか。
バアル=アウローラ 0歳 男 貴豚鬼
レベル:1
称号 :アウローラ公爵家次男
HP :90/90.
MP :4/40
筋力 :50
耐久 :50
敏捷 :70
魔力 :80
幸運 :300
【加護】
魔神の加護
【スキル】
魔神の魔眼(SSS級)
神獣召喚術(SS級)
〈ベヒーモス〉
調教術(S級)
魔力操作(F級)
身体強化(F級)
なるほど。
魔力を感知したときに、無意識的に身体強化していたのか。あの全身がぽかぽかとした感覚は身体強化をしたときの感覚ってことだな。
そんでもって、この気だるさは魔力を消費した反動ってとこだな。
そこで俺はふと目の前にいる少女の様子がおかしいことに気づく。
あ、やっちまった。
「ババ、バアル様が反応して下さらない!も、ももも、もしかして!もうセリアに飽きてしまわれたのですか!?・・・・・う、うえええええ、うええええええええん!!!」
ほら・・・・・面倒臭いことになった・・・。しかもなんだよ飽きるって。
仕方ない。こういう時のために用意しといたやつをやるか。
「・・・・・・・・ぇりぁ!・・・・・しぇりぁ!」
うん、やっぱはっきりとは言えないか。でも、こっちの方が赤ん坊としては妥当か。
「ぇ?・・・バアル様、今、セリアの名前呼んだですか?」
泣きわめいていたセリアにこれは効果てきめんだったらしく、すぐに泣き止んだ。
ただーー
「バアル様!もう一回!もう一回だけお願いします!」
「しぇ・・・・・しぇりあ」
「もう一度!」
「しぇりあ!」
「もう一度!」
「・・・・・・・・・」
なんか、別方面で面倒臭くなった。
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