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特務自衛隊  作者: 惣流・キリコ
4/5

編成 そして派遣

朗報:就職先決まりました。

悲報:残りの学校生活が辛いです。

6月5日 11:28


富士演習場から続々と高機動車や73式トラックなどが入ってくる。その光景を見ていた白石は納得するかのようにうなづき微笑む。

「ここまで用意してくれるなんて上層部太っ腹。」

浮かれたように独り言を喋る。太っ腹も何も、特務自衛隊将補の霧民(きりみ)将補が大いに支援せよとのお達しがあったので車両の貸し出しなどがあるのだ。

すると後ろから蒲生が厚い書類を持って現れた。書類を読み上げながら白石に近づいてくる。

「73トラック、89式装甲車、高機動車、指揮車に…ニンジャ…AH-1S…補給物資もろもろか。」

厚い書類を手慣れたようにペラペラとめくり、連なる文を目に通して行く。そこには今回派遣される部隊員の名簿、車両などの手配が書かれている。だがその手が急に止まる。蒲生は走って白石の横に近づきそのページを見せた。

「おい…お前74式戦車を調達して欲しいって言ったよな。」

「そうよ、それがどうかしたの?」

「上層部と特自の霧民将補の話し合いの結果なんだが…。」

深刻そうな声で話す。白石は蒲生の持っている書類を手に取る。手に持ったのを確認したのを見て蒲生は話を進めた。

「74式は対人戦闘には不向きだから退役した60式自走無反動砲を調達視野に入れたと…。」

それを聞いた瞬間白石の手にあった書類がグジャっと一瞬にして握りつぶされる。それを横目にしている蒲生はさらなる追い討ちをかけるかのように喋った。

「大抵、こういう異世界派遣じゃ少数精鋭じゃどこぞの自衛隊よろしく全滅ルートだ。中隊規模の行動で行くとさ。」

「うがあああああああ!!私の任務遂行計画がぁぁぁぁぁ!!」

大声で手の爪を立てるように。まるで怪獣のように吼えて咆哮をあげる。

どうやら白石の考えと上の考えでは考え方が違い彼女の案では行き倒れたらしい。ある上層部員がオタクよろしく様々な予測を考えた結果、こちらの案が良さげと満場一致で決まったらしい。正直、白石は上に嫌われてる存在なので例え良い案だったとしても奴らは敷いた線路を曲げるだろう。だが白石の案は無茶難題な行動もあったので却下されたとのこと。

74式戦車は現代戦闘においては防御力は低いが火力は申し分なし。ただ歩兵支援では能力を見出せないと判断された。60式自走無反動砲なら小型でなおかつ歩兵支援も視野に入れていて退役車両ならコストもかからないので推奨したらしい。

「なんでよ!60式なんて火力低いわ無反動砲撃ったらバックブラストで位置バレするのに!キーーーッ!」

白石が怪獣のように暴れている。それをなだめ止める蒲生。なんてことをしているうちに高機動車が1両、白石らの近くに止まった。何事かと2人は高機動車のほうに目を向け誰か伺う。すると1人の女性隊員が降りてきた。見た感じ普通の体型。髪はセミロングほどあるが癖っ毛が目立つ。白石はその姿を一目見て誰かわかった。

彼女は降りてすぐ2人に敬礼をする。その後一枠おいて言葉を発した。

「お久しぶりです。お姉様。」

「キリコか!お前も選抜されたのか!」

惣流キリコ Age25 女

陸上自衛隊 普通科連隊に属する。白石とは一時期同じ寮のルームメイトだった。

彼女は特異でインスピレーション、第六感がある。訓練中で79式舟艇対戦車誘導弾で人力トップアタックを決めたり、小銃の射撃精度が異様に高かったりする。いわゆる変人。だが彼女にはもう一癖ある…。

「お姉様に会いたかったです!!」

の高い声と同時に白石に向かって走り出し飛びつく。それに白石は答えてキリコを受け止める。横で見ていた蒲生は目を細めて冷たい視線を送る。それを感じ取るかのように気づき、キリコは蒲生を睨みつける。とてつもない嫌悪なオーラを放つ。それに圧倒されてか蒲生はその場から大股6〜7歩後退する。離れたのを確認すると笑顔になり話をしだす。

「お姉様が退寮してから寂しかったです…。」

目を潤わせながら白石の胸に頭を寄り添う。

「私も寂しかったさ…。でも、今後の任務では一緒だ。よろしく頼むぞ。」

と抱きとめながら耳元で喋った。

それを聞いたキリコは、「ハイ。」と答えた。


その後10分ほど2人は話し合い、キリコは高機動車に乗りその場を後にした。話は終わったかと蒲生が近づいて来た。頭をかきながら白石に問う。

「あいつ、お前の部下か?」

目線だけを蒲生の方に向けて答える。

「いいえ、女性寮に居た時のルームメイト。」

ふーんと興味無さげな顔をする。目線を前に戻した白石は小声で呟く。

「あんなペーペーだったのが今は隊員内でトップか…。成長したな…。」

と蒲生の声で横槍が入る。

「昔に浸れてないで、部隊編成もろもろ仕事しろ。2〜3日は忙しいんだから。」

「分かってますよ…。」

と渋々持ち場につく白石。



その後部隊編成に数日かかり、部隊編成は完了した。


陸上自衛隊 第一次捜索派遣中隊編成


部隊長:白石 百合子

部隊長補佐:蒲生 光正

部隊長補佐:惣流キリコ


第1小隊〜第4小隊編成にて中隊規模にて行動


派遣兵器

89式歩兵戦闘車両

87式自走対空砲

60式自走無反動砲

UH-1

OH-1

AH-1S

73式トラック

軽装甲高機動車

87式偵察警戒車

etc…


総部隊員200名…



6月8日 11:00


部隊員らに今回の作戦概要が伝えられる。会議室に集められた隊員は197名。異世界に派遣されるとだけあって会議室は緊張に包まれていた。扉が開く。扉からは白石、蒲生、キリコが現れ室内に入る。3人は壇上の前に立つと話を始めた。

「私はこの部隊を指揮する白石百合子だ。特務自衛隊に所属している。」

と同時に周りがざわめく。

特務自衛隊?エリートが指揮かよ。と声が聞こえる。

特務自衛隊はエリートな事はもちろんで権限が強く、階級も通常の3つ上というような環境になってたりと優遇されている。例えると准尉なら1佐に相当する。その事に不満を持つ人も当然いる。

するとキリコがそばにあったイスを勢いよく蹴飛ばす。けたましい音が室内に響く。それと同時にざわめきが一気に静まる。

静まったのと同時に話をまた始める。

「確かに特自が陸自を引き連れることに不満を持つかもしれない。皮肉で気休めでしかならないかもしれないが、君たちは私を含む自衛隊員25万人の中から選ばれた精鋭200人だ。才能、能力を見出されて選抜された。君たちに特自にも劣らぬ価値がある事を気づいてほしい。」

話を続ける中で隊員たちも静かに白石の方を見る。白石の熱い話の末、隊員達も理解してくれた。

「最後に…、誰も殉職させぬよう私も一層の努力をする…。以上…。」

話が終わった。すると1人の隊員が「起立!」と同時に声を上げ立つ。それに続き全ての隊員が同時に起立。そして「敬礼!」の掛け声と同時に敬礼をする。一糸乱れぬ動き。この行動で隊員の士気が高まった。


数十分後。会議室に男2人が入ってきた。

「白石さん。例の霧の発生時間が確定しました。」

と言いながら手に持つ資料を読み上げた。

「最初の霧の発生時間は6月3日の午前10時ジャスト。その1時間後に濃霧が晴れ部隊が消えたと言う証言を元に推測。」

淡々と喋っていく中で全員話に集中する。蒲生に至っては目力が入っている。それほど彼にかかった部隊長補佐、副隊長の役目が大きいと言うことは重々承知のことである。

「その7時間後に同じ霧が発生。1時間後に視界クリアと同時に1人の隊員とあの少女が現れました。」

1人が話終えると次はもう1人が喋り出す。

「それから、霧が晴れて7時間後に霧が発生。その1時間後に霧が晴れてのサイクルで回っていると思われます。」

それを聞き白石が話に入る。

「となると実質8時間で向こうの異世界と行き来できるのね?」

「おそらく。時間は午前11時、午後7時、午前3時と3回になります。」

すると白石が右手拳(こぶし)を作り左手のひらにパチンと打ち付ける。

「よし。そうと分かれば明日の11時でも間に合いそうね。」

と言うと室内にいる隊員に伝えた。

「作戦開始時刻は明日、6月9日マルキュウマルマル。霧の発生地点に集合。11時になる1時間前に準備を全て終わらせろ。以上解散!」

隊員はすぐさま行動に移し行った。



翌日 6月9日 09:45 富士演習場


多くの車両と人が行き来している。異世界への移動の為の準備をしている。

白石は82式指揮通信車に搭乗していた。無線で最終確認をしている。そこには蒲生、キリコ、あの少女も乗っていた。蒲生は少女を見ながら白石に聞く。

「本当に彼女を連れて行くのか?」

何か不安そうにしている。だが白石はそんな事御構い無しだった。

「大丈夫よ。何があっても私が守ってみせる。ね、レオ?」

と言うと。少女はウンと頷き笑顔をみせる。すると蒲生が驚く。

「白石!?名前をつけたのか!?」

蒲生の調子のいい大きな声でキリコは耳を塞いだ。必然的に目を閉じ耳に指を突っ込み大きな声を緩和する。

「だって名前がないもの。あった方が彼女も喜ぶわ。」

なるほど、と蒲生は納得した。

残り10分。部隊の点呼が始まった。

「60式自走無反動砲、準備良し。」

「こちら87式偵察警戒車。同じく。」

「89式歩兵戦闘車、準備良し。」

次々に点呼が上がって行く。

「AH-1Sコブラ、準備良し。」

最後の点呼に聞いたことのある声が聞こえた。白石はそれに気づく。

((まさか、あの時の残りの部隊の…。))

そう、この作戦にはパイロットの野田とガンナーの佐々木も参加していたのだ。命令違反で処罰を受けるところだったが、運良く捜索部隊に選抜。この件は不問と処されたのだ。

部隊の点呼が完了した。霧の発生時刻まであと2、3分。隊員は緊張している。白石自身も額に汗をかき喉を飲む。人はどうなるか分からない事に直面すれば緊張するものだ。


6月9日 10:00


周り一面に霧がかかる。時間が経つとともに濃くなって行く。そして遂に視界ゼロになった。


同日 11:00


富士演習場の敷地にあった白石率いる中隊は消えた…。これと同時に部隊捜索は完全に始動した。

ついに異世界へ派遣された白石たち。周りは緑ある草原。しかし偵察に出た87式偵察警戒車が突如何者かに攻撃を食らう。救援、反撃に転じようと動く白石。だが隊員の中に引き金を引ける者はいなかった……。


次回:国のプライド

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