少女
遅れました。リアルで忙しくなっていたので書く時間がありませんでした。
遅くなるのでご了承をお願いします。
前回までのあらすじ
白石、蒲生、コブラのパイロット2人は現場で現場で事情を聴いていると部隊が消えた時同様の現象が起こる。幸い行方不明者は出なかったが、そこには血だらけで倒れている隊員。身体に傷跡。首輪、足かせをつけた少女が現れた。
「誰か!早くこいつを病院に!」
蒲生が叫ぶと担架を持った隊員がやってきて負傷者を運んだ。
「白石…。その少女は…。とりあえず何か服を。」
その少女は薄い服。いや、服とは呼べない皮1枚の格好だった。蒲生はその場で上着を脱ぎ少女に服をかける。
蒲生がその少女をみるとむすっとした感じで何処とも可愛げがなかった。蒲生は服をかけて2、3歩下がると少女の口が開いた。
「あなたたちは何者?見たこともない飛び道具や乗り物に乗ってた。矢とは違う。あれはなんだ?」
凛としたような、むすっとしたような。奥強さを感じる顔で少女は話す。
「それには答えられない。機密事項だ。」
白石は考えた。彼女がもし何かしらこちらの世界に干渉をすると予期せぬ事が起こる可能性があるかもしれないと。続けて白石が喋る。
「ところで、君はどこで私たちの言葉を?」
初めて会う相手なのに日本語を話すことができる。何か魔法で翻訳できているのか、それとも学習能力が高いのか、疑問に思っていた。
「倒れてた彼を魔法で脳内情報の言語を複製した。けどオリジナル元が死んでしまうと情報が壊れて私もあなた達の言葉を話せれなくなる。」
実際にそんなことが。白石は無意識に口を漏らす。
「魔法…。」
すると後ろから蒲生が耳打ちする。
「白石、ここで会話は流石に目立つ。部屋へ移動しよう。部屋を用意してくる。」
目線だけを蒲生に向けて会話をすると蒲生は走って行った。
「ここで立ち話はなれないだろう。一度個室へ行かないか?」
白石が少女の目線へ下り手を伸ばす。少女は頷きならが白石へと駆け寄った。2人はそのまま施設内へと向かった。
20:45 施設内個室
白石と蒲生は少女を連れて個室で事情聴取を行っていた。3時間ほど話し、彼女の事、隊員らに何があったのかを聞くことができた。
彼女の名前はない。生まれて間も無く奴隷市に売られ、奴隷業者に買われた。父も母も、誰が親なのかわからない。知っているのは自分が奴隷というだけ。
彼女のいた世界では魔法が基盤となっている世界で、こちら側の世界の扱う法則などが全て魔法に置き換わってるのだという。多種多様に他の種別がおり、そこには差別や奴隷、絶対主義など様々な社会情勢が混沌しているという。
彼女はまた奴隷市に売り出され他の奴隷と運ばれている時にに例の消えた部隊と遭遇し突如戦闘が起こったという。気づいたら檻籠から放たれていた。その時助けてくれた隊員が致命傷を負い一緒に逃げたのだという。追っ手が来たが濃霧が突然かかり身を隠せたという。そして霧が晴れると白石らがいた。
廊下で白石と蒲生がいる。
「蒲生さんはこれを上に。」
白石は彼女の話をPCでまとめたUSBメモリーを差し出す。
彼女のいた世界のごく一部の事だが重要な情報。蒲生はそれを受け取ると白石に愚痴り始めた。
「ったく、上との対応は俺に押し付けやがって。」
「だって、特自がここまで首突っ込んだらまずいじゃない。私らは部隊の捜索を頼まれただけだし。」
「そうじゃねえか、なんでそこまで首を突っ込んだんだよ。」
白石は上を向き考える。すると顔を火照らせ横を向きながら答えた。
「なんか…あの娘見てたら可愛く思えちゃって。はぁ…最近欲求不満だからかな。」
キャハッとはしゃぐ白石にそれに冷たい目線の矢を撃ち放つ蒲生。それと一緒に言葉の矢も飛んできた。
「あのなぁ…。お前があの子の面倒見るのが心配になってきたわ。」
「失礼するわね、私は成人迎えた娘しか手を出さないわよ。」
本当か?としかめ顔をする蒲生を睨みつけながら口を膨らます。膨らました口を戻した。
「後はよろしくお願いします。責任を持って面倒を見ますので。」
笑みを向けながら敬礼をする。
「へいへい。こっちもちゃんと説得してくらぁ。」
と手を挙げ振りながら廊下を歩きつきあたりを曲がる。蒲生が視界から消えると白石はスキップをしながら彼女のいる個室へと向かった。
個室。外には月明かりが差し込んで優しい光が窓越しから部屋を照らす。少女はそこでベッドの横の隙間で体操座りで座っていた。
………キィィ。
扉の開く音に目がさめる少女。入ってきたのは白石だ。その手にはやわらなそうな大きなタオルケットを2枚持っていた。
コミュニケーションを取ろうと中の様子を覗きながら入ってきた白石だが、目が覚めている様子を見る。
「ごめん、起こしちゃった?」
片目をつむりながらタオルケットを左手にまわし空いた右手でごめんなさいと顔の前に上げて出す。
少女は手で留めていた足を体側へキュッと引き締め顔を埋める。黙ったままだ。こんな異世界の地で1人なのだ。慣れるはずがない。
「こんなのじゃ慣れないわよね。」
白石は左手にかけてたタオルケットを差し出す。少女はタオルケットを恐る恐る手に取る。
「ふぇ!?」
高い声を漏らすと同時にビクンッっと身体が跳ねる。タオルケットの柔らかい感触に驚く。そしてタオルケットを顔に近づけると春の陽気を感じる香りがした。
「いい香り…。」
この漏らした声を白石は聞き逃さなかった。
(素を漏らした…。)
白石は彼女の素の部分を聞き次のステップに進む。
「どう?その布。ふわふわでいい香りでしょう?」
和かに笑みを浮かべ優しく語りかける。少女の凛としてた顔が女の子らしくなる。だが、少女は持っていたタオルケットを手放し床に置く。
少女の顔が暗くなる。それを見た白石は少女の肩を抱き引き寄せながら喋る。
「奴隷にしてた奴のこと?」
少女はうなずくと思い口をゆっくりと開き始めこたえた。
「奴隷はたとえ身分が高い人でも主人の言うことが第一なんです。たとえそこに居なくても。奴隷から反するような行為はしてはいけないんです。」
どうやら彼女は奴隷の中の常識があるのだろう。それを暴力や性的暴行という形で植えられたのかもしれない。
だが白石は少女を強く抱きしめて耳元で喋った。
「今後、貴女がどんな辛いことがあろうと私が絶対守る。権力や暴力、その主人にだって私が守る。」
少女はそのまま白石の胸の中で泣きじゃくった。
10分、20分くらいだろうか。少女が泣き止んだのは。少女は白石の胸の中で落ち着いたようだ。少女が落ち着いた頃に白石は少女に何か話した。すると少女は頬を綺麗なりんご色にしてうなずいた。
6月5日 08:00
窓には朝の陽射しがさしこむ。部屋の中を照らす。白石は目を開けて数秒手をかざしながら光を遮る。目が明るさに慣れると目を開けて立ち上がる。よろっと歩きながら扉の方へ歩いていく。
ふと気づき少女の方へ視線を向ける。少女は昨日白石が持ってきたタオルケットを抱いて寝ていた。その寝顔に微笑み扉の方を向くといきなり扉が開いた。それと同時に聞き慣れた声が聞こえた。
「白石!!お前あの報告書になんて事書きやがった!!?」
ものすごい剣幕とけたましい声をあげ部屋に入ってきた。そんな事は白石には慣れっこだ。前の部隊で散々聞いたからだ。だが白石はこの大きな声に彼女が起きてしまうかと思い後ろを向いた。だがぐっすり寝ていた。安心し蒲生の方へ顔を向ける。
「バレちゃいました?凄いでしょ。私の報告文。」
テヘッ☆と昭和の少女漫画くさいボケをする。
「お前のせいで散々な目にあったぞ!!」
時間を遡ること夜中……
蒲生は上の連中らに白石が書いた少女の事情など諸諸入っている報告書を出しに行った。報告書を渡したのは良かったものの、最後にはこう書かれていた。
「あの霧の向こうには魔法世界が存在しており、簡単に言えばファンタジー世界。その向こうに部隊が行ってしまった可能性が100%。部隊を助ける為には少女の力も不可欠で、護衛も兼ねて捜索隊編成を具申します。(てかしろ。)魔法の力は未知数なので良かったら74式戦車の調達をお願いを…(以下略)」
簡潔に 派遣許可出せ とのこと。この事に上は大激怒。だがその時現場に視察しに来てた特務自衛隊将補の霧民将補が報告書を読むと即承諾をした。こんな掟破りな決定を誰も批判できず覆す事もできなかった。その怒りの矛先が銃弾の様に蒲生に向かってきたのだった。
「とりあえずお前ん所の将補が許可を出しちまったから…。部隊編成で向こうは慌ただしくなっている。お前も色々と準備しろ。」
眉間が切れそうなくらいに寄せている眉を少し緩めて白石に言うとすぐ廊下に出て姿を消した。
「………ちょっとやり過ぎたかな?」
白石は首を傾げると何かを思い出し廊下に出た。
数分後、袋に入ったパンと牛乳瓶を手に持ってきた。それをテーブルの上に置き、ポケットからペンと紙を出し何かを書く。置き手紙のようだ。それを瓶の下に挟むと部屋から出て行った。
自称魔法世界への派遣が決まった。部隊編成の為に駆られる白石。そんな白石に一癖二癖もある隊員が小隊へと編成される。
そして。部隊救出の作戦が始まる!
次回:部隊編成、そして派遣