遭遇
グダッた()
次回はしっかりとまとめます。
2024年 6月4日 16:18
突如として濃霧に包み込まれ、その後演習部隊が行方をくらまして6時間が経過した。演習場から少し離れた施設には捜索本部が設置されていた。
施設前に機動車が止まる。複数の隊員が降りていく中で1人、女性隊員が無線機を抱えながら降りてきた。
「結局地上からじゃ姿はおろか足跡も見つからんかったぞ。」
彼女の名は白石百合子
1994年生まれ 30歳 女性 階級は三佐 特務自衛隊 小島大隊所属 第08小隊所属の女性隊員。髪はロング。職務中は長い髪を束ねている。
彼女は女性でありながら射撃、格闘、行動力や思考、判断力が長けており特務自衛隊へ5年前編入した。
特務自衛隊は警察の特殊部隊では対処できないテロ、自衛隊が対応できない状況下でも活動範囲を広め行動ができるようにした部隊である。ただし交戦権などは認められていない。
創設しようにも人材など色々税金がかかる。なら自衛隊から豊富なエリート人材を引き抜けばいいんじゃね?と防衛省の一言で自衛隊員から候補で上がった人らで創設された。そんな逸話がある。
さ、大まかな話はこれで良いとして戻ろう。
「地上からじゃ姿はおろか足跡も見つからんかったぞ。」
無線機に向かって大声で喋る白石。
「こちらOH-1。我々も上空からは確認できない。何か連絡あったらまたかけ直します三佐。」
「了解。何か動いているものがあったらしっかり確認しろ。」
「ウィルコ。」
無線をきると走って施設の入り口に入る白石と連れの隊員。広間に着くとスーツを着た人に誘導される。誘導された場所には大きな扉が待ち構える。扉を開けると並んだ机と椅子にお偉い部隊長が座っていた。舞台には左胸に勲章を付けた男が数人。スクリーンの前には捜索隊の指揮官が説明をしていた。
「OH-1が2時間前に空から再度捜索を行っています。」
「ニンジャからは動くもの何一つ無かったとおっしゃっていました。蒲生一佐。」
話の間に割り込む白石。そのまま歩きながら前に進み蒲生という指揮官の横に立つ。
「白石!来てくれたのか!向こうでは元気かね?」
と手を出し握手を交わす。
蒲生光正
陸上自衛隊所属 階級は一佐 経歴以下略。5年前は白石の所属する部隊長だ。
「そちらもお変わりなく。で、先ほどのOH-1からですが…。」
無用な話を切り離し本題へと移す。
「ああちゃんと聞いた。動くものは何一つ無かったと。他に情報は無いのかね?」
「はい。まず部隊が消えた位置…。」
マイクの存在を忘れていて、首を振りマイクを探し蒲生一佐が握っているマイクを見つけると、貸してと手を出す。蒲生一佐もそれを見て白石にマイクを貸す。
「部隊が消えた位置周辺の表面土壌が明らかにココ(富士演習場)のモノとは違いました。それに、この世の植物でないモノが生えていた。」
すると胸ポケットからUSBメモリーを取り出しPCに挿す。操作をしスクリーンに写真を出す。すると画面からはこの世のモノとは思えない植物が映し出された。その写真を目に周りはざわめき始める。
「静かにしろ!!」
マイク越しで大声で声を上げる白石。マイクと大声で部屋全体に声が響き渡り、マイク独特のノイズが通る。その嫌な音に耳を塞いでく一同。静まりかえったと同時に喋り始める。
「今わかっているのはこれだけだ。各隊は今捜索中の部隊の捜索員の情報を一滴も聞き逃すな。解散。」
隊員達が次々と部屋から出て行く。横にいた勲章をつけた男が立ち引き止める。
「おい!会議はまだ終わっていないぞ!」
と太い声を上げる。それに動きが止まる隊員達。すると壇上の横で立っていた白石が男に向かって喋る。
「まだ何も確証も掴めてないのです。今後話し合っても時間が無駄なだけです。今必要なのは確かな情報なのです。」
「貴様!命令に背くのか!?」
男が白石に向かって指をさす。するとスーツの男が現れ耳打ちする。すると男は黙って椅子に座り込む。どうやら白石の立場を知ったようだ。目の視線を男に向け頬を上げる白石。
「さあ!仕事だ!止まってないで移動!」
白石の掛け声に続いて行動する隊員達。そして部屋はもぬけの殻となった。
同日 17:00 部隊喪失位置
部隊が消えて7時間が経過する。
部隊が消えた場所の周りには規制線、大型のライトが数台設置されている。そしてその光の先にはこの世のモノでない植物が生えていた。初めて現場に入る白石と蒲生。
「ここが部隊が消えた位置か…。」
蒲生が自然と声を漏らす。
「本当に見たことない植物ね。世界のどこかで自生してるのか、新種か…。」
白石は植物をまじまじと見つめながら話す。
「今専門家が鑑定中だ。その内わかる。だが今問題は何故部隊が消えたかだ…。」
「部隊は全部消えたの?」
白石が蒲生一佐に駆け寄る。
「いや、航空隊のAH-1Sが残っていた。」
「そのパイロット達に話は聞けないかしら?」
「命令違反犯して今施設の部屋の中に2人して入ってる。」
「なら好都合。早速聞きに行くわよ。」
白石は走って施設の方へ走って行った。蒲生も白石に続き走って行った。
長い廊下をコツコツと音を立てながら早々と歩く2人。
「おい白石、そんなに急ぐことは無い。まだ時間がある。」
歩きながら白石に近づき小声で話す。
「もし本部に連れて行かれたらこれこそ貴重な証言が聞けなくなるのよ。今のうちに聞かなきゃいけないでしょう。」
そう言うと早歩きだった足がもっと早くなる。その行動を見て蒲生は声を漏らす。
「ったく…せっかちな性分なんだから…。」
2人は足踏みを揃えて廊下を進んでいった。
骨組みの二段ベットに埃を被った机と椅子と床。そこに男が2人座っていた。
「なあ、俺ら辞職しなきゃいけねえのかなぁ。」
野田庄司 陸上自衛隊航空隊所属 AH-1Sの操縦者
「仕方ねぇでしょおが。こんなことしちまったから。」
佐々木健介 陸上自衛隊航空隊所属
AH-1Sのガンナー
彼らは部隊の命令無しに離陸、単独行動をしたせいで今は個室待機している。いずれは本部へ送られるであろう身の2人だ。
「ま、どーせ近々戦争が起こるんだ。辞めどきだったかもなぁぁああっ!!」
情けない声を上げながらもたれかかっていたドアが開きすっ転ぶ野田。上を向くと白石と蒲生を視界の中に捉えた。白石は野田に目線を送りながら喋る。
「私は特自の白石。早速だけど貴方達の消えた部隊の話なんだけどちょっと来てもらえないかしら?」
と早口で彼女が伝えることを伝えたらそそくさとその場を後にした。
「ちょ、白石さん!?俺らここで待機って言われてるんだが。」
佐々木が廊下へ顔を出して白石に顔を向ける。すると横から蒲生が話す。
「先ほど彼女が言いましたが特自の身です。彼女といれば問題ないと。」
野田と佐々木は特自の権限がどこまで通じるのかわからなかった。だがそこまでして言うのだ。命令なら大丈夫だろうと2人は部屋から出て白石の後を追っていった。
同日 17:50 部隊喪失位置
現場にて2人から何が起きたのかを詳細に聞く白石。その目は鋭く、耳も動きそうなくらいに集中して聞いている。まるで獲物を捉えようとする虎のようだ。
「1時間前に濃霧が発生し、その50分後には無線が使えなくなり、その10分後くらいには部隊が消えてたのね……。」
話をおおよそにまとめて確認する。2人はうんとうなずく。
「何故濃霧がかかっているのにヘリを飛ばそうと思ったの?普通なら飛ばないと思うのだけど?」
基本視界が悪い時は飛ぶことはしない。だが命令違反をしてまで飛ぶことに白石は疑問を持った。すると野田が口を開いた。
「ヘリのプロペラで風を起こして霧を晴らせるかと思った。それだけだ。」
あまりにも単調な考えに膝が曲がりかくつく白石。身体を立て直しながら野田に喋る。
「ま…いいわ…でも独断、命令違反してまで行動できるのは凄いわ…。………。」
少し黙り込み左手を顎に当て何かを考える。
「うん、もし良かったらだけど…。」
その時だった。いきなり足元に濃霧がかかった。いや、周りをよく見ると全体が濃霧にかかっていた。近くにいた2人の影が見える程度だ。
「あの時の濃霧だ!また同じ事が起きるぞ!!全員その場から離れろ!!」
佐々木が大声をはって叫ぶ。それを聞いた周りの隊員達が霧から離れるために遠くに逃げる。それに続いて4人もその場から離れる。
「点呼!確認急げ!」
「ライトを点灯しろ。」
隊員の言葉が飛び交い慌ただしくなる。幸い行方不明者は出なかった。
「佐々木くん、この現象ってまさかあの時の?」
額に汗を流しながら濃霧の方に視線を送り話す白石。
「ええ、そうです。この霧の後1時間後に部隊が消えました。もしかするとこの現象で部隊が戻ってくるかも…。」
少なからずそんな期待感が湧く。だが現実はそんなに甘くはなかった。
同日 19:00 部隊喪失地点
「霧が晴れた…。」
白石は霧が晴れたことを確認すると部隊が消えた位置へ歩いていく。
「白石!安全確認がまだだ!近づくな!」
蒲生の注意を無視し足を進める。周りには謎の植物は生えていなかった。だが、地面には迷彩服を着た人が1人寝そべって倒れていた。白石は駆け寄る。倒れている隊員の周りを見ると傷だらけで血も出ている。手を口元に当てる。大丈夫。まだ息はある。肩に担ごうと腕を持ち方にかける。その時だった。
「彼の事は諦めて。もう長くは持たない。」
白石は手を広げ隊員をかばうように隠す。そして声の聞こえた方向へ顔を向ける。茶色の布1枚を身にまとった少女がいた。露出した腕や脚をみると傷跡だらけ、首輪に足かせがかかっている。
「貴女がやったの?」
「いいえ、この人達は私たちを守ってくれた。男に遊ばれるおもちゃ同然の私達を、この人達は私達を守ってくれた。」
少女が白石と会話をする中、蒲生が駆けつけた。
「白石!早く彼を…。その少女は…?」
蒲生が白石に聞くとニヤつきながらこたえた。
「蒲生さん、この事件は…ただもんじゃないですよ…。」
傷跡だらけの少女、男に遊ばれるだけのおもちゃ。私達を守ったこの隊員。全ての出来事の可能性を考えた白石は一つのゴールにたどり着いた。
白石はニヤつきながら頬に流れる汗を舌で拾い舐めた。
次回 派遣
来週になりますが頑張って執筆していきます。