34 悪魔の契約と織田姫子7
木野小太郎。42歳。市役所職員。
山を愛する彼は、年に数回の本格的な登山と、その合間の週末の軽いトレッキングが生きがいでした。その日、家から小一時間の馴染みの深い小さな山の路を歩いていた彼は、前週の台風で崩れかかった地面を踏みぬき、切り立った崖を10mも落ちてしまったのです。大怪我を負った彼の前に、毒々しい赤いキノコを携えたその女が立ったのでした。
「私は織田姫子。この1UPキノコがあれば、一度死んでも大丈夫よ。」 姫子
「た、たす…けてく…れ。」 木野
「つまりこのキノコを受け取るということね。契約成立だわ☆」 姫子
失われゆく意識の中で、彼はキノコが彼の身長ほどにも巨大化し、そして菌糸を伸ばして彼にまとわり付いていく夢をみました。彼が再び意識を取り戻したとき、彼は怪我ひとつしておらず、姫子の姿はどこにもありませんでした。夢でも見ていたのか?不審に思いながらも家へと帰って行きました。
それから1年後、彼は再び同じ山で転落しました。ぱっくりと裂けた腕からは夥しい血が流れ…るかと思いきや、血は一滴も流れません。傷口は何やら白い糸を引くばかり。傷口を覗き込んでも血肉の赤は見えず、ただ白い断面が見えるだけでした。恐ろしい悲鳴を上げた彼は、突然ライターに火を付け足元に投げます。服の焼ける臭いと共に、何やら香ばしい美味しそうな匂いが漂ってきました。…まるでキノコを焼いているような。彼の脳裏には、子供のころに虐められていた時のあだ名が思い浮かびました。キノコ太郎。
「ふ~ん、ふ~ん、ふ~ん。山登り~は~楽しいな~。
(爽やかに楽曲『天国と地獄』が鳴る携帯を出して)あっ、ダ~リン。
契約は順調よ。私も手伝うから早く出世してね☆」 姫子
(おしまい)
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