30 悪魔の契約と織田姫子3
古い洋館、その一番奥の部屋。丸い黒檀の机に置かれた紙に、一人の少女がガチョウの羽根のペンで何かを書いていました。
「他の子たちはお金持ちだけど、うちは普通の家だから、
学資と生活費以外の諸々の費用は自分で何とかしなきゃ…です。」 明日葉
そこは学園のクラブハウスエリアの隅、次々と最新式のクラブハウスが建造される中、築100年を経過してどこのクラブも利用しなくなった洋館。霊峰山明日葉は、その奥の一室を無償で借りてお店を開いたのでした。
店の準備が整った頃、一人の客が現れました。彼が洋館の扉を開けると、玄関ホールの隅に黒い服を着て、皺を寄せた眉間に人差し指を当てる男がいたのでした。
「古畑任○郎!?」 客
「う……ん、違いますね~。
私は霊峰山明日葉さまの執事、新畑心三郎です。
お嬢様がお待ちです。中へどうぞ。」 新畑
奥へと案内される客。
「子供の頃から霊が見えて寄って来られる、それが悩みなのですね。
見えなくすることはできますが……、対価が必要です。」 明日葉
「まさか魂…」 客
「5000万円です。35年分割払いも可…ですよ。」 明日葉
「即物的!? しかも頑張れば払えそうな額!
分かりました、霊を見ずに済むのなら…」 客
「では、契約書にサインを。」 明日葉
客がサインをすると、香の煙をふーっと客に吹きかけるアスハさま。
「…れ、霊が見えなくなった…!?
けど、ぎゃ~~~っ、俺が死んでる!? 死んでる俺が見える!
しかも、どうして死んだのかは分からない! ど~なってるんだ!」 客
「貴方が富士山を見ていると思いなさい。
そこでぐっと顔を横に向ける。
すると富士山は見えなくなる。
でも別の物が見える。そういうこと…です。」 明日葉
「ふざけるな~、こんな契約無効だ~!
絶対日本の法律では通用しないぞ~!
こんな紙、破いてやる~!や、破れないぞ~!?」 客
「日本の法律で通用しなくても、それは霊的に有効な契約…。
…絶対に変えられません。」 明日葉
「くそ~、だったらお前を殺して~!
な、なぜだ~!?手が動かないぞ~!?」 客
「私を殺せば、貴方は私にお金を払えない。
だから、お金を払い終えるまでは貴方に私は殺せない。
ちなみに分割の場合は、年5%の金利が付きます。」 明日葉
「そんなの見てないぞ~!
あっ、契約書の裏の隅に、水色の文字でちっちゃく書いてある~!」 客
客は洋館を出るとフラつきながら、街へと足を向けるのでした。しかし、なぜか大通りで刃物を持って暴れる男が。
「ここは秋○原か!?しまった、目が合った。こっちへ突進してくる~!」 客
男のアーミーナイフが客の胸に突き刺さる寸前、客はこんなことを考えたのでした。
(そうだ。今、胸ポケットには契約書が!
この契約書がなければ死んでるところだったぜ!という展開か!?)
しかし、胸ポケットの中でナイフを華麗にひらりとよける契約書。
洋館の中。明日葉が黒電話を回していました。
「一つだけ契約を逃れる方法がある…です。
それは契約者が死ぬこと。つまり団信保険付きなのです。
もしもし、保険会社さん?
ええ、契約者様にご不幸がありまして。
20%減? 仕方がないですね。
では4000万円、口座に入金お願いします。(がちゃん。)
ふうっ、世界征服の軍資金集めは大変…です。」 明日葉
そのころ、関東一円で畑や道路、地下鉄の壁に直径20cm大の穴が空く事件が相次ぎました。
「あみぐるみ達が、徳川埋蔵金を見つけるのとどっちが早いでしょうね。」 明日葉
おしまい
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