16 大天使と天御堂咲久羅4
皇居に並び称される、咲久羅のお屋敷の一室。
「マリアンヌちゃん。ひと一人が生きていくのに、
そんなに広いお部屋はいらないのよ。そう、20畳もあれば十分ね☆
あ、でもあなたはネコだから、8畳くらいでいいんじゃないかしら?
あら? なぁ~に、怒っちゃったのぉ?」 咲久羅
先月と名前違うし。でも、そんなことはどうでもいいんです。
咲久羅ちゃんの近くは絶対安全圏だから、ぼくはずぅ~と咲久羅こちゃんと一緒にいるよ。
by 先月はマリーアントワネットと呼ばれたペルシャ猫、オス3歳。
築30年の木造アパートの一室。
「ただいまッス。」 信悟
「お帰りなさいませ。」 八瑠佳
「うぉっ、部屋が綺麗になってるッス!?」 信悟
「あんまり汚いから、掃除しておいたわ。」 八瑠佳
「すまないッス。ん?でも、あのピンクの布団はどうしたんッスか?
それに自分の布団がないッス。」 信悟
「あれは私の布団。
私はまだ中学生でカード作れないから、あなたのカードを作って買ったの。
あなたのは、汚くて臭いから捨てておいたわ。」 八瑠佳
「な、なんてことを!?
っていうか外国人も簡単に作れないはずッスよ。どうやったッス!?」 信悟
「それは秘密。
とにかく、この部屋は私が寝るから、あなたはどこか余所で寝て。」 八瑠佳
「ここは自分の部屋ッス!!」 信悟
「なあに? 女子中学生の寝室に潜り込もうっていうの?
懲りないわね。この変態!」 八瑠佳
「もっ、潜り込むって言うか、潜り込まれたッス。」 信悟
「ぶわはははははは、ぶわは、ぶわは、
じゃあ、俺サマは押入れと~~~っぴ、
よ~~~そ~~~ろ~~~。」 クックパッド
「じゃあ、あなたは部屋の前のアパートの廊下ね。」 八瑠佳
「絶対、おかしいッス!!!」 信悟
学園の教室。
「ねえ、聞いたぁ? 榛名さんって、
最近みすぼらしいアパートに出入りしてるらしいわよ。」 田口ひな
「知ってるぅ~~~。それに浮浪者みたいな人と一緒にいるところ、
見た人がいるってぇ~~~。」 関口ひよ
二人の後ろを一瞬で通り過ぎる榛名。
「なっ、なんだか私、気分が悪くなってきたわ。
気持ち悪いぃ~~~。」 田口ひな
「わ、わたしも。なんだか、眩暈がするぅ~~~。」 関口ひよ
保健室へと急ぐ二人。涼しい顔の榛名。
「お嬢。一般人に脳みそシェイクは、ないんじゃねぇかぁ?」 古瀬
「そんなことよりも、八瑠佳ね。私に恥をかかせるなんて。」 榛名
「まあ、死ぬわけじゃないし。
ほっとけばいいんじゃねぇ~。」 古瀬
「さっさと捕まえてくるにょろん。」 榛名
「えっ?おれぇ?めんどくせ~。」 古瀬
夕陽を背にした下町の空き地。
「おまえは、榛名の執事の古瀬。
私の命を狙いに来たのか?」 八瑠佳
「迎えに来たぜ。」 ニヒルな笑顔の古瀬
ずっきゅ~~~~~~~ん♡
ああ、戦場で敵として遭いまみえながらも、魅かれ合う二人。
まるで、現代のロミオとジュリエット。
それでも思いを募らせた二人は、ついに立場を投げ捨てて愛の逃避行。
これはもう、駆け落ちね!?
「お嬢の命令で。」 古瀬
「・・・。」 八瑠佳
千歳基地と並び称される、榛名のお屋敷の一室。
八瑠佳と目を合わせることなく、背を向けて立つ榛名。
「私に刃向った貴女を、
もはや影武者としてこの屋敷におく事はできません。」 榛名
「・・・はい。榛名さま。」 八瑠佳
「しかし、その顔。・・・他人とは思えません。
今日からは私の妹として、この屋敷で暮らしなさい。」 榛名
ずっきゅ~~~~~~~ん♡
「・・・榛名・・・お姉さま♡」 八瑠佳
八瑠佳に一瞥することなく、ソファに寝転び、雑誌に目を落とす、榛名。
「では、さっそくですが、
コンビニでスプーンで食べるロールケ○キを買って、
予約しておいた「どうでし○う」のDVDを取ってきておくれ。
それから、今度の期末試験。私の代わりに出ておくように。
妹よ。」 榛名
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい、榛名お姉さま。」 八瑠佳
「影武者っつうか、替え玉?
まあ、いいや。めんどくせ~。」 古瀬
築30年の木造アパートの一室。
「はあ~~~~~っ、や~~~っと一人出て行ったッス。」 信悟
「まて~~~、きゅうりドロボ~~~。」 遠くの声
「ん?なんッスか?物騒ッスね~。」 信悟
ガチャンと開く、ドア。
「やあ、みんな。ここだったんだね。」 緑の生き物
「・・・イヤな予感がするッス。」 信悟
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