2話目
しばらくきらきらと光る海を眺めていると、ライオンもどきは急かすように小さく鳴いた。そしてまた、足を進める。
俺はどこに連れて行かれるのだろうなどは特に心配もせず、静かに背中に揺られていた。世界が違うんだ、俺にこの世界に帰る場所は無い。そして元いた世界にも、もう、きっと。
海沿いを走り、数十分。見えてきたのは小さめの洞窟。潮風の影響なのか入口がところどころ崩れそうだし苔もびっしり。おいおいあんなとこ入るのかよ…。ちょっと憂鬱になった。
躊躇いもなく入ったライオンもどきは数歩歩き、遠くに聞かせるようにゆっくりと優しく、鳴いた。
それに反応は無かったものの…何故か、人がいるような気がした。あれだ…気配がする、ような。不思議な感覚。いや何言ってんだ俺。
でも、もし人がいるのなら…。言葉は通じるだろうかと少し戸惑いもしたが、英語も(本当に少しなら)話せるし大丈夫であろう。謎の自信を持ちながら、気配に近付いていった。
着いた先は一つのドアの前。ああやっぱり、誰かいる。
数秒ドアの前でつっ立ってたが、ライオンもどきが鳴いて俺の体を押した。しぶしぶドアを開けて、
「……君、誰」
一番に目に入ったのは、白。
白い羽の生えた、白髪の男だった。