1話目
誤字脱字ありましたら言ってくださると嬉しいです。
初めは良く分からなかった。今の俺の状態が。
高校に行こうとして電車を待っていたら急にぐらついた視界。それに続いて甲高い悲鳴が聞こえてようやく、俺は駅のホームから落ちたのだと理解する。そして、目だけ動かして右を見れば電車。
これは助からないな――――
どこか自棄にそう思って、俺の意識はシャットダウンした。
はず、だった。
なのに聞こえた声…というか、小さな鳴き声。ここが死後の世界だとしても、流石にこれはおかしいだろう。あとなんかふさふさしてる。え?なにこれ。
不思議に思った俺は目を開けて…また、閉じそうになった。
いやなにやってんだって話だが、仕方ないだろう。だって気が付いたら森の中にいて、目の前にいかにも強そうなデカくて白いライオンらしきものがいて、そいつが自分の顔に擦り寄っていたのだから。
「うおああああ!?」
思わず叫ぶ俺に構わず、ライオンもどきは俺の肩に顔を押し付けてきて…毛並みが良く、モフモフしてて気持ちがいい。
「なんだこいつ…」
どういうわけかこいつは俺に懐いているらしい。俺がたてがみを触ると、ライオンもどきはゴロゴロと喉を鳴らす。かわいい。
って、こんなことしてる場合じゃねぇ。
「なあ、ここはどこなんだ?」
ダメもとでライオンもどきに聞いてみる。はたから見たらイタい人だが致し方ない。
返ってきたのはゴロゴロと甘えるような声だった。
ここは森の中だし、ヘタに動いてもさらに迷う危険がある。…参ったな、ここで餓死か。
とにかく俺はあっちの世界で死んだ。そしてファンタジーっぽいこの世界に入り込んでしまったらしい。
……………笑えねぇ。
絶望的だ。いっそライオンもどきに食われた方が…あ、でもそれは痛そうだから却下。
なんて悩んでいたその時。ライオンもどきは俺に背を向けて座った。
そのまま、後ろを向いてじっと見つめてくる。もしかして。
「…乗れってことか?」
返事は鳴き声だった。
どこに連れていかれるのか分からないがこのまま餓死するよりかはマシなので、ライオンもどきの背にまたがる。あ、結構安定してるわ。
「じゃあ、よろしく頼むな」
そう言って頭を撫でると、ライオンもどきは落ちないように気を使ってくれてるらしく最初はゆっくりと、そして段々とスピードをあげて走り始めた。
道がわかっていたのか、森はすぐに抜け、見えた景色は広い広い、どこまでも続く海。
その一面の青を眺めて、覚悟を決める。
「…生きよう」
どこだかも分からないこの世界で、出来るだけ。