ココロ
三月三〇日、僕は明日二十歳を迎える。それと同時にライフロイドである『華』を失う日でもある。
華の気持ちを知ってから二週間が過ぎた。こんなにも二週間が短く感じたことは多分無いと思う。
僕たちはいろいろな事を話した。小さかった頃の思い出やあの時、どんな気持ちだったのかだとか。沢山知って、知られて、僕と華は互いにごめんなさいと言っていた。どちらがただ悪いというわけじゃないんだ。相手のことを理解するっていうのはとても難しいことで、同じ人間同士でも分かり合えないことって沢山あると思う。だから、人間とロボットなんてなおさらわかり合うことが難しいだろう。だけど、華は僕にこう言った。
「私は最後に蓮二さんを知ることができてよかったです。知ってもらえてよかったです」
「僕だって華のこと知らないままだったら、この先ずっと、ライフロイドのこと嫌いになっていたり、いろいろ諦めているかもしれない」
「私はアップデートして、最初は後悔しました。嬉しいことよりも悲しいことの方が多くて、感情がこんなにも辛いものだとは知らなかったから。でも、蓮二さんに想いを伝えることができて、分かっていただいて短い時間でも一緒に過ごそうと言ってくれて、すごく幸せでした」
僕は華と出会えて本当によかった。
誰かを想う気持ちを教えてもらった。華に出会わなければ、僕は冷たい人間になっていたと思う。誰かに知ってもらうには自分から相手を知ろうとしないといけないんだって知るのとができた。
時刻は二三時五七分、あと少しで僕は誕生日を迎え、華はシステムの強制停止し、初期化する。さらに記憶のデータが消滅する。
「もうすぐですね。立派になられました。いえ、ずっと蓮二さんは立派でした。きっと、私なんてもう必要ありません」
「そんなことない。まだまだ、僕は立派じゃない。たったの二〇年だ。知らないことばかりだ。それに今データが消えたら、華は二〇になった僕に誕生日おめでとうって言えないじゃないか」
華は少しうつむいていたが顔を上げた。
「そうですね。明日になったら、私は違う私になってしまいますからね。でも、信じてください。私はきっと蓮二さんに言いますから」
「わかった。信じるよ。絶対に言ってくれ。じゃないと僕は前を向いて歩けない」
二三時五九分。
「大丈夫ですよ。いつまでも前を向いて、たまに私を思い出してください。これで最後ですね。今までありがとうございます。蓮二さん……」
三月三一日、僕は二十歳になった。目の前の華は完全に停止した。きっと、記憶も消えているだろう。政府の元に帰されるので一度、目は覚ますがそれはもう『華』ではない第三世代のライフロイドの一体だ。
「華、二十歳になったよ。僕はお前を信じてるから。前を向けないって言ったけど、きっと前を向いて歩くよ」
僕は立ち上がって自分の部屋に歩き出した。
「 システム再稼動。リセットの完了をしたことを確認」
七時〇〇分。リビングにいる華は再稼働していた。でも今の華は記憶もない、ただのライフロイドだ。 僕はなるべく顔を合わせないように華の座るソファの後ろを通ろうとした。
すると、華が突然立ち上がり、僕の方へ歩いてきた。
「どうした。もう、契約外だから政府の役所に帰るんだろ」
「はい。ですが一言、貴方に言わなければいけません」
“蓮二さん”と言わないから僕のことを忘れているのだろうと思ったが言わなければならないってどういうことだ。初期化したんじゃないのか。
「すみません。名前がデータにないのですが、初期化されたデータの中に貴方の顔があったので、貴方に言わなければいけないと思いました」
「お誕生日おめでとうございます」
たった一言だけ言われて僕は泣き出してしまった。華であったライフロイドは少し困惑していた。アップデートしてある感情データは残っているようで最近の華と似た動きをしていた。
「どうされました?」
「いや、なんでもない。僕は前を向いて歩かないといけないみたいだ。ありがとう」
大丈夫。きっと、華は心から僕の事を想っていたに違いない。だって、
「おかしいですね。なぜ、私にも涙がでているのでしょうか。それに悲しいわけではなく嬉しいと思っているのに」
華。本当にありがとう。僕は君に出会えて本当によかった。
「それはきっと心があるからじゃないかな」
初めて書いてやっぱり難しくてでも、書いてるときは楽しくかけたので悔いはありません。読んでくれた方々にはとても感謝しています。ありがとうございました。




