表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/34

6.目的


「モコ助! あれはいったい……」

 剣を拾い上げ、モコ助と合流した雫である。雫にも巨人の姿が見えているのだ。


「シャレにならねぇぜ嬢ちゃん。あのアマツミカボシがカカセヲで牽制している相手って、幾つ心当たりがある?」

 モコ助が震えていた。


 怖がっているモコ助を抱き上げようとして、雫は気づいた。

 自分も歯の根が合わないくらいに震えている。

 傲岸不遜を立体化したような存在であるミカボシが、戦いを躊躇している。


 そんな存在とは……。


「八岐大蛇、草薙剱、……まさか」

「嬢ちゃんの考えとオイラの考えは一致している。ありゃ、……あれがスサノヲだ!」


 海の神、荒ぶる神、そして死者の国である根の国の支配者。天津神の荒れす凄ぶる神! 偉大なる三貴神が一柱。建速須佐之男命(タケハヤスサノヲ)が、そこに立っていた。


「スサノヲを降ろすのに必要な媒体は何だろう? 私は考えた。一番相性が良いのは草薙剱ではないか? これが結論だ」

 真島が両手を広げている。


「真島ぁーっ。てめぇ神を否定してるってのぁ、ありゃウソか!」


 首だけをミカボシに向ける真島。表情に変化はない。

「キサマを目の前にしても、なおかつ神を否定する」


「アマテラスは恒星だ。イザナミは地球だ。ツクヨミはその衛星だ。スサノヲは何だ? 言ってみろ、真島!」

 少なくとも、ミカボシが言ってはいけないことを言った。


「スサノヲは必要だ。存在するか、存在しないかはこの際関係ない! 私にはスサノヲがどうしても必要なのだ!」

 真島は広げた両手を空に向かって挙げた。


「そのために大蛇を三度甦らせた。三度目の戦いで大蛇より草薙剱を得た。我が宇気比は成就したっ! 私は正しい。私は正しかったのだ!」

 広げた手を握りしめる真島。宇気比とは神々の賭け。真島は何かを掴み、握りしめるような仕草をする。


 それを見たモコ助が口を歪めた。

「くそっ! オイラとしたことが何で気づかなかったんだ! 八岐大蛇の殺害がヤツの宇気比だったんだ! 嬢ちゃんの勘は正しかった!」


 三度の賭。真島は雫サイドの勝利に賭けていた。三度目の戦いで八岐大蛇を殺し、草薙剱を得るという賭に勝ったのだ。


 だからスサノヲが現れた。

 

「さあ、スサノヲ、我が体を社に!」

 緑の巨人が真島に吸い込まれていった。あまりにもあっけなく、真島にスサノヲが降りた。


「ふふふ、スサノヲの力が私の体にあふれてくる。スサノヲの知識が私の頭に入ってくる。解るぞ! 根の国へ行く方法が! 冥界の、亡者の門を開けば良いのだ!」


「スサノヲもヤキが回ったな。なんでこんな小物に降り――隙ありゃーっ!」

 ミカボシお得意、マイナス一秒の移動プラス不意打ち。真っ向唐竹割にカカセヲを振り下ろす。草薙剱ごと、真島を真っ二つにする軌道だ。


 スサノヲの力を得た真島は、難なくかわしていた。

 ミカボシと同じ、マイナス一秒の移動法。


 大地に穴を穿つカカセヲ。モコ助と雫が避難した高台にまで、空振りの振動が伝わった。


「邪魔をするな甕星。私は亡者の門を開く。ヨモツヒラサカを駆け下りるのだ!」

 真島は、片手持ちにした草薙剱を理想的な軌道で振り下ろす。その軌道は道場剣道のそれではない。例えて言うなら、戦場で敵を兜ごと持って行く太刀筋。


 緑の鱗粉を撒き散らす剣をミカボシはカカセヲの根本で受ける。体をかわす余裕がなかったのだ。

 どうにかミカボシは、鍔迫り合いの体勢に持ち込めたようだ。押し合いなら負けることはない。


「ちなみに、門を開いたらどうなるか知ってるか? 甕星?」

「どうなるかって? 決まってるじゃねぇか!」

 大きく息を吸い込むミカボシ。


「メコ助! どうなるんだ?」

 ミカボシは大声で助けを呼んだ。


「モコ助な。まずいぜ、ミカどん。負と腐の気がこの世に流れ出る。この世の生ける者、ほとんどが全てが腐り果てるだろうな。少なくとも日本という国は、下等な菌類しか生息しない事になるぜ!」

「……オレ、そんな世界でも生きていけるぜ」


「オイラの話は、食い物も酒も腐っちまうが、それでもいいか? って内容なんだぜ!」

「真島っ! 何てことを! てめぇのキンタマは何色だー!」

 イレギュラーパワーを放出したミカボシは、スサノヲの力を得た真島を押し返す。


「出てこいスサノヲ! てめぇちょっと話がある!」

「スサノヲは私だ!」


 フェイントを一つ入れた上段突きを放つ真島。ミカボシは、その突きを簡単に絡め取り、逆にカカセヲの突きを打ち出す。 

 剣の腹でカカセヲを滑らせ、かろうじてかわす真島。

 ミカボシは容赦なく責める。さらに一歩踏み込んでカカセヲを横に殴る。長い得物が有利に働いている。


「出てこい、スサノヲ! さもないと、いろんな事、稲にバラすぞコラァ!」

「いい加減にしろ甕星。相変わらず下品な鳥頭だな!」

 真島の背後から、緑色の揺らぎが現れた。そしてそれが人の形をとる。スサノヲだ。


「甕星よ、兄弟よ、お前の疑問に答えてやろう。貴様、この小僧が、なにゆえ俺を呼んだか知っているか?」

「聞いてんのはこっちだ! お前、ホントはオレが握ってるてめぇの浮気の秘密ごと、オレを葬る気だろ?」


 力任せにカカセヲを繰り出すミカボシ。真島は、今度も剣で受ける。だが、ミカボシは、カカセヲを剣に沿って滑らした。

 真島は体を捻ってカセヲのベクトルをそらす。


 ミカボシが剣を交えている相手は真島だが、ミカボシが見据えている相手はスサノヲだ。

「もう一度聞く。甕星! 貴様この小僧が、なにゆえ俺を呼んだか知っているか?」

「知らなきゃ、戦えねぇってか?」

「相変わらず短気だな。……俺が言うのもなんだが」

 スサノヲが溜息をついたような気がしたが、真島でさえ気がつかなかった。


気に障ったのか、ミカボシが大きくカカセヲを一度振るう。真島が大げさにバックステップ。

 今まで真島が立っていた場所に、三条の亀裂が入った。


「一振りにしか見えなかったんだがな……」

 モコ助が真二郎の結界の中で呟く。一回にしか見えなかったが、実は三回、あの重くて長大なカカセヲをミカボシは振っていたのだ。

 

「じゃあ、小僧の目的を……甕星、貴様知っているか?」

「経緯は知っている。人間世界を破壊することだろ? オレでもそう考える」

 モコ助が首をすくめた。また雷が鳴ったのだ。


 いや、スサノヲの笑い声だ。


全てを捨てても手に入れたいもの。

それを欲と言ってよいのだろうか?

次回、真島の真の目的があらわになる。


次話「荒神」

おたのしみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ