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第一章 異変

人物紹介 其ノ弐


水華スイカ (15)


法印家の霊能者。貉とは従妹に当たる。

縛魔術や探知術に長けるが、退魔法が苦手。冷静沈着で現実主義。

現代。


妖怪と聞けば、大抵の人は『昔の』存在と思うだろう。

確かに、戦国時代や平安時代は特に、無数の妖怪が跳梁跋扈していた。

その当時が、最も妖怪の活動が全盛期だったのは事実である。


だが、実は現代にも妖怪は存在する。


そもそも妖怪とは、悪意や怨念が具体化したモノがほとんど。

全てがそういう訳ではないが…


だからこそ、政治や経済なんかでドロドロになっている現代もワリと妖怪は多い。


よって、昔ほど表立たないが、妖怪を祓う霊能者は、意外に必要とされている。

我らが法印家も、実はある政治家のお抱えになっている。

全く不愉快な話であるが。



……翌朝


「ふぁ〜……眠いぃ」


貉は目をショボショボさせて、フラフラと学校への道のりを歩いていた。


少し後ろに同行してる水華も、無表情ながら眠そ…


「Zzz…」


……いや、歩きながら寝ていた。どんな特殊能力だ。

羨ましい。


なんかもう怨めがましい目で水華を睨んでると、級友が背中を叩いて現れた。


「おはよう、法印!」


「……ああ、山門か。おはよう」


山門亮ヤマト・リョウ

貉のクラスメイトであり、貉や水華と同様、霊能者である。


「おいおい、気の抜けた返事だな。今日は卒業式だってのに」


「昨夜に死闘を繰り広げ、その上一時間しか寝ていないんだ。これで元気なヤツがいたら人間か疑うね」


「そうか?宗次さんは三日三晩、妖怪の群れとやり合った次の日にも、いつも通りケロリとしていたぜ?」


宗次とは、法印 宗次ホウイン・ソウジ

現在の法印家当主で、貉の師でもあり、祖父に当たる。


「…あのジジイと一緒にするな。あれは人間では無く、怪物の部類だ」


「ハハハッ!あの生きながらにして伝説と言われた陰陽師を、ジジイ呼ばわりか!」


ムスッと不機嫌そうな顔をする貉に、軽薄に笑いかける亮。

確かに、人間性はともかく、霊能者としての実力は、貉も認める。

もう齢百近い年齢にも関わらず、日夜、世界中を飛び回って妖怪を修祓しているのだから。


しかし、だから腹が立つ

あんなのが最強の霊能者だなんて、貉は認めたくない。


「あーあ、それにしても何なんだ。とうとう俺たちも卒業か」


しみじみ頷く級友に、貉は眉をしかめた。


「なんだよ、急に」


「…いや、あと数時間で級友が旧友になるんだと思ってなぁ」


そんな事を言い合いながら登校して行った。




――…




卒業式は無事に終了した


同級生たちが泣き別れしたり、励まし合ったりする中。


「わからないね」


一歩外れた位置にいる貉が呟いた。


「ただの卒業式で、なぜそこまで感情的になれるのかね。別に二度と会えなくなるわけじゃないのにさ」


会いたくなれば、会いに行けばいい。

そう思った矢先、不意に背後から男の声がした。


「そんな事を言うものではない」


「!?」


勢いよく振り返ると、三十代後半の、黒スーツを着た荘厳な男がいた。


「てめぇ……なんでここにいる!ここは中学校だぞ!」


「卒業式に父親が来ていて何が悪い…?」


「てめぇが保護者ってツラかよ!ヤクザやマフィアの方がしっくりくる!」


確かに、この男を見ればそういう印象を受ける。

この男の名は、法印 ホウイン・カズラ

貉の父親であり、法印家をお抱えにしている政治家のボディガードをやっている。


「……まぁいい。とうとうお前も、中学を卒業した訳だ。霊能者として一人前に認められる」


「ふん…」


一見、祝いの言葉に聞こえるが、この男が言いたい事は『次期当主候補になる権利ができた』という事だ。法印家は、義務教育を終えると、その権利が与えられる。


貉には興味ない話。

しかし、法印家の宗家である貉は、今年から、当主決定の会議に参加しなければならない。


この父親は、我が子が自分の味方をすると考えてるのだろう。


大して影響力があるとは思えないが…


「それじゃ、仕事があるので失礼する」


それだけ言い残すと、葛は音も無く姿を消した。

その代わりに、一枚の人型の紙がヒラヒラと宙を舞っていた。


「あの野郎……仕事場から式神を飛ばしたのか!」






―…―…




「……何…?」


卒業式の帰り、一人で路地を歩く水華は、何か異変を感じた。


妖気だ。


それも極めて強力な…


ここから距離がある場所だが、確かに感じ取った。

しかも、隠す様子はなく、むしろ見つけてもらう事を意図して、わざと垂れ流している。


「性質は火……か」


恐らく罠だ。

だが、放っておく訳にもいかない。

それに、この妖気なら、他の霊能者も気づくだろう。


「………」


手元にある和紙で式神を造り、法印家の邸に飛ばすと、妖気の発信源に向かった。

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