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なぜか私だけ会えない同僚

作者: Wataru
掲載日:2026/02/12

 最初に名前を聞いたのは、先月だった。


「来週から田中さん入るから」


 課長が朝礼で言った。


 私は何気なく頷いた。


 だが、その日から一度も会っていない。



「昨日、田中さんと一緒だったよね?」


 同僚に言われ、首をかしげる。


「誰?」


「え?」


 逆に驚かれる。


「昨日、遅番一緒だったじゃん」


 勤務表を見る。


 確かに名前がある。


 私の隣に。


 だが、覚えがない。



 それから何度も同じことが起きた。


「田中さんに伝えといて」


「さっき一緒にいたよね?」


「二人で残業だったでしょ?」


 全部、覚えがない。


 なのに勤務記録には、

 毎回、同じ名前が並んでいる。



 ある日、席替えがあった。


「田中さん、ここね」


 課長が言い、私の隣の席を指す。


 そこには誰も座っていない。


 椅子も、机も、空いている。


 でも周りは普通に会話している。


「田中さん、よろしく」


「また同じ班ですね」


 空席に向かって。



 仕事中、何度か気配を感じた。


 誰かが横に立つ気配。


 視線。


 でも、振り向いても誰もいない。



 帰り際、机を片付けていると、

 自分のデスクにメモが置かれていた。


 見覚えのない字。


 


『どうして』


 


 それだけ。


 気味が悪くて、丸めて捨てようとした。


 裏返す。


 


『どうして、あなただけ見えないんですか?』


 


 背後で、椅子が引かれる音がした。


 すぐ隣で。


 誰かが立ち上がる気配。


 でも。


 振り向いても、

 そこには誰もいなかった。


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