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【短編小説】ぐるりTHE ヴァージャイナ

掲載日:2025/12/16

 コインロッカーで産まれたトラッドな俺たちはヴィレヴァンの便所で首を吊って死ぬと言うクラシックで綺麗に終わる。

 だが始まりはマンコと言う星だ。

 またはクリトリスと言う月、それらが見える丘だ。

 童貞だった俺にとってそれは夢だったけれど絶望でもあった。

 俺は学校の体育館にある視聴覚室にフユコを連れ込んだ。フユコは予備校でしか会わないので学校にいる筈が無いし、そもそも俺は男子校生だった。

 それは単なる夢だ。

 その俺がフユコを視聴覚室に連れ込んで、その硬い木の椅子にフユコを座らせる。

 俺は息を潜めてフユコのパルテノン神殿に潜り込む。

 スカートの天蓋は暗く星は見えなかった。

 ここからは単なる絶望だ。

 フユコのパルテノン神殿の奥にある空間は暗く曖昧に歪んでいた。何も無かった。スカートの天蓋から続く空間が俺を笑いもせずにぢっと見つめていた。

 俺はそこを知らない。

 少なくとも当時は知らなかった。

 今でも知っているとは言えないかも知れない。なら今でもフユコのスカートの中は暗いんだろう。

 そいつは夜空なのか?だとしたらその向こうに何がある?明日はあるのか?

 星も月も答えない。

 もちろんフユコは喋らない。

 童貞の頃の絶望なんてそんなもんだ。

 ただ俺は小学生の頃に、パルテノン神殿の奥にある光を見たことがある。

 それは希望だった。

 俺が小学生の頃だった。

 電車に乗っていた。学校の帰り道、横に長いシートに座ってくるくるとスライドしていく景色を眺めていた。

 するとどこかの駅で俺の正面に派手な服装の女が座った。

 狙っていたのか?たまたまか?

 どうだろうな。俺が女だったら同じ場所に座るだろう。

 派手な女はサングラスを外すと頭に乗せた。

 それが開門の合図だ。

 女の茶色い両膝が離れ始めた。パルテノン神殿が現れたんだ。

 女の履いた高いヒールから伸びた茶色い膝の間から緑色の希望が見えた。

 蛍光色の緑色だった。

 俺の視線は希望に釘付けにされた。

 おそらくその女は微笑んでいただろう。

 そして俺の視線はそれ以降、そこから動いていない。目を開けたまま夢を見ている。

 ずっとあの蛍光緑のパンツを見ている。

 そいつは希望だし、そいつは夢だ。

 派手なギャル女のパルテノン神殿からまっすぐ伸びた光の道を歩いてきた。

 それは夢だったし、それは希望だった。

 それは蛍光グリーンだった。

 その道はまっすぐ続いていた。

 行き先は分からない。それは海に続く突堤みたいなものかも知れないし、海から港に伸びる灯台の光だ。

 俺は波間を漂う童貞だ。

 溺れる者が掴む蛍光グリーン。

 助かるには行くしかない。

 迷わず行けよ、行けばわかるさ。

 俺はその道を歩いて行く。泳いでいく。

 前後不覚。

 どこに続いているかなんてのはどうだって良い。ただ道を歩いて行くだけだ。泳いでいくだけだ。

 俺は泳ぎ着いて肩で息をした。

 月の見える丘だ。茂みの無い綺麗な丘だ。

 俺はひとりで歩いて行く。手をつなぐ相手はいない。

 俺はひとりだ。俺はひとりだ。

 狂い咲きヴァージャイナロードを行く。

 天岩戸を押し開ける。狭くなった道を行く。そこがいま俺のいる場所だ。

 俺は目を開ける。 

「どうだった、何か見えた」

 お前が俺に訊く。

「いや、何も見えなかったよ」

 俺はお前に答える。

「私より何年も早く子宮から顔を出しておいてそれはあんまりだわ」

 お前があからさまに落胆した表情で言う。

 俺はお前の子宮から顔を出したままで答える。

「冗談言うなよ、そんなのは誤差だろ」

「70年でも一瞬の夢かしら」

「俺にブルーズは蹴飛ばせないな」

 クラシックな冗談をお前は解さなかった。

 仕方なしに俺はお前の子宮から這い出る。

 全身の液体をシャワーで流す。薄黄色い泡が流れていく。

 お前は泡風呂の中で微笑む。

 湯舟の縁に置かれたキャンドルが揺らめく。タイルが反射する光は円く弱々しい。

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