6.師団長トーナメント開幕!
思った以上に観客が多いな。
特に、この闘技場のあの辺りは貴族令嬢で固まっているようだが、貴族令嬢に騎士は人気なのだろうか?
「知らなかったのか?騎士は鍛えてるから体つきもよく、イケメンであればよし、騎士になるのは大体貴族家の次男・三男などが多数。『私を守って~』的な貴族令嬢に大人気職業だ」
なるほどな。
ところで、この男は誰だ?
「あ、俺?コンラッド=ベガス。第2皇子。まぁ、俺には皇位継承権は回ってこないだろうな。兄上は健康だし、優秀だ。故に騎士をしている。よろしくな。ポーラル公爵家のお嬢さん」
お嬢さんと言われたのは心外だ。
皇子だろうと何だろうと私は手を抜かない!
「おい、師団長の中に女がいるぞ」「マジかよ?」「この国の騎士は弱くなったのか?」とかの声を通りすがりに聞いてたりもする。
本当に口だけならなんとでも言えるよなぁ。なんならお前が騎士になって私と決闘してみるか?とか思う。
師団長は12人いる。
私とコンラッド皇子以外に10人ということになる。
どうってことないだろう。
虚しくも予想通り、私にコテンパンにやられる師団長だらけ。
「あんまりやられ方が酷いと八百長とか言われるんで、もっと本気でやってくださいよ」
と、言うのだが私にやられている時点で本気らしい。
本当に騎士が弱い。
こんなに騎士が弱くてこの国は大丈夫なのですか?
この国の行く末を憂いていると決勝戦になった。
奇しくも、決勝戦の相手はコンラッド皇子。
「このトーナメント自体に八百長疑惑がかけられているんで、コンラッド様も最初から本気で戦ってくださいね。私も本気で戦わせていただきます!」
「始め!」
私にとって初めてだった。
昔から絶対に私が勝っていたのに、どうして一瞬で負けてしまったのだろう?
「いやぁ、リラお姉様ぁ!」
私に妹はいないが??
「これ以上は関節が外れ、骨に影響が出てしまいます。私の負けです。棄権します」
悔しい。まさか体術で負けるなんて。相手がコンラッド様だなんて。
「何で私が負けたんだ?」
「リラ嬢には隙があったからね~」
そんなもんはないはずだけど―――実際に戦った人が言うのだからあったのだろう。
月日は流れ、コンラッド様は騎士団長に私は副騎士団長となった。
「いやぁ、相変わらずリラ嬢のファンクラブはすごいなぁ」
「非公式ですよ。『いつの間にできた』って感じですもん。それに会員は貴族令嬢限定ですよね?私はそういうのキライなんですよね。それはそうと、ここにある書類の山は団長が処理すべき書類の山です。気が利く部下の私が少しは手伝ったんです。今日中にこの山を片付けて下さい」
「スパルタな副団長だなぁ」
「『リラ嬢』とか呼ぶからです」
女性であることを捨てているわけではないが、気色悪いと思ったのだから仕方がない。
師団長トーナメントは凄いなぁ。そして‘リラ嬢ファンクラブ’の皆さんは新しい扉を開いてしまったんでしょうか?婚約とかに支障はないのかな?