5.師団長トーナメント
自分で言ったものの虚しいな。事実だが。はぁ、ちょっとずつ出世するのが理想的だろうと思っていたがそうでもないようね。
陛下に師団長でトーナメントとか出来るように奏上しようか……。
私は一人の部下と決闘をすることとなった。騎士を辞める覚悟があるようだな。なかなかの根性だ。
しかしながら、私の敵ではない。
「日々の鍛錬が足りないな。ああ、騎士を辞めるんだったな。お疲れ様。辞表を書いたら渡してくれ。陛下には私の方から手渡す」
「陛下とデキてるんじゃないか!」
私は一瞬でその部下、元・部下か?の首に剣の切っ先を当てた。
「陛下を侮辱する気か?それなら許さんぞ?騎士は陛下の剣だからな」
そいつは項垂れてトボトボと国境から王都へと歩いて行った。騎士を辞めたのだから、騎士団に所属する馬を使う事は出来ない。
「他に辞める覚悟のあるものはいるのか?―――はぁ、辞める覚悟もなく口だけ達者だったわけか。そこのお前とお前とお前とお前とお前とお前はあとで始末書を提出するように。各自仕事に戻るように!」
全く『騎士』というのに弱すぎる。剣よりも口が達者で、どこの貴族だよ?という感じだ。
任務から戻り、陛下に「師団長トーナメント」の要綱というか必要性を伝えた。
「なるほどなぁ、女だからと部下にまで舐められたと?」
「口だけのやつには始末書を、実際に私に決闘をしたやつは騎士を辞めました。辞表がここに。どうぞお納めください」
「ふむ。其方に決闘を申し込むあたりなかなか気骨のある人間だと思うのだか?」
「私も口だけで実際に行動しない男よりは気骨があると思いました。しかし、最後に陛下を侮辱するような発言を致しましたので、私は止めもせずにそのまま辞めさせました」
「なるほど、其方の忠誠心は天晴れだな」
「有難き」
「そのトーナメントの様子を是非ともヒラの騎士に見せたく存じます。女の私がどれだけできるのかを見せるのです。私が無様に負けるようでしたらいけませんが、勝ち進むことができれば、女性の地位向上に少しはお役に立てるのでは?と思います」
「確かになぁ。其方の部下の礼もあるわけであるし、それが良かろう。それと、貴賤を問わずに観戦できるようにしよう」
「有難きお言葉」
「なに、私の思惑もあるからかしこまることはない」
このようにして‘師団長トーナメント大会’の開催が決定された。
私は武のポーラル公爵家の出であるから負けるつもりなど毛頭ない。この際、手加減など一切せずに戦おうと思う。
大変なんだなぁ。やっぱりパイオニアになるには相当の努力が必要かと思います。