4.女騎士の現実
ポーラル公爵家一同は無事にベガス帝国へと亡命することができた。
ヴィクス王国は我が家からの支援もなくなり財政的に苦しいことだろう。風のウワサだが王太子が国王の命を狙っているとか?愚かなことを。
大方、フィゴール伯爵が背後にいるんだろう。あの王太子が一人でそんな大それたことができるとは思えない。
ヴィクス王国民はなんとか耐えてほしいところだ。財政難で一番堪えるのは領民だろう。
ベガス帝国での私の生活だが、私は皇帝陛下の推薦で騎士団へと入団することとなった。
わかってはいたことだけれど、女性で騎士というのが気に入らないようだ。他の職種よりも女性への風当たりが強い。
そこは実力がモノをいう世界。私は何か言われたら、すぐに決闘を申し込みコテンパンにしてきた。
今は一個師団の団長を務めている。
今回の任務は……地味だ。他の師団長が嫌がったから、私にお鉢が回ってきたような感じだ。
私の部下も「うちの団長の下にいたら貧乏くじを引かされる」と言っている。
任務の具体的な内容は、国境整備。警備ではない。
整備だから、国境の草むしりとかとにかく国境でこちら側が美しく見えるように整えることが任務となる。
団員は「俺はこんな事をするために騎士になったんじゃない」「団長が女だからこんなことしてるんだ」とか言ってたけど、国境が向こうよりキレイなだけで。『我が国の方が国力がある』というのを知らしめることができてかなりお得なことだと思うんだけど、そこは価値観だろうな。
団員としては、騎士っぽく要人警護とか、対戦とか、そういうのをしたかったんだろうなぁ。縁の下の力持ちという言葉を知らないのか?
私は一人せっせと雑草を抜き、整備し、キレイになったのを見て内心『どうよ?我が国の国力?』と思っていた。やってることは地味だけど、大事なことなんだよなぁ。向こうの国境付近は荒れ放題でなんだか惨めな感じがする。国境付近まで手が回らないのがわかる。
「あー、俺はもうやってられない。なんで騎士が雑草抜いてるんだよ?」
「俺も」「俺も」と声が上がったが、無視した。
「やっぱり団長が女だからこんな仕事しか回ってこないんだよ!」
女だから?こんな仕事?聞き捨てならない。
「お前は何様のつもりだ?団長自らが先だって仕事をしているのに放棄?仕事を辞める覚悟があるんだろうな?その覚悟もなく、仕事を放棄とは何事だ?始末書も提出してもらう。各自仕事に戻るように。苦情があるのなら直接私に言うように」
「それならダンチョー。女なんだから仕事辞めて下さいよ」
「何故女は仕事を辞めねばならないんだ?理由がわからない。理由もなく私に言うのであれば騎士としてその剣を賭けて、私と決闘をする覚悟で言うんだな」
「ダンチョーも上の人に色仕掛けとかして今の地位なんでしょ?」
クスクスと笑い声が聞こえる。笑いやがったのはあいつだな。始末書だな。
「そんなものするわけないだろ。私のどこに色気があるんだ?」
男社会に入るんだもの、かなりの覚悟が必要だろうけどそれはそうとして、男性もなかなかに陰険ですなぁ。