第九十四話「夜空のカーテンコール」
「見て見て見てっ! 夜空が踊ってるよっ!」
ミラが叫んで、みんなが外に飛び出した。
そこには――揺らめくように光る、色とりどりのカーテンのような光。
「おぉ、これは……オーロラだな」とヒカル。
「なんか、空が“シャーッ!”ってしてる!」とトキオ。
「……擬音じゃなくて説明をして?」とルナが冷静につっこむ。
サンが腕を組んでうなずく。
「たしか太陽が出した“太陽風”ってやつが、地球の磁場にぶつかって光るんだよな」
「ちょっと責任感じちゃうね……オーロラ、綺麗だけど派手だなぁ」
ヒカルが解説を続けた。
「太陽から出た粒子が、地球の磁気と反応して、大気の中の酸素や窒素とぶつかるんだ。
それで緑や赤や青に光る。色はぶつかった高さや成分で変わるんだって」
「理屈はさておき……キレイだな」とミラ。
「まるで、夜空がラストシーンみたいに演出してるみたいだね」とトキオ。
そのとき、風がふわっと吹き抜けた。
「いい演出日和だったね~。持っていかれそうだったけど!」
風が頭上でくるくると回って消えていった。
ルナが静かに口を開く。
「オーロラは、“太陽の息”と“地球の心”がすれ違ったときの、やさしい衝突」
「急に詩モード入ったな」とサンが笑う。
「でも、ちょっといい言葉だと思ったよ」とミラが言った。
その晩のヒカリ荘には、光のカーテンがふんわりとかかっていた。
まるで、空が舞台の幕を閉じるように――。




