第八十二話 お月見だんごと、地球の影
「だんご、あるぞー!!」
サンの声に、ヒカリ荘の住人たちが集まってくる。
「中秋の名月でもないのに、何その季節感?」とルナ。
「いや、だんごは年中無休でうまいからな」
サンはご満悦で、お盆に並べただんごを掲げる。
「だんごといえば……月見だんごって、なんであんな形なんだろう?」とヒカル。
「そういえば……関東と関西で形が違うんだよね」とトキオがうなずく。
「丸いのと、細長いのだっけ?」とミラ。
ルナが静かに答える。
「関東は、まんまるの“満月型”。関西では、平たくした“うさぎの耳型”が多いわ。
どちらも“月を象る”ための形。文化の違いね」
「うさぎといえば……“月にうさぎがいる”って迷信、世界中に似た話あるんだよな」とヒカルがぽつり。
「メキシコでは“月の中にカニ”って言うらしいよ」とトキオが補足する。
「月って、みんな空を見上げて想像したんだな〜」
ミラがだんごを頬張りながら感心する。
サンが急にだんごを空に掲げる。
「見よ! これが“満月団子”じゃ!!」
「逆光で何も見えねぇよ」
トキオが即ツッコミを入れる。
風がそよぎ、遠くで蝉の声が聞こえる。
「……でも、こうやって空を見上げて話すって、いいよね」
ミラのつぶやきに、みんながうなずいた。
空の話は尽きない。
だんごが冷めても、会話はあたたかかった。




