第八十一話 モクのダジャレ大作戦
ある昼下がりのヒカリ荘。
リビングには、でーんと横たわる巨体の男がいた。
「モク、久しぶり〜!」
ミラが駆け寄ると、木星──通称モクが、ゆるりと手を上げた。
「よぉ〜……引力で引き寄せられちまったわ〜……ヒカリ荘、落ち着くからなぁ〜……」
その声と間の長さに、全員が妙に静かになる。
「……それ、ダジャレ?」とヒカル。
「引力だけに、引き寄せられたって……」
トキオが目を伏せる。
「ごめん、誰か笑ってくれないと……オレ、木星圏までへこむ……」
そんな中、サンが立ち上がった。
「モク! ダジャレは勢いと回数だ!
オレがサポートするぞ、太陽系最強の“ホット”コンビになるんだ!!」
「それって……灼熱地獄じゃね?」とルナ。
勢いだけはやたらある2人が、即席コンビでダジャレ大会を開催し始めた。
「ヒカリ荘だけに、ピカリッと光るネタを!」
「サンさん、それ、ピカリ荘の話まだ引っ張る!?」
「今日の天気は晴れ時々ボケ! 降水確率100%でスベるぞ〜!」
「いやほんとに滑ってる……!」
苦笑いが絶えない中、ついにルナが止めに入る。
「もう……私が“月面着陸”してやるわよ」
そう言って、ぬるりと着地ポーズを決める。
「おおっ! それナイスツッコミ!」
サンとモクが拍手を送った。
「っていうか、ルナさんがツッコミするの超レアじゃん」とヒカルが呆れて笑う。
「星の並びも変わるのよ、気分次第で」
爆笑とはいえない。
でも、ヒカリ荘らしい笑いの午後だった。
それはまるで、雲の合間にこぼれる太陽光みたいに、ぽかぽかしていた。




