第七十七話 消滅通知、届く
朝のヒカリ荘。いつものように、のんびりした空気が流れていた。
「サン、お便り来てるよー。なんか“重要”って書いてある」
星三兄弟のヒカルがポストから取り出した一通の封筒を、のそっと太陽に手渡した。
「ルナ~、お願い」
太陽はぐでっとソファに沈み込み、封筒をルナにパス。
「たまには自分でみてよ……」とルナはぼやきつつも、封を開ける。
そのとき、床に落ちたもう一枚の紙。チラシのようなそれには、大きくこう書かれていた。
『あなたの住まい、消える前に備えを!』
「……まさか」
ルナがざわついた。
手元の封筒にあった通知にも、確かにこうある。
『老朽化により、当建築物は○月○日より修繕工事のため立ち入り制限が実施されます。』
ルナは黙って皆を見渡した。
「……ヒカリ荘、取り壊しかもしれない」
場が凍った。
「えっっっ!!?」
「ま、まさか……ここが……?」
「オレたち、どうなるの!?」
パニックは一瞬で広がった。
「引っ越しってこと!? 次の家どうする!?」
「ヒカリ荘じゃなきゃヤダ〜!」
「お別れ会やる!?」「記念写真とか!?」「ここでの最後の夜!?」
ヒカリ荘は大騒ぎに。
「俺、昨日夢でヒカリ荘崩れたんだよね~」と太陽がのんきに言えば、
「まじか! 正夢かも!!」と誰かが声を上げた。
ルナは静かに窓辺に立ち、空を見上げた。
「……終わりは、いつだって突然なんだよ」




