第七十六話 宇宙のすきまは、すかすか?
ヒカリ荘の居間で、サンがくしゃみをした。
「へっくしょいっ! ……なんだよこれ、急に冷えたな?」
「宇宙って基本、めっちゃ寒いからな」とトキオがソファから顔を出す。
「マジかよ。じゃあ宇宙服って、あったかインナー的なやつ?」
「そう思うだろ? でも宇宙服って“冷やす機能”のほうが重要なんだぜ」
「えっ、寒いのに冷やすって何それ! 意味わかんねえ!」
トキオはドヤ顔で解説を始めた。
「宇宙って真空だから、空気がない。だから“熱が逃げない”んだよ。
太陽の光をモロに浴びると、めっちゃ熱くなる。なのに、汗は蒸発しない。地獄かよ」
「……つまり“冷房ガンガンのサウナ”みたいなもんか?」
「例えは変だけど、まあ近いな」
「宇宙さん、快適さって概念ないのかよ……」
ヒカルが窓のそばでつぶやく。
「しかも、音もないんだよね。真空だから、音波が伝わらない」
「宇宙DJできねえじゃん!」とサンが両手を広げた。
「できないどころか、“ノリ”すら伝わらない」
「宇宙……ストイックすぎん?」
ミラがぽつりとつぶやいた。
「でも、そんな静けさの中で、地球の“わいわい”は、きっと輝いてるよ」
「それなー!」とサンが片手をあげて同意した。
今日もヒカリ荘には、宇宙では聞こえない笑い声が響いていた。




