第七十四話 きらきらのおともだち
夕方、まひろちゃんは弟のあきらくんを連れて、家のベランダに出た。
「おそら、きょうもきらきらしてるね〜」
そう言って、まひろちゃんは空を指さす。ぽつん、ぽつんと星が見えはじめていた。
「ほら、あきら、あれみて! おほしさまだよ。おともだち、いっぱい!」
あきらくんはまだことばを話せないけど、姉のまひろちゃんの声が好きで、にこにこと笑う。
「おほしさまって、えらいね。いつもおそらにいて、がんばってる」
まひろちゃんは、くるくる回ってスカートをふくらませた。
「まひろも、がんばる! おかたづけも! おはしも! ……たぶん!」
空の上、ヒカリ荘の屋上。
ミラが星図をのぞきこみながらつぶやく。
「今日も見てるね、あの子。くるくる回ってた」
「元気だなぁ」とヒカル。
「いやあの回転、たぶん“星”じゃなくて“アイドル”目指してるね」とトキオが茶々を入れる。
ヒカルは笑いながら言った。
「たまに誰かが空を見上げるだけで、ちょっと嬉しくなるよな」
その頃、まひろちゃんはあきらくんの小さな手を握っていた。
「また、きらきらにあいにこようね〜」
あきらくんがふにゃ、と笑う。
その笑顔は、まひろたゃんにとっての“おほしさま”だった。




