第七十二話 星たちのきらめき事情
夜のヒカリ荘。屋上には星三兄弟が寝そべっていた。
ヒカルがぽつりとつぶやく。
「……なあ、オレたちって、光ってるのかな?」
「え、突然なに」とトキオ。
「いや、たまに思うんだよ。地球から見たら“きらめいてる”って言われるけど……本人たちは、あんま実感ないよな?」
ミラが小さく笑った。
「それって、自分の笑顔が見えないのと一緒じゃない? 自分の光って、自分じゃわからないんだよ」
トキオが目を閉じて言う。
「でもまあ……誰かが“キレイだ”って言ってくれるなら、それでいいのかもな」
「それでいいかぁ」とヒカル。
「そもそも星って“自分で光ってる”と思われがちだけど……実際は太陽の光を反射してるだけだしな」
ミラが空を指差す。
「でもそれって、悪くないと思うよ。自分じゃない光を受け取って、誰かに返す。……なんか、優しさの連鎖みたいで」
「お前、詩人かよ」とトキオが笑いながら寝返りを打つ。
ヒカルも同じ方向を見てつぶやく。
「誰かの光で、今の自分ができてるって思えばさ……ちょっとくらい、今日がしんどくても大丈夫な気がするよな」
「でもオレは自分で光りたい派」とトキオ。
「知ってる。なんなら爆発しそうな勢いだもんね」とヒカル。
「オレは……ただ、見上げた人が“少し笑えるように”なれたら、それでいいや」
ミラの言葉に、兄たちは黙ってうなずいた。
空には、三つの星が並んでいる。
それぞれ違って、それぞれきらめいている。
そして今夜も、静かに空を飾っていた。




