第七十話 月って、実は地球の○○だった?
夜のヒカリ荘。居間の窓からは、ちょうどいい角度で月が見える。
「なあルナ、おまえって……地球にとってどんな存在なんだろな?」
サンがふと思いついたように言った。
ルナはソファに座ったまま、紅茶を口に運びながら答える。
「そうね……“引力で繋がってる元カレ”って言う人もいたわ」
「重たい別れ方してるじゃん!」とトキオが吹き出した。
「まあ実際は、“地球の衛星”でしょ?」とヒカルがまじめに補足する。
するとルナがちらりと笑った。
「……でもね、本当は“かけら”なのよ。月は、かつて地球とぶつかった天体からできたの」
「え、どういうこと?」とミラが目を丸くする。
ルナは静かに語りはじめた。
「約46億年前。地球がまだできたてのころ、“テイア”って名前の天体と衝突したの。そこから飛び散ったかけらが、集まって月になったのよ」
「え、そんなドラマチック展開ある!?」とトキオが騒ぐ。
「つまり月は、“地球の分身”ってことか……」とヒカルがつぶやく。
「似た者同士、ってことね」とルナが笑う。「でも私は私よ。切り離されたあとで、ちゃんと自分の顔を持ったもの」
「なるほどなあ。元カレってよりは、“遠くの妹”って感じか」とサンがまとめた。
ルナは、ほんの少し照れたように視線をそらした。
外には満ちかけの月。
“かつて同じだったもの”が、静かに並んで浮かんでいた。




